去る1月6日(土)より映画「中二病でも恋がしたい!-Take On Me-」(以下、「劇場版「中二病」」)の公開が始まりました。

「映画 中二病でも恋がしたい! -Take On Me-」公式サイト

この「中二病でも恋がしたい!」シリーズですが、TVアニメとしては2012年に第1期、2014年に第2期が放送されました。
2014年の第2期放送時には、こちらのエントリーでご紹介したラッピング電車が運行され、当ブログでもその様子をご紹介しました。

この度約4年ぶりとなる劇場版では、完全オリジナルの新作ストーリーが展開されることで、個人的にも楽しみにしていたわけですが、この映画を殊更楽しみにしていたのは他にも理由があります。
その理由は、こちらのキービジュアルに描かれている「列車」であります。
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(同様のキービジュアルが公式Webサイトにも掲載されています。)


この予告ポスターは別の映画を見にいた時に撮影したものですが、この下の方に描かれている「列車」。
青い車体に、一両目の機関車の凸なスタイルと黄色っぽいヘッドマーク、2両目以降の銀色と金色の帯の客車が2両続いたあと、その後には少し屋根の低い客車…
勘の良い方は既にお気づきのことだと思いますが、どう見ても、急行「はまなす」としか思えないこの列車。
見た感じ、かなり忠実に再現されている風にも見えますが、この「はまなす」らしき編成が劇中でどんな形で出てくるのか、またどのように描写されるのか。
ストーリー本体もさることながら、この「はまなす」がどう絡んでくるのかが気になり、劇場版公開が始まった翌日の1月7日(日)に早速見ることにしました。



※注意
以下、作中の内容をご紹介している、いわゆる「ネタバレ」の内容で、特に部分的に突っ込んだネタバレな内容となっています。
そのため、これからこの作品を鑑賞される方は、以下の内容にネタバレの内容が含まれていることをご承知いただくとともに、ネタバレが嫌な方は即刻他のページに移って下さいますようお願いします。
今作では、主人公である小鳥遊六花(たかなし りっか)と富樫勇太(とがし ゆうた)が、ひょんなことから駆け落ちをして日本各地を巡っていくストーリーとなっています。
各地を巡っていく間の六花・勇太の気持ち、そしてそれ追いかける丹生谷森夏(にぶたに しんか)、凸守早苗(でこもり さなえ)、小鳥遊十花(たかなし とおか)、更にそれらを見守りながら応援する五月七日くみん(つゆり くみん)、七宮智音(しちみや さとね)らの様子を、時折コミカルな部分を織り交ぜつつも、これまでの「中二病」のテイスト通りに描いた作品となっています。


先に「日本各地を巡る」と書きましたが、たどったルートとしては、こんな感じだったと思います。

京阪石山→京都→(新快速?)→兵庫→和歌山→(夜行バス)→東京→(飛行機)→札幌→(急行「はまなす」)→青森・竜飛岬→(フェリー(※))→敦賀
(※)青森〜敦賀のフェリーは実在しませんが、勇太が所持していた乗船券には「青森→敦賀」と記載されていました。

そう、急行「はまなす」は、札幌から青森の移動手段として劇中に登場するわけです。

具体的な話の流れはこのような感じです。
東京まで逃避してきた二人が更にどうしようか考えていた時、ふと勇太が六花の母親に会いたいと提案し、札幌まで飛びますが、生憎六花の母は青森に出張中。
翌日には札幌に帰る予定の六花母でしたが、すぐに会いたいとのことで、当日夜の「はまなす」に勇太と六花は乗車し、翌朝青森着。

というわけで、札幌から青森までの取り得る移動手段、しかも費用面を気にしながらの逃避行であることから車内泊できる手段として、まさに現実的な移動手段として「はまなす」が選ばれた訳です。

更に具体的に、「はまなす」関連の描写のポイントを記したいと思います。
●札幌発青森行きの上り「はまなす」に乗車
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これは下り「はまなす」の札幌着の様子。
六花・勇太はこの逆方向(つまり札幌発は夜)の「はまなす」に乗車します。

●入線時、停車中、到着後に必ず撮影するファンの姿
描かれているのは数人でしたが、停車中のシーンでは漏れなく描かれていました。

●勇太、六花が乗車するのは「カーペットカー」
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急行「はまなす」カーペットカー。
丁度、この写真の中央部あたりの座席に六花・勇太が乗車していました。
それにしても、人気の高かった「カーペットカー」の指定券がよく並びで確保できたなあ、と妙なところで感心してしまいました…

●函館駅停車中にDD51からED79に機関車交換のシーン
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下り「はまなす」乗車時に、函館駅で連結されたDD51。
劇中では逆にED79が連結されます。

実際の「はまなす」の機関車交換は、函館駅が行き止まり構造であることから、到着した機関車は切り離した後停車させたままで、逆方向に機関車を連結して発車するという方法となっていました。
劇中でも、DD51の切り離し、ED79の連結シーンは漏れなく再現されていました。
また劇中では、函館駅での停車中に六花は智音に電話しますが、実際、それくらいの通話は十分できるくらいの停車時間でした。

●青森駅到着時には「急行 はまなす 青森」のサボがしっかり描写
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急行「はまなす」のサボ。
青森駅到着時、勇太がホームに降りるシーンで描写されていました。
この画像は札幌行きですが、この「青森行き」のパターンが劇中に出てきました。


これだけの急行「はまなす」の要素が詰まった描写なだけに、このシーンを見るためだけに映画を見ても十分価値あるものといえるでしょう。
逆に言うと、ここまでリアルに描写されているが、それはそれで気になるところでしたが、その疑問はエンドロールで流れてきた「取材協力(略)JR北海道」の文字を見て納得しました。

このブログで時折ご紹介しているように、経営再生に向けて、安全投資と持続的な路線運営の確立がまさに喫緊の課題となっているJR北海道。
そのJR北海道が、アニメ作品の取材協力を受け、しかも今は無き「急行はまなす」をほぼ完全な姿でアニメ上に再現することに協力したという事実は、やはり鉄道事業者としての心意気を感じた、というのが決して言い過ぎではない、と感じたシーンでした。


もう一つ挙げたい肝心な点は、この急行「はまなす」は既に存在していないという点です。
現存する場所や乗り物であれば、映画作成中に追加取材を行い、ディテールを確認することは可能です。
しかし、急行「はまなす」は2016年3月をもって既に運行を終了しており、車両も一部を除いて廃車(六花・勇太の乗車したカーペットカーも含む)されています。
もはや現物を確認できない状況のなか、映像・画像等の記録をもとにアニメで違和感なく再現できたことに、製作会社の京都アニメーションや、取材協力したJR北海道(恐らく資料提供や監修もあったかと思います)の底力を見せつけられた、というのが偽らざる感想、といえるでしょうか。

繰り返しになりますが、「はまなす」目当てでこの映画を見ても、十分楽しめる価値のある作品だと思いますので、気になる方は是非ご覧頂ければと思います。


また、今作では、駆け落ちルートの中に地元・和歌山が含まれていたのが印象的でした。
といっても、和歌山が分かる描写は、夜行高速バスに乗車するバス停ですが、その時刻表が南海バスグループが運行する和歌山〜東京便の時刻表そのままだったことも、ポイントといえるでしょうか。
参考:南海バス|和歌山・なんば⇔新宿・東京
作中でも終点は「新木場駅」となっていました。

残念ながら乗車したバスは「サザンクロス」ではありませんでしたが、バス停の時刻表を見て、大いなる親近感を改めて抱いたのは言うまでもありません。


「はまなす」を含む乗り物ネタで随分長くなりましたが、その他のことについて少しだけ触れておきます。
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上映中のワンシーン。
といっても、これは違法撮影でも何でもなく、「フォトセッション」というコーナーで、このシーンだけ手持ちのスマホ・コンパクトデジカメでの撮影がOK、またブログ・SNS等での発信もOKというものです。
このシーンが始まると、周辺からシャッター音がこだまするという、通常の映画ではまず考えられないシーンが展開されました。
私も勿論何枚か撮影してみました。

なお、注意事項として、動画での撮影が不可なのは勿論ですが、一眼レフ等の大型のカメラ(混雑時の接触等のトラブル防止のためと考えられます)での撮影、またフォトセッション以外のシーンの撮影は不可となっていますので、ルールとマナーを守って撮影してみてはいかがでしょうか。

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今回鑑賞した「ジストシネマ和歌山」では、このように中二病のビジュアルが掲示されていました。


パンフレットも勿論購入。
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表紙は小鳥遊六花。

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裏表紙は富樫勇太。

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エンドロールには取材協力の各社の名前が記されています。
当シリーズの常連である京阪電鉄や、上述のJR北海道に加え、「新日本海フェリー」の名前が記されているのが注目です。
実際には、新日本海フェリーでは青森〜敦賀の航路は運航していませんが、近いところで(苫小牧〜)秋田〜敦賀という航路を運航していることから、フェリーの取材協力となったのかも知れません。
勇太の所持していた乗船券が「秋田〜敦賀」であれば、尚更現実味が増すのでは、という突っ込みは無粋だとは思いますが、フェリーも範疇のブログの管理人として、念のためのコメントを…


以上、劇場版「中二病」の感想を記しました。
正確には劇場版「中二病」に出てくる「はまなす」等の感想でしょうか。
全国各地を列車・バス・飛行機・船を乗り継いで巡るストーリーは、個人的に十分楽しむことができた上に、個人的な思い入れの大きい急行「はまなす」が描かれていたという点で、期待通り、否、それ以上の満足感が得られた作品でした。

こんな切り口の感想を映画感想としてブログとして記すというのも、非常に珍しいのではないかと思いますが、これも当ブログ的な記事、としてご参考頂ければ幸いと思い、非常に長くなった感想ブログの締めとさせていただきたいと思います。



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