当ブログでは、鉄道や交通に関する書籍を時折ご紹介しています。
今回ご紹介するのは、こちらの書籍です。

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「地図と鉄道省文書で読む私鉄のあゆみ」と題されたこの書籍。
著者の今尾恵介さんは、地図を元とした鉄道関係の書籍も多く執筆されていますが、この「地図と…」のシリーズは、関東・関西の私鉄各社の開業時から路線網を広げていくその過程を、鉄道省により作成され、現在も保存されている公文書と、当時の地図からその過程を浮かび上がらせていくものであります。

これまで関東地方では「東急・小田急」「京王・西武・東武」「京成・京急・相鉄」、関西地方では「阪神・阪急・京阪」のシリーズが刊行されており、今回関西地方の2巻目として「近鉄・南海」が刊行されました。

今回殊更「近鉄・南海」をご紹介するのは、とりもなおさず我が地元をエリアとする南海電鉄が含まれているからであり、南海線・高野線という現在の路線が、どのような過程で開業されていったのか、またそれが公文書としてどのように残されているのか。
興味があるという次元を通り越し、是非とも知っておかなくてはならないのではないか、とう観点から、今回手に取った次第です。


南海電鉄に関して言えば、その歴史の最初として難波から大和川まで「阪堺鉄道」として1885年に開業してから、佐野(泉佐野)、尾崎と順次延ばして和歌山まで開業する一方、高野山を目指して堺から長野(河内長野)をスタートとした高野鉄道が、北は大阪市内への乗り入れ、そして南は紀見峠を越えて橋本へ、更には本格的な登山鉄道としてケーブル線も介して高野山へ至る過程が、建設の申請やその許認可にかかる書類のやり取りなどから、手に取るように分かるものとなっています。

橋本から高野山を目指すルートが、和歌山水力電気を合併した京阪電鉄と、高野登山鋼索鉄道との並行線として申請が競合していたこと、そして現在の高野線区間(高野下〜高野山)の区間は両社を折衷したルートであることが記されており、こういったところには改めて気づかされたところです。


加えて、この南海電鉄の項では、主に南海線と並行している現在のJR阪和線の前身である「阪和電気鉄道」についても、その設立・建設・開業、そして南海鉄道との競合から合併、という、戦前の鉄道史に彗星の如く現れ、そして伝説を残してその名を消していったその短い歴史についても、しっかりと記されているところから、個人的にも価値が高いものであると感じました。

阪和電気鉄道については、殊更そのスピード伝説(天王寺〜和歌山間を、現在の「くろしお」とほぼ変わらない45分で運行)が有名でありますが、その設立から建設などの過程を丁寧に記した書籍というのは、あまり見たことがないだけに、阪和電気鉄道の章だけでも、購入した価値が十二分にあったと、阪和線沿線の一読者とは感じた次第です。


歴史的な経緯がメインであることから、馴染みのある南海以外の路線だと、読んでいてもなかなか頭に入らないのかな、とも思いますが、逆に言えば、シリーズ内に身近な路線があれば、その線区が計画され、建設され、開業されていった過程を当時の地図とともに振り返る、またとない資料にもなりますので、是非お手元に置いてみてはいかがでしょうか。



地図と鉄道省文書で読む私鉄の歩み 関西2 近鉄・南海 [ 今尾 恵介 ]
地図と鉄道省文書で読む私鉄の歩み 関西2 近鉄・南海 [ 今尾 恵介 ]



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