このブログで今年1月にご紹介した、京王観光によるJR乗車券類の不正利用。
参考:【京王観光】JR乗車券の発券及び使用についての不正を公表。団体乗車券類の人数を実際より少なく発券し差額を詐取との報道 : 阪和線の沿線から
【京王観光】大阪地区支店での不正行為について追加報道。「指のみ券」を利用した不正か。 : 阪和線の沿線から

本日(4月25日)、京王観光より、この不正行為についての調査結果と、今後の対応が公表されました。

弊社一部支店によるJR各社様に対する不正行為について|京王観光

不正の概要は、以下の通りです。
なお、下記の内容は、上記発表資料からの引用となります。

●不正行為の概要:
大阪支店・大阪西支店・福岡支店の3支店で、乗車している人数より少ない団体乗車券を発券し、実際の乗車人数との差分について、別途指定席料金込みの回数券を発行することにより旅行を催行。
検札印がない回数券を不正に払い戻すことにより、当該払い戻し額を利益として計上した他、一部を個人で着服。
当該3支店在籍の合計12名が不正に関与。但し他支店ではこうした不適切な行為が行われていないことを確認済み。

●不正金額:
・件数・・・約110件
・金額・・・約6,000万円

保存されている最も古いデータは2007年4月分。

●賠償額・JR各社からの処分:
JR各社へ、賠償金として合計1億8,100万円を2019年5月31日までに支払う。
また、JR各社と締結している乗車券類の委託販売契約は解除

●その他の問題行為:
これまでの調査の過程で、団体乗車券における大人と小人の人数の取り扱い、回数券払戻手数料、学生団体料金の適用、回数券の取り扱いで問題行為が判明済み。(当該3支店以外では確認されず。)

●不正行為の原因等:
大阪地区支店では、首都圏における同社の知名度がないなかで、東京地区に数字的に負けたくない風土から、特に利益管理が厳しく、営業担当者は支店長から目標達成を強く求められる背景があった。
2001年に予算数値達成のために、ある団体旅行案件でこの不正行為を始め、その後複数の社員により他の案件にも用いられるようになった。

京王観光は1953年設立で、しばらく首都圏のみの営業活動であったものを、1969年に関西地盤の桜菊観光と合併した経緯があるが、大阪地区支店の社員は首都圏等の他支店への転勤がほとんどなく、独自の組織文化が維持・継承されてきた上に、上述の利益意識と併せて、不正行為等を生み出す温床となっていたと考えられる。

●再発防止策:
・各支店・営業所の統括管理部門新設
各支店でJR券発券を行う内勤業務担当者が営業担当者と同じ支店長の下にあり、営業担当者からの要請を断れない環境下にあったため、内勤部門担当者を営業部門と分離・独立した組織に集約。

・大阪地区の人事の刷新
大阪支店・大阪西支店を統合し、東京から新たな支店長を赴任。

・今後実施予定の施策
大阪支店の閉鎖(既存顧客への対応要員を残す他、首都圏を中心とした他支店及び本社へ異動)
営業管理システムの一新(決裁基準・業務フロー等の見直し等により、属人的な要素の排除とチェック機能の抜本的強化)
営業担当のジョブローテーションのルール化(人事の滞留に由来する業務の属人化を防止) 等



その他詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



「指ノミ券」という、旅行業関係者あるいはきっぷ愛好家しか普段は口にしないような単語が、まさか新聞紙面上に出てくるという、前代未聞の不正となった今回の京王観光の不正行為。
先のエントリーでは、JR各社が京王観光に対してどのような処分を行うのか、という点も今後の注目点として挙げておきましたが、やはりというべきか、乗車券類の委託販売契約解除、すなわち「マルス撤収」という重い処分が下されました。

また不正金額は約6,000万円とのことでしたが、賠償金としては、一般旅客の不正乗車の際、不正金額の3倍を請求することも踏まえて、ほぼ3倍の1億8,100万円を請求しているとのことでした。

当該不正の温床となった大阪地区支店は、1969年に桜菊観光と合併した流れを汲む支店でありますが、この大阪地区支店もゆくゆくは閉鎖の方針も打ち出されており、上述のJRグループ乗車券類委託販売契約解除と合わせて、取り返しのつかない損失となってしまったことが分かります。


今後、仮に京王観光が信頼回復に努めたとしても、JRグループの乗車券類の委託販売契約が再開されることも、恐らくは難しいのではないか、と思われるだけに、京王観光発券のマルス券は、二度と目にすることは無くなるのだろうな、とも感じた次第であります。


前代未聞の「マルス撤収」という最悪の形となった今回の京王観光による不正行為。
他の旅行会社でも、このような愚かな行為が行われないように願いたいものであるだけに、同業他社においても、本件を他山の石として、厳正な業務監理体制の元、発券業務を行っていただきたいと、マルス券を収集するきっぷファンの一人としては思う次第であります。




●関連ニュースサイト:
JR6社、京王観光に1.8億円請求=団体旅行不正で | 乗りものニュース
京王観光、不正行為で約1億8,100万円をJRに支払いへ 社員による横領も発覚、大阪支店は閉鎖 - Traicy(トライシー)



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