11月27日に実施された大阪府知事選挙・大阪市長選挙で、「大阪維新の会」の松井一郎氏、橋下徹氏がそれぞれ当選しました。
これからは、大阪都構想をはじめとした「大阪維新の会」が掲げたマニフェストを実現ができるのか、またそれにより府民がよりよい生活を送ることができるのか、といったことに注目していくことになると思います。

今回のダブル選挙では、当ブログにも深く関係のある交通関係、特に鉄道やバスについての施策について、大阪維新の会のマニフェストでは言及がありました。
ここでは、それらのマニフェストで記された内容について紹介するとともに、今後4年間で実現に向けた課題や、府民・市民が特に注目しておきたい点を、自分なりにまとめてみたいと思います。

選挙の終わったこのタイミングでまとめたのは、この知事・市長の任期が4年で、少なくとも4年後までには再び行われるであろう府(都)知事選挙や、市(区)長選挙の時に、あるいは次回行われる府(都)議会議員選挙や市(区)会議員選挙の際に、大阪維新の会がこの選挙で鉄道・バス関係に関してこのようなマニフェストを掲げ、それが今後実施されるこれらの選挙時にどの様に進んでいて、それはどのような内容であるのか、またそれは現行よりも府・市民の利益に叶ったものなのか、ということを検証する際の材料になれば、との考えで記しました。
ある意味メモのような感じで記していますので、特に整理等を行ったものでもありません。あくまでも過去の事実としてマニフェストでこう記されていた、ということと、それに対する私の着目点ということでご理解下さい。

では、大阪維新の会のマニフェストの中から、鉄道・バス関係についてご紹介していきたいと思います。

知事選マニフェスト(大阪維新の会 秋の陣マニフェストについて)
市長選マニフェスト(大阪維新の会 秋の陣マニフェストについて)
まず、知事選のマニフェストでは、鉄道・バス関係については、以下のような記述があります。

6. 広域インフラの整備

(3)関西圏を支える広域鉄道ネットワーク、府域全体の利便性を高めるため地下鉄ネットワークの充実を図ります。

1. 関空アクセスの強化
関西国際空港の利便性を高めるた、北摂京都神戸方面からアクセスを抜本的に改善するべく、大阪都心部から関空までのアクセス時間を大幅に短縮するなにわ筋線等の整備を目指します。

2.地下鉄民営化による料金値下げ
地下鉄の経営形態を変更し、民営化します。時代遅れの経営形態を合理化することで運賃の値下げを実現します。また、終電を遅らせることにより府民の利便性を向上、トイレも使いやすくします。

3.私鉄の乗継・強化
地下鉄と私鉄との総合(ママ)乗り入れや乗継強化を図り、利便性を高め、府民全体が利用しやすい環境を整備します。特に四つ橋線の西梅田での乗り継ぎ強化と堺への早期延伸を実現します。

4.中央リニア
中央リニア整備は名古屋で止まるのではなく、大阪まで一気に整備し、東京・名古屋と大阪の日本三大都市圏を一体化すべきです。伊丹羽田間の航空需要削減による大幅CO2削減、羽田空港発着枠の他路線への振り替え、伊丹空港廃港による跡地活用・梅田の高層化、関空活性化といった莫大な経済効果が発生することからも、中央リニア整備の大阪までの一体開発を目指します。


次に、市長選挙のマニフェストより、鉄道・バスに関する部分を引用します。
第2 マニフェスト各論(政策編)
4・経営形態の変更
地下鉄、バス
完全民営化し、民間に開放することで経営の合理を図り私鉄との相互乗入、乗換を推進し、利便性を高めるとともに、運賃の値下げを行います。(P5)


第3 マニフェスト各論(統治機構・府市統合本部
1.成長戦略編(雇用を創出し、経済の活性化、市民所得の向上を目指す)
(4)成長のため5つ源泉
 4. アジアの活力の取り込み強化・物流人流インフラの活用
   人流を支える鉄道アクセス・ネットワーク強化
関空から、より早く便利に移動できる鉄道(なにわ筋線、関空リニア等)や大阪と各地を結ぶリニア中央新幹線・北陸新幹線の整備に向けて、事業手法等を構築します。
(P14)

3.広域インフラ編
(2) 鉄道
関西圏を支える広域鉄道ネットワーク、府全体の利便性を高める地下鉄ネットワークの充実を図ります。

1. 関空アクセスの強化
関西国際空港の利便性を高めるた、北摂京都神戸方面からアクセス抜本的に改善するべく、大阪都心部から関空までのアクセス時間を大幅に短縮することを目指します。

2.地下鉄民営化による料金値下げ
地下鉄の経営形態を変更し、民営化します。時代遅れの経営形態を合理化することで運賃の値下げを実現します。

3.私鉄の乗継・強化
地下鉄と私鉄の総合(ママ)乗り入れや乗継強化を図り、利便性を高め、府民全体が利用しやすい環境を整備します。
(P16)

(5)空港
4.また、関空アクセス改善のためなにわ筋線の整備、関空リニアの実現を目指します。
(P16)


知事・市長ともに多少の表現の違いはありますが、マニフェストとして掲げた内容は以下に纏めることができます。
・大阪市営地下鉄・バス民営化による民間開放、運賃値下げ
・地下鉄と私鉄との相互乗り入れ・乗継強化(両マニフェスト内の「総合」の意味が不明なため、「相互」と解釈しました)
・関西空港アクセス改善のためのなにわ筋線整備・関空リニアの実現
・中央リニアの大阪までの一体整備

では、それぞれについて、課題や着目すべきと私自身が勝手に考えている点について述べていきます。

1:大阪市営地下鉄・バス民営化
今回のマニフェストの大目玉であるとも考えられる民営化ですが、民営化があくまでも手段で、それによる運賃値下げが注目されていますし、民営化により運賃が下がるのか(特にバス事業)といった点が、まず目立つポイントといえるでしょうか。運賃値下げのレベルがどの程度になるのか、といったことも評価になるでしょう。民営化によりどの程度の運賃値下げができるのか、という期待値がどの程度かは分かりませんが、取りあえず現行の決算状況については、こちらにありますので、参考にしてみては如何でしょうか。

着目するべき点は、現在の大阪市交通局が構築してる地下鉄・バス・ニュートラムによる市内交通のネットワーク体系が維持されるのか、解体されるのか、もしくは他民鉄事業者とともに統合されるのか、といった点でしょうか。
例えば、現在の大阪市交通局では、地下鉄・ニュートラムとバスとの乗継には乗継割引が適用され、この場合にバスの運賃が半額の100円になります。こういった乗継サービスが民営化後も維持されていくのか、それとも廃止されていくのか、といった点です。

これらが続くかどうかは、ひとえに民営化の形態がどのようになるのか、という点もひとつの鍵になるのでは、と考えています。例えば、
・現在の交通局の組織をそのまま民営化
・地下鉄事業とバス事業を分割して民営化
・各地下鉄路線・バス営業所毎に分割して民営化
のいずれを採用するのか、といった感じです。

現在の交通局組織をベースに民営化すれば、バス・地下鉄のネットワークは維持されるでしょうが、逆に路線・営業所ごとの民営化では、それらが分断されることも考えられます。
現在のところ、民営化の形態についての具体的な言及はなく、これから市長の意向に沿って検討されていくものと考えらますので、注目しておく必要があるでしょう。

また、民営化を期に、大阪市内に乗り入れている民鉄やJRも含めて、ヨーロッパの都市等で見られる均一運賃の採用が行われれば、単なる民営化では終わらない、都市交通の大改革、とも言えるでしょうし、仮にそういうことが実現できれば高く評価したいと思います。ただ、こちらの実現はマニフェストにも無いので、難しい、というかあり得ないのかも知れません。

あと、バス・地下鉄の乗継以外にも、現在大阪市交通局が実施している他社局(民間含む)が実施していないユニークなサービス(PiTaPaの利用額割引マイスタイル利用額割引フリースタイル通学定期券の値下げなど)が継承されていくのか、それとも民営化事業にそぐわないという点で廃止されるのか(現に他の民間事業者では提供されていない。また採算悪化の要因でもある)、といった点にも注目する必要があるのかな、と思っています。

これらを総合して、民営化後でも、現在の利用者のサービスが維持されるとともに、単なる初乗り運賃の値下げだけで判断するのではなく、利用者一人が利用してみたトータルでの費用負担が軽減されるのかどうか、といった点がマニフェストの評価という点になってくるかと思います。


2:地下鉄と私鉄との相互乗り入れ・乗継強化
地下鉄路線と民鉄路線とで相互乗り入れしている事例は、堺筋線と阪急千里・京都線の事例がありますが、その他は集電方式(架線方式と第三軌条)や電圧(1500ボルトと750ボルト)といった違いがあることもあり、実質乗り入れしていない路線となっています。
(北大阪急行・近鉄けいはんな線に関しては、会社が異なるものの、上記のシステムが地下鉄と同一・一体であることと、接続する地下鉄路線の他と相互乗り入れしてないため、実質的な単一路線として考えます)

これを既存の民鉄路線と地下鉄路線とを相互乗入するのがマニフェストで言わんとしていることといえますが、先述の集電方式の違いとそれによる車両規格の違いもあることから、どの路線で新規相互乗り入れを実現させるのか、またそれは技術的に可能で、かつ、経済的に合理的で、かつ、政策的に便益が得られる乗り入れなのか、が問われてくると思われます。

また、これらの相互直通が実現するということは、民鉄がこれまで実施してきた、郊外から都心ターミナル駅へ乗客を集め、そこで乗降する乗客向けに百貨店等の店舗を配置して、鉄道と関連事業とのシナジー効果を生み出すビジネスモデルをある意味否定するものといえるでしょう。そのため既存民鉄側の抵抗もあるかも知れませんし、それに対して知事や市長がどのように協議を進めるのか、あるいは協議が進まない時の対応についても、着目しておく必要があると考えます。

また、仮にこれらの乗り入れが実現するとして、工事費用や車両調達費用についても、民鉄側にそれなりの負担が必要とされてくるかと思いますが、これについて民鉄側と府・市側がどの様に負担するか、と言った点でも、民鉄側の動きも注目する必要があるでしょう。
(ここで言う工事費用・車両調達費用は、乗り入れ路線の工事の他、民鉄架線1500V・地下鉄第三軌条750Vの両方に対応した車両調達に必要な費用等が考えられます)

ともあれ、市営モンロー主義と、民鉄モデルで構築されてきた結果、ターミナル駅と市内を網羅する地下鉄、という形になったこれまでの大阪府内の鉄道網を、今後どの様に乗り入れさせて、それによってどの様な流動効果が得られるか、それをどれだけ実現可能性の高い計画を具体的に提示できるか、がマニフェストに対する評価になるのかな、と思っています。

3:関西空港アクセス改善のためのなにわ筋線整備・関空リニアの実現
関空アクセスについては、マニフェストでは、なにわ筋線がメインで書かれていて、それに付随して関空リニア、といった書きぶりになっていることから考えて、関空リニアよりもなにわ筋線の実現が優先度が高そうな所があります。
じゃあ関空リニアは何?ということになりますし、それについても明確な説明が今後求められてくるでしょう。

話をなにわ筋線に戻すと、上記の地下鉄乗り入れに比べると、既に建設の検討が始まっている路線で、実現可能性という点では、上記の地下鉄相互乗り入れよりも高そうな状況ですが、この計画をどこまで具体的に進めていけるかが、マニフェスト評価のポイントとも言えるでしょうか。

また、2000〜4000億円とも言われる建設費についても見ていく必要があるでしょう。片や財政再建を掲げていながら、一方で大型投資が必要となってくるが、その必要性の説明がどこまで行われるのか、といったところも着目点の一つといえるかも知れません。

4:中央リニアの大阪までの一体整備
中央リニアは、JR東海が主体的に進めている事業ですが、それに対して府・市がどこまで関与していけるのか、という問題があります。
そもそも整備新幹線計画を待ちきれなく自前整備を開始した経緯もあるため、JR東海としても、自治体の要望をどこまで聞くのか、という調整と、それがどこまで進捗しているのか、といった点が、マニフェスト評価の視点として考えられます。

そういう点では、JR東海が自己資金による名古屋までの開業を目指している中で、同時開業をどこまで求めることができるか、またそれを行うとして府や市は財政的な負担を求められても住民に説明できるか、またそれらの協議をJR東海とどの程度深めていけるのか、といったことがこのマニフェストの評価に関しては求められる点といえるでしょう。

以上、大阪維新の会のマニフェストと、それに対する次回選挙時に評価するべきポイントを、特に脈絡や整理もなく記してみました。
ざっといえば、交通局民営化では、民営化が真の利用者のためになる制度設計の可否、相互乗り入れでは技術的・経済的な実現可能性の説明、関空アクセスについてはなにわ筋線の進捗、中央リニアはJR東海の意向との調整状況、といえるでしょうか。

次回選挙時には、これらのポイントを踏まえて、これから府政・市政を行なっていく「大阪維新の会」の施策を、鉄道・バスの整備といった点から評価して投票する必要がありますし、またそのための情報を定期的にピックアップしていく必要があるでしょう。

こう書いたところですが、都構想が実現すれば、大阪維新の会は役目を終えて解散する、とも橋下氏が当選時の記者会見でも話しているようですし、果たしてこれらのマニフェストの評価が次の選挙でできるのか、という懸念もありますが、ともあれ、選挙が終わって終わりではなく、選挙がスタートということになります。
新知事・新市長を選んで終わり、というだけでなく、住民がみな、大阪維新の会が進める府政・市政を常にウオッチし、選挙時に掲げたマニフェストを、住民の便益に叶うように達成できるのか、あるいは出来なければ何が原因かとうことを常に分析していく必要があると考えています。
そのための一つの切り口として、このブログでは鉄道・バスの問題をピックアップしました。今後も定期的にフォローしていきたいと思っています。


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