JR北海道では、消費税率が8%から10%に引き上げられる2019年10月1日に、運賃・料金の改定を行う認可申請を行ったことを発表しました。

運賃・料金改定の申請について|JR北海道
運賃改定の申請について(説明用資料)|JR北海道


概要は以下の通りです。

●申請概要:
2019年10月1日実施予定の消費税率改定分と併せ、同社の旅客運輸収入全体で11.1%(税抜9.1%)の改定を実施。

●申請内容:
・普通旅客運賃・・・平均15.7%(消費税抜13.6%)の改定
100kmまでの運賃は、新たに「対キロ区間制運賃」を導入し、他交通機関を考慮した水準を設定。
101km以上200kmまでの運賃は、1.1倍程度の引き上げ
201km以上の賃率は据え置き。

・定期旅客運賃・・・平均22.4%(消費税抜き20.1%)の改定
割引率は現行のままとするが、普通運賃の改定に伴い改定。

・加算運賃・・・南千歳〜新千歳空港間の加算運賃を140円から20円に引き下げ
新千歳空港アクセス輸送開始に伴う設備投資にかかるコストに充てるため、1992(平成4)年7月から千歳線(南千歳〜新千歳空港間)の利用者から加算運賃140円を収受していたが、当該区間の利用者数が堅調に推移し、設備投資額等の回収が順調に進んできたことから、今回の運賃改定が認可された場合、この加算運賃を20円に引き下げる届出を予定

・料金・・・消費税率の引き上げ分のみ転嫁し、増収を目的とした改定は実施せず。

●主な区間の普通旅客運賃(札幌駅から)
(現行運賃→改定運賃、改定額、他交通機関の改正予定額または想定額の順に記載)
琴似・・・210円→250円(+40円)、地下鉄250円
小樽・・・640円→750円(+110円)、バス620円
岩見沢・・・840円→970円(+130円)、バス800円
新札幌・・・260円→340円(+80円)、地下鉄330円
新千歳空港・・・1,070円→1,150円(+80円)、バス1,120円

●主な区間の運賃と料金(札幌駅から、運賃・料金計)
函館・・・8,830円→9,440円(+610円)
釧路・・・9,370円→9,990円(+620円)
旭川・・・4,810円→5,220円(+410円)
稚内・・・10,450円→11,090円(+640円)
網走・・・9,910円→10,540円(+630円)



JR北海道では、度重なる輸送トラブルが発端となり、「絶対に守るべき安全の基準を絶対に維持する」ために必要となる安全投資と修繕を行うこととしたことから、毎年400億円以上の営業赤字が発生することとなり、厳しい経営が続くものと予想されています。

今後も安全確保の為の経費を確保しながら、鉄道の競争力を維持するための輸送サービスの向上や、利用が少なく鉄道を持続的に維持する仕組みの構築が必要案線区の維持を図るため、利用者にも費用の一部を負担するために、今回の運賃改定の申請に至った、と、同社ではその目的を説明しています。

また、今回の運賃改定については、既に下記エントリーでご紹介した「JR北海道グループ中期経営計画」(2019年4月発表)でも施策の一つとして挙げられているところです。
参考:【JR北海道】長期経営ビジョン・中期経営計画・事業計画等を発表。2031年度の経営自立に向けた経営努力・経営課題を示した上で、2023年度までの取り組みを提示 : 阪和線の沿線から


JR北海道の運賃については、1996(平成8)年1月に運賃改定を実施して以降、20年以上にわたり消費税率の引き上げを除き運賃改定は行ってきませんでしたが、人口が増加する首都圏等ならともかく、利用者が減少傾向となっている北海道で、運賃を20年以上も維持するためには、やはりそれなりの無理をしないと維持が難しいのは、これまでの一連のトラブルや、それにより露見された設備や車両の待ったなしの老朽化、であるといえるでしょうか。


このように書くと意外感を持たれるかたも少なくないと思われますが、もとよりJR北海道の運賃そのものが、他交通機関に比べて決して高くない、というところもありました。
上記で記した札幌近郊の場合、例えば札幌〜小樽間ではJRは640円に対してバス(北海道中央バス・高速おたる号他)は610円と、30円の差でありますが、一方の所要時間はJRは32分(快速エアポート)に対しバスは約60分と、JRはおよそ半分の所要時間となっており、今風の言い方で言うところの「コスパ」で言えば、JRに分がある状態であるといえます。
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▲小樽駅構内に停車中の735系。
札幌〜小樽間は、「快速エアポート」の他、区間快速「いしかりライナー」、普通列車を含めて日中1時間6本(うち札幌先着4本)という本数の輸送サービスを提供しています。

同様のことは、札幌〜新札幌、札幌〜新千歳空港といった札幌近郊は割と見られており、逆に言えばこれらの線区においては、JRの運賃水準がサービスに対して安すぎた、ともいえるかも知れません。

今回、そういった他の交通機関の運賃水準も考慮しながら、改定額を決定したとのことで、普通運賃の短距離区間を中心とした値上げが実施されることとなっています。


一方で、201km以上の賃率を据え置いたり、料金については消費税率の引き上げ分のみの転嫁とする等、中長距離の利用に関しては、高速バスや自家用車といった他の交通機関との競争も考慮したものとなっている、といえるでしょうか。


ところで、今回の運賃改定で一つ注目したのは、千歳線(南千歳〜新千歳空港)の加算運賃の引き下げであります。
この加算運賃は、現在の新千歳空港駅が開業した1992年から実施されていて、今年で27年となります。
この回収率が開業25年後となった2017年度の末で約85%と、かなり回収が進んでいることから、今回加算運賃を大幅に引き下げることとなりました。
新千歳空港アクセスがJR北海道の稼ぎ頭となるほどまでに成長した現在、この加算運賃による建設費の回収も相当進んでいるのかな、とは薄々感じてはいましたが、まさかこのタイミングで加算運賃の大幅引き下げに踏み切るとは、厳しい経営環境の中、思い切った判断ともいえるでしょう。

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▲快速エアポート(手稲駅、2019.1.30)
新千歳空港〜札幌〜小樽を結ぶ、JR北海道の収益源ともなる列車であります。
今般、新千歳空港への加算運賃が大幅に引き下げられることとなります。


今回ご紹介した運賃改定の内容でありますが、今後この通りの内容で認可されるのか、それとも改定幅が縮小されることもあるのか、そういった点も気になるところでありますので、今後の動向を注目しておきたいな、と思います。




●関連ニュースサイト:
JR北海道、10月に値上げへ 初乗り運賃は200円、特急料金は増税分のみ反映 | 乗りものニュース
JR北海道、10月1日に運賃を引き上げへ - 鉄道コム



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JR北海道の値上げは運賃が主体: たべちゃんの旅行記「旅のメモ」



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