こちらのエントリーで先週ご紹介したように、京王電鉄の子会社である京王観光では、同社の大阪市内の支店内で、JR乗車券の発券及び使用について、不正を行っていたことを発表したことをご紹介しました。

この不正については、週刊文春によるスクープ記事がきっかけでしたが、その続報が同じく週刊文春に掲載されていました。

京王観光“キセル”の手口は「0円発券」 | 文春オンライン

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▲京王観光による不正の続報が掲載された週刊文春1月24日号

今回号では、不正の手口や、本件への問い合わせに対応する想定問答、そして二代前の京王観光社長、そして現在京王電鉄の社長である紅村康氏へのインタビューとなっています。


その中で、不正の手口について触れられているくだりについては、以下の通りとなっています。

・不正の手口は、「マルス」を利用した「0円発券」によるもの。

・この機能は、やむを得ない事情による払い戻しをいちいち行うのは煩雑なので、取りあえず無料で発券し、乗車が確定したら有料発券に切り換えることとなるが、それを行わず、JR側の売り上げに計上されなかった。

・万が一車掌に見とがめられた時に備えて、添乗員は必ず三ヶ月間有効の指定席回数券を携帯していて、もしもの場合はそれを見せるように準備していた。



この「0円発券」を、より鉄道ファンに知れ渡った言葉を使って報じていたのが、朝日新聞でした。
「指のみ券」使う悪質テクニックも 京王観光不正乗車:朝日新聞デジタル
(リンク太字は管理人による)

報じられている不正の手口は、先の週刊文春と同様ですが、興味深いのはその記事件名に「指のみ券」と記されているところでしょうか。

「指のみ券」(あるいは「指ノミ券」)とは、回数券等の企画乗車券等で、座席の指定を後から行う場合に発行される座席指定券のことで、座席の席番等は入っているものの、他のきっぷと組み合わせて使用しないときっぷとしての効力が無いきっぷのことです。

その他、新幹線で改札を出ずに乗り換えを行う際にも、この「指ノミ券」が発行されることとなっていることから、特に狙ったわけでもなくこの「指ノミ券」を手にしたことのある方も、もしかするといらっしゃるかも知れません。

指ノミ券の実例として、手元にあるきっぷの画像をご紹介します。

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▲松本→塩尻の「指ノミ券」

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▲塩尻→甲府の「指ノミ券」

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▲上記2枚の「指ノミ券」とセットで使用する特急券・グリーン券。

この例では、松本→甲府の特急「あずさ16号」を、松本→塩尻は普通車指定席、塩尻→甲府はグリーン席を利用するもので、同じ列車で一部区間でグリーン席を使用する際に発券されたものです。
3枚目の「特急券・グリーン券」があくまで料金券で、1枚目・2枚目の「指定券」はあくまで座席の指定を行っている券で、これだけでは効力が生じず、これら3枚を組み合わせて、料金券として、かつ、座席が指定された状態で利用できることになるわけです。


今回報じられている京王観光の不正では、上記の1枚目あるいは2枚目に相当する「指ノミ券」のみを不正乗車の人数分用意しておいて座席を確保していたというものであります。

先のエントリーでご紹介した「人数の不正」や「大人を子どもとして購入」などは、マルスの有無にかかわらず行えうる不正でしたが、今回報じられた「指ノミ券」を使用した不正は、マルスがなければ行えないことから、より悪質といえますし、先のエントリーの最後でも記した、京王観光との乗車券類販売委託の打ち切り、即ち「マルス撤収」も現実味を帯びてきた、と考えざるを得ない報道であります。


今後、JR各社が京王観光に対してどのような処分を行うのか、報じられればご紹介したいと思いますが、それにしても、業界や一部ファンのみで呼ばれていた「指ノミ券」という言葉が、まさか新聞誌上に登場してくるとは、思いもよらなかった、というのが正直な感想であります。




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