下記エントリーで、一昨日より公開が開始された、映画「響け!ユーフォニアム 〜誓いのフィナーレ〜」の鑑賞記をアップしました。
劇場版「響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜」を鑑賞しました(2019.4.19、ネタバレあり) #anime_eupho : 阪和線の沿線から

上記記事でもご紹介しましたが、この劇場版公開とほぼ同じタイミングで、原作の最新刊である「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部 決意の最終楽章 前編」が発売されています。

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映画鑑賞後に、早速本書を読み終えましたので、その内容や感想を例の如くざっくばらんにご紹介したいと思います。



※注意
以降は原作本の内容が記されている、すなわち「ネタバレ」となる内容です。
本書をまだ読んでいない方など、当作品についてのネタバレを望まない方は、他のページに移っていただきますようお願いいたします。










内容紹介は、以下の通りです。
部長=黄前久美子(おうまえ くみこ)、副部長=塚本秀一(つかもと しゅういち)、ドラムメジャー=高坂麗奈(こうさか れいな)の新体制で新年度を迎えた新・北宇治高校吹奏楽部。またもや少々クセのある新入部員に加え、今年は強豪・清良女子高校からの転入生である黒江真由(くろえ まゆ)が入部したことにより、部内に再び波乱が巻き起こる。はたして久美子たちは、悲願の「全国大会金賞」を成し遂げることができるのか・・・・・・? 吹部青春エンタメ小説、いよいよ最終楽章!

(本書裏表紙より引用、括弧書きは管理人による。)


今作では、主人公の久美子らが高校3年生となり、また久美子が部長として部をまとめ、そして全国大会に向けて練習に励んでいくストーリーとなっています。
新学年にになり、新入生が入ってくるのは勿論、今回は転入生、しかも前年度全国大会金賞を獲得した清良女子高校から転入してきた真由も加わります。

コンクール全国大会に向けたメンバー(Aメンバー)と、その中でソロを担当する奏者をオーディションで選考するのは、前年度と同様です。
しかし、どのパートが誰になるのか、元々中学からの経験者と高校からの初心者というレベルの違いに加え、真由というレベルの高い転入生が加わることで、学年に関係なく実力主義とはいえ、これまでの頑張りが報われないメンバーもでてくる可能性もこれまで以上に増えてくることでしょうから、よりAメンバー選考結果に対する受け止め方の難しさに対するハードルが高くなったのかな、とも感じました。

加えて、今年度は、オーディションを大会毎(京都府大会・関西大会・全国大会)に実施するという新たな要素が加わりました。
これは、真由が属していた清良女子で採用されていた方法でありますが、府大会からのメンバーを固定していたことで緊張感が薄れ、最後の最後で詰めが甘くなったという昨年度の反省から、緊張感を維持したい、というミーティングでの麗奈の意見もあり採用されました。

すなわち、ソロも含めたオーディションが、全国大会まで進めば3回実施されることとなり、登場人物は勿論、読者にとっても緊張感が続く構成となっております。


個人的には、オーディションの選考方法が増えたことから、今後の展開が更に読めなくなり、読者が今後の展開を楽しみにせざるを得ない要素が増えたのかな、とも思ったりしました。

前編では、府大会金賞・関西大会代表を獲得した時点で終わっていますので、後編での関西大会オーディション以降で大きな動きが出てくるのでは、という気もしますが、それは今後のお楽しみ、といったところでしょうか。
特に今回久美子が獲得したユーフォニアムのソロですが、実力ある転入生の真由、そしてその真由と距離をおきつつ、こちらも実力が侮れない2年生の久石奏(ひさいし かなで)のメンバーでどのような物語が展開されるのか、読者としても胃が痛むような展開がなされるのかも知れませんね。


「胃が痛む」といえば、部長になった黄前久美子。
奏から「部長の胃が痛みませんように」と揶揄されつつも、部内で発生するトラブルを解決していく久美子の活躍ぶりは、これまでに「黄前相談所」と称された実力を遺憾なく発揮、といえるでしょうか。
加えて演奏的な実力も、上述のとおり府大会向けオーディションでソロを獲得するほどの実力。

これだけだと、久美子がカリスマ的な人物として描かれている、と感じられそうですが、実際に読み進めていくと、そんな所は全くなく、一人の脱落者も出さずに部の運営をまとめていこう、という久美子自身の苦悩と葛藤、そして行動が描かれています。

この辺りは、久美子が1年生の時、途中退部した斎藤葵(さいとう あおい)のことが念頭にあるのでしょうが、部の全体的なことを考えれば「去る者追わず」も仕方がないと考えるなか、そこを腐心してまとめていく久美子の姿に、これまた読んでいる方も気が気でならない展開でありました。


加えて、胃の痛む要因としては久美子自身の進路。
既に確固たる進路を定めている麗奈や川島緑輝(かわしま さふぁいあ)に比べ、まだどういう道がいいのかさえも自らで見つけられていない久美子、それに焦るシーンも垣間見られてきて、果たして久美子はどう結論を出していくのか、今後気になっていく内容の一つでもあるでしょう。

伏線的には、府大会オーディション後に久美子が受けた個人面談でしょうか。
担任は、吹奏楽部の副顧問である松本美知恵(まつもと みちえ)。
彼女は、久美子の日頃の行動から、「人間に興味がある」として、文学部、言語学部、社会学部、教育学部といった選択肢を示してきますが、これが今後の久美子の進路にどう作用してくるか、注目したいところであります。


部長の久美子から離れてみると、今作でその頑張りが描かれ、そして報われたといえるのはチューバの加藤葉月(かとう はづき)を挙げたいと思います。
この葉月、主役組の4名(久美子、麗奈、葉月と、コントラバスの川島緑輝(かわしま さふぁいあ)を加えた4名)のなかで唯一高校より楽器を始めた初心者だったこともあり、1年時・2年時ともにAメンバーから外れる結果となっていました。

演奏面以外も含めて、作中では冷遇を受けてきたともみえる、葉月というキャラクター。
基本的に明るい人物として描かれていますが、なかなか結果が出せないところに、仮に今年度も選ばれなければ、葉月自身の諦めが出てくるのでは、との危惧も感じたりしました。

その葉月、今年度は、1年生の指導係という新たな役割が与えらました。
葉月のキャラクター的に、指導係が適当なのか、些か疑問もありましたし、自身の実力より上回る下級生を相手にできるのか、自身が疑問や懸念を投げていました。
しかし、作中では詳細に触れられてはいませんでしたが、その指導係もこなしつつ、自分の実力を高めていき、今回は、Aメンバーの座を獲得することができました。

Aメンバーの舞台で、主役組4名揃ったの演奏が、コンクール府大会で、実は初めて見られることとなります。
長年この作品を追いかけてきたファンの方々には、ようやく4人揃ったコンクールAメンバーを迎えられるということで、感慨深く感じた方もいらっしゃるのでは、とも思われます。
ここはやはり、実際の演奏シーンのアニメ化を期待したいところでもあります。


さて、今作はコンクール府大会金賞・関西大会出場決定の場面で前編が終了しています。

こういう計算をするのは、実はあまりよろしくないのでしょうが、久美子らが2年生の過程を描いた「決意の最終楽章」では、前編はオーディションで終わっていました。
そこから逆算すれば、後編では全国大会まで進むのは十分あり得そうではありますが、上述のユーフォニアムに絡む波乱要因によっては、そこまで進めないかも知れませんし、そもそも全国大会出場したからといって、今年度の北宇治高校吹奏楽部の目標は全国大会の「金賞」。

それを獲得するシーンが果たして描かれるのか否か、どんな結果になるのか、不安と期待を抱きながら、後編の発売を待ちたいと思います。


参考:
「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽分 波乱の第二楽章 前編」を読む【ネタバレ注意】 : 阪和線の沿線から




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