先の衆議院選挙で民主党が勝利し、先日鳩山内閣が成立したのはご承知だと思います。
その鳩山内閣での国土交通大臣に就任したのは、前原誠司氏

前原氏は、以前メール問題で民主党の代表を辞任した人、というイメージが強い人が多いかと思いますが、もう一つの側面としては、大の鉄道ファンということです。
敢えて当ブログでこの人を取り上げたのも、そういう面もあったから、というのはあります。

前原氏の鉄道ファンとしての最近の活動状況は、SL写真がカレンダーやオレンジカード台紙に採用されていたり、はたまた鉄道ピクトリアル等で対談記事が掲載されていたりと、鉄道ファンであることを隠さずオープンに活動されているといえるでしょうか。
前原氏本人のWebページを覗いてみると、「新刊情報」で「わが国鉄時代VOL1」が紹介されているあたり、もう何と言いますか、ファンとしての本気度がわかる、と言えるでしょうか。

さて、民主党マニフェストでの国土交通省関連の政策での目玉は何と言っても「高速道路無料化」ですが、これについては前原大臣は、前政権が行った1000円乗り放題を当面続けてどういう影響が出てくるかを踏まえてどう公約を進めていくかを判断したい、とう慎重な姿勢を取るとのことです。

参考記事:前原国交相、「高速道路1000円は当面継続」(Yahoo!ニュース)

ところで、「高速無料化」以上に現在前原大臣を悩ませているのは八ッ場ダムの建設中止問題でしょうか。
既に住民の移転が始まりつつある状況での建設中止は、長年このダムの建設で建設の反対から建設を承諾してきた地元にとってもすぐには受け入れられないのも当然でして、前原大臣も中止の方針は変えないものの、地元の同意を得られるまではダム事業廃止の法的手続きには入らないとしています。
この八ッ場ダムにより水没する地区は、川原湯温泉という有名な温泉があり、先日のシルバーウィークでは、ここを観光客が大挙して訪れたという、何とも割り切れないニュースも耳にしました。
八ッ場ダムに観光客殺到 地元は複雑な表情(Yahoo!ニュース、元記事:J-CAST)

ところで、水没するのは温泉街だけでなく、ここを走るJR吾妻線もそうでして、すでに線路の付け替え工事を進めている旨、JR東日本のWebページでも確認できます。
JR東日本:進行中の建設プロジェクト(JR東日本Webページ)

ところで、この線路付け替えにより日本一短い(全長7.2m)鉄道トンネルである樽沢トンネルも用途廃止になります。
トンネル自体は水没予定地外になるのですが、線路の付け替えにより鉄道トンネルとしての用途は廃止されるとのことです。
樽沢トンネル-Wikipedia
仮に樽沢トンネルが用途廃止となると、新たに日本最短の鉄道トンネルはどこになるのか、ちょと興味がないわけではないのですが、それはまた調べてみるとしますか・・・

本題の八ッ場ダム建設問題ですが、現地の状況も報道程度の情報しか持っていないので、断定的な話を出来るわけではありませんが、そういう前置きで書いてみるとします。

そもそも、ダムのような広大な面積を要する公共事業について回るのは住民の移転でして、住み慣れた土地を離れて暮らすということが金銭的には移転補償されるにしても、精神的な面では文字通り金銭に換算できない痛みになろうかと思いますし、それが特にダム建設が迅速に進まない要因とも言えます。
だからといって、それは無駄な時間かというと決してそうではなく、そういう住民の精神面を無視するわけにはいかない、ということを述べたい訳です。

一方で、公共事業といえば進み出したら止まらないのが半ば常識とされてきました。ただ、全ての公共事業が進み出したら止まらない訳で決して無く、例えば旧国鉄が建設途上で中止した未成線は、その一つの例と分類しても良いかもしれません。
とはいえ、ほとんどの公共事業が止まらない現況は変わりないわけですが、これが基本計画時からの社会状況の変化に対応できない無駄な公共事業を増やす要因になった、ということも、これまた否定出来ません。

そうなると、これから公共事業に求められるものとしては、計画・建設時における見直しのシステムとなるかと思います。
ただこれにしても、公共事業にも単純に金銭だけでは図れない効果(ダムの場合は水防効果等)もあるわけでして、単純にはいきませんが、いずれそういうシステムは構築されるべきものだと考えています。

今はその端境期とも言うべきかも知れませんが、じゃあ時代が変わったとしても一体どの時点までで公共事業を止めればいいのか、それに対する明確な答えが無い状態なのかと思います。
だから、八ッ場ダムでも地元の水没予定地でダム建設中止反対がでてくるのも、もっとも当然な話だと思います。

八ッ場ダム建設中止問題は、こういう公共事業のプロセス中止のシステムをどうするのか、という非常に難しい問題を鳩山政権成立後一ヶ月経たないうちに投げかけた、とも言えるかも知れません。
単純に中止、といえば中止かも知れませんが、それならどのような根拠で中止か、その費用便益の算定はどうなるのか、といったことも考慮されなければならないとも思います。

公共事業はやれば良いものではないけど、止めればいいものでもない、というべきでしょうか。

この問題、鉄道ファンの前原大臣がよりによって自らの権限で日本最短の鉄道トンネルを残すのか無くすのか、というダム本体問題に比較すればあまりにもちっぽけではありますが因縁めいた問題も含んではいますが、その両方(?)を含めて前原大臣がどういう結論を導き出せるのか、見ていきたいとは思います。

それにしても、日本に二番目に短い鉄道トンネル、つまり樽沢トンネル廃止後に日本一短いトンネルとなりうるトンネルは一体どこなんだろう・・・