こちらのエントリーでご紹介したように、今年9月の台風被害により、橋梁が流失し、現在も全線で運休・バス代行が続いている滋賀県の信楽高原鐵道(SKR)。
この信楽高原鐵道ですが、今年4月より上下分離方式を採用し、沿線自治体の甲賀市が第3種鉄道事業者になり、第2種鉄道事業者となったSKRが線路を使用することで、鉄道事業者が身軽な運営形態になることにより負担を軽減して経営改善を図ろう、というスキームとなりました。
ところが、今回の台風被害が発生したことで、この復旧費用を巡り、現在の鉄道軌道整備法による復旧費補助の枠組みでは、国庫補助の他に沿線自治体の補助と鉄道事業者の負担が求められることとなり、沿線自治体かつ鉄道事業者となる甲賀市は、復旧費用の75%の負担が必要となってくることから、復旧費用の大きさ如何では廃止という選択肢もあり得る事態となっていました。

鉄道事業者の負担を軽減することで鉄道路線の維持を目指した上下分離方式の思わぬ弱点が露呈した、とも言えなくもない今回のSKRの台風被害ですが、この復旧費用に関して、かなりの割合を国庫補助でカバーできる見通しとなり、復旧へ向けて大きな前進がみられたことが報じられています。

信楽鉄道の復旧費、国補助対象に 鉄路維持へ「前進」 : 京都新聞
信楽高原鉄道 再開へ前進喜ぶ地元 : 滋賀 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

復旧へ向けて費用面の問題が解決の見込みとなった理由は、大きく分けて2つの理由が挙げられます。
一つは、国の復旧費補助の目処がついたことです。
これは、これまで道路・河川などの社会基盤を対象とし、当該社会基盤の災害復旧の費用として手当される「災害復旧事業債」の対象に、SKRの鉄道施設も対象となったことで、この事業債の95%が後年に地方交付税で補充される見込みとなったためです。
すなわち、甲賀市にとっては、一時的に復旧費用の負担が必要となり、その費用捻出のために地方債を発行することになるのですが、その地方債の返済財源ののほとんどが、国から地方への財政調整制度である地方交付税で手当されることとなり、市の負担分が大幅に軽減される事となるわけです。

何やらかなり迂遠な制度にも思える向きも多いのかも知れませんが、これらの制度の活用によって最終的に甲賀市が負担するのは事業費の5%程度となることから、財政規模が決して大きくない甲賀市にとっては、SKR復旧の決め手になったことは確かといえるでしょう。

もう一つは、復旧費用自体の見積りが明らかになってきたことで、当初10億円程度ともいわれていた復旧費ですが、最も被害の大きかった橋梁の全面架け替えを行わずとも安全性が確保できることが分かり、復旧費用の大幅な圧縮が見込めることとなりました。

これらにより、最終的な甲賀市の負担は数千万円程度の規模になることが見込まれ、復旧へ向けての財政的なハードルを一気に超えることができる見込みとなりました。
具体的な復旧作業はこれからですが、2014年度中の復旧を目指しているとのことです。

地方鉄道維持のための上下分離方式が、自然災害という地方鉄道事業者や沿線自治体の努力の手が届かない要因により、図らずも地方鉄道の息の根を止めかねない事態もあり得たのですが、個人的に今回の措置で注目したことは、鉄道も道路と同じく財政面からも社会基盤として認められるようになってきたことで、これまでは鉄道路線に対してここまで手厚い災害復旧補助が論じられることがなかっただけに、実はエポックメイキングな出来事、と感じました。
今回の措置が特例で終わることなく、今後も起こりうる災害からの復旧のスキームとして存続していくことを願いたいと思っています。


ともあれ、復旧へ非常に大きな一歩を踏み出すことができたSKR。
今後の復旧の進捗や、実際の復旧に至るまで、情報が報道され次第、逐次このブログでもご紹介したいと思いますし、復旧のあかつきには、実際に乗車することで、「特定地方交通線としての廃線危機」「正面衝突事故による危機」、そして今回の廃線危機と、三度に渡る危機から蘇って運行を再開できたSKRの姿をご紹介できる、その日がやってくることを願いたいと思ったニュースでした。

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