関東の大手民鉄・京王電鉄の子会社、京王観光が、同社の大阪市内の支店内で、JR乗車券の発券及び使用について、不正を行っていたことを発表しました。

当社に関する報道について(お詫び)|京王観光
【お詫び】京王観光に関する報道について|お知らせ|京王グループ


ここに出てくる「週刊誌による報道」とは、以下の週刊文春によるスクープ記事のことを指しているものと思われます。
京王電鉄子会社が“キセル”で2億円詐取の疑い | 文春オンライン


上記Web記事、及び同記事が掲載されている週刊文春1月17日号に記載された、京王観光及び京王電鉄関係者の情報によると、不正の概要とこれまでの経緯は、以下の通りとのことです。

・不正の手口は、団体旅行を実施する際、ツアー参加人数分のJR乗車券を購入せず、差額分の運賃等を利益に計上

・京王観光にはJRの乗車券の発券端末(マルス端末のこと)が各支店に設置されており、京王観光側の責任で発券・発売が可能。

・一方、団体旅行で改札を通過する際に、JR側も発券人数と実際の乗車人数が合致するかいちいちカウントしておらず、それを逆手に取った不正。

・被害はJR旅客会社6社に及び、現在把握されているだけでも軽く2億円にのぼる。

・不正発覚は昨年5月頃で、すぐに内部調査が実施され、JRに謝罪と報告を行ったが、端末履歴で遡ることができるのは一部のため、JR各社は現在被害額を独自に調査中。

・京王側は、JRへの謝罪と違約金支払いで済ませ、外部公表はしないことを画策してきた。また、歴代の京王観光の関係者の減給、降格等の処分を考えているが、過去ではJR社員は少額でも懲戒解雇としていることを鑑みれば、到底十分な処分とは思えない。

・JR側は、「JRの乗車券類を発売できる立場を悪用した不正乗車であり、極めて遺憾。厳正に対処する」(JR東海)との姿勢。


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▲当該記事が掲載された週刊文春2019年1月17日号
上記概要は、当該週刊文春の記事を要約したものです。


即ち、団体旅客が利用する際、運賃・料金は実際の利用人数を顧客より受け取る一方、乗車券類を実際より少ない人数で発券し、差額を詐取というのが、手口の概要といえます。

改札通過の際には、係員が人数を子細に確認できないことを利用した不正ということですが、例えば100人のツアーで50人しか発券していなければ、流石にJR社員も気づくと思いますので、不正が発覚しにくい人数、例えば100人の場合は95人で発券して5名分(※)の運賃・料金をごまかした、といったことが積み重なっていたのではないか、とも推測されます。
(※)普通団体の場合、100人の場合は2人分の運賃・料金が無料になりますが、ツアー代金は団体割引適用後の運賃・料金をもとに設定していることから、5名分としています。

また、後追い報道の一つ、下記東洋経済の記事では、指定券での不正は困難なため、乗車券のみを実際よりも少なく購入していたり、大人のツアー参加者に対して子ども運賃で発券していたのではないか、ということも記されています。
参考:京王電鉄子会社「JR乗車料金不正」の手口は? | 経営 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準


ともあれ、JR各社から乗車券類販売の委託を受け、マルス端末を設置している立場を悪用した不正であり、JR側が厳正に対処するのも当然といえます。

この「厳正な対処」がどのようなものかが、今後も気になるところですが、最悪京王観光との乗車券類販売の委託解除、即ちマルス撤去というのもあり得るのでは、との声も聞こえてきますが、そこまで行かなくとも、例えば京王観光に設置するマルスの数を制限する、といったことはあり得るのかな、とも感じています。

また、団体利用についても、人数の把握が現場で困難なことが今回の不正に利用されたことから、例えば団体利用であっても参加者に一人ずつ乗車券類を発券して、一般利用者と同様に改札を通過する、という運用に変わる可能性はあり得るかも知れません。


ともあれ、芸能人や政治家といった人々のスキャンダルを週刊文春がスクープで報じる、いわゆる「文春砲」をこのブログで取り上げることになるとは思いもしなかった今回の京王観光による不正。

不正の手口等が公表されることは、上記東洋経済の記事に記されているように「将来の再発防止の観点から」あり得ないとは思いますが、団体旅客の取り扱いが不正に利用されたことから考えると、何らかの見直しがあり得ると思いますし、それが団体旅客の乗客にも何かしらの影響があるのかな、とも感じたニュースでした。



●関連ニュースサイト:
京王観光、団体旅行で不正=JR乗車券、実際より少なく | 乗りものニュース



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