この話題も試験期間中のために触れることができませんでしたが、先月衆議院が解散し、8月30日に総選挙が行われることとなりました。
民主党は早速7月27日にマニフェスト(政権公約)を発表しました。

民主党の政権政策Manifesto2009(民主党Webページ)

民主党のマニフェストに対しては、「根拠となる財源がない」等の指摘があり、今後の少子高齢化で税負担が可能な世代の絶対数が減少していく中、ある程度の収支バランスを考えた政策でないと実現可能性が疑われるのでは、という観想は私自身も持っています。

それ以上に私が民主党のマニフェストで受け入れることができないのは、「高速道路の無料化」です。
民主党のマニフェストでは、高速道路無料化について、次のように記されています。

30.高速道路を原則無料化して、
  地域経済の活性化を図る
【政策目的】
○流通コストの引き下げを通じて、生活
 コストを引き下げる。
○産地から消費地へ商品を運びやすいよ
 うにして、地域経済を活性化する。
○高速道路の出入り口を増設し、今ある
 社会資本を有効に使って、渋滞などの
 経済的損失を軽減する。
【具体策】
○割引率の順次拡大などの社会実験を実
 施し、その影響を確認しながら、高速
 道路を無料化していく。
【所要額】
1.3 兆円程度


既に今年の3月から高速道路料金の大幅値下げが始まっていて、それが公共交通機関に与えた影響がすさまじいことは、このブログでも再三取り上げてきています。
JR西日本のGW輸送実勢は軒並み前年比減、ただし「こだま」は増加
「高速乗り放題」と「高速バス」について(西鉄社長の怒り心頭会見より)
和歌山・徳島両県、南海フェリー利用者に宿泊者限定で利用料金補助を検討

結局、公費による高速道路無料化により、新たな需要を生み出すよりもむしろ既存の公共交通機関の需要を自家用車に転移させ、その穴埋めを公共交通機関の民間事業者が行っている。(それは格安フリーきっぷの発売や、収入源という形で何らかの負担をしていると考えられます)
そういうイコールな競争条件でないことが、この政策の一番の問題点であるわけです。それにより、公共交通全体が存続できなること、それが問題な訳です。
勿論、高速道路が高いか安いかどっちが良いか、と言われると、そりゃ二者択一なら安い方が良いでしょう。しかし、それで公共交通機関が崩壊するとなると、その社会的コストは半端ではないと思いますので、無料化ならそれで、公共交通機関を維持してくための社会的システムを同時に構築するだけの必要性があると思います。

民主党の政策を具体的に見てみると、高速道路の無料化で次のような内容があります。
高速道路の無料化(民主党Webページ)
高速道路の無料化

高速道路は、原則として無料とします。これにより、(1)生活コスト・企業活動コストの引き下げ(最大2.5兆円の国民負担の軽減が可能、家計消費増や企業の設備投資・賃金引き上げ等で内需拡大)(2)地域活性化(生活道路、地域道路としての利用、サービスエリア・パーキングエリアの活用を含む観光産業活性化など)(3)温暖化対策(渋滞の解消・緩和、CO2の発生抑制など)(4)ムダづかいの根絶(バイパス建設抑制による財政負担の軽減など)――を図ります。

首都高速・阪神高速など渋滞が想定される路線・区間などについては交通需要管理(TDM)の観点から社会実験(5割引、7割引等)を実施して影響を確認しつつ、無料化を実施します。

実施に当たっては、道路会社の職員の雇用、首都高速・阪神高速の株主たる自治体の理解、競合交通機関への影響及び交通弱者等に対する十分な配慮を講じます。


一応、上記の私の感じている点を先取りして、上記太字のような記載をしていましたが、じゃあそれが具体的に何なのか、というのが全く見えてこない点(それは現在の自民党でも同じでしょうが)、無料化という大なたには素直に賛成はできません。

公共交通機関網は無くすのは一瞬、再生するのは並大抵では不可能、という実例があまたあるわけですから、もっとその辺をつぶさに考えて政策提言してほしい、と思うわけです。

今回は、民主党の「高速道路無料化」という文字に飛びついて投稿してみましたが、時間があれば自民党等、他の政党の公約にも目を通し、公共交通機関に関する点からあれこれ記してみたいと思います。