このブログでも幾度も取り上げてきた「響け!ユーフォニアム」。
高校の吹奏楽部を舞台とした青春物語をテーマとした原作小説、そしてそれを元にしたテレビ・劇場版アニメ、またそこから派生した京阪電鉄によるコラボ企画と、その広がりは当ブログでも幾度にも渡って取り上げてきたところです。

その原作本について、この4月に「決意の最終楽章」というタイトルで、主人公・黄前久美子(おうまえ くみこ)らの最終学年で、コンクール全国大会に向けて練習に励んでいくストーリーとなっていました。
参考:「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部 決意の最終楽章 前編」を読む(2019.4.21)【ネタバレ注意】 : 阪和線の沿線から

その「前編」の発売から2ヶ月経ったいま、「後編」が発売され、いよいよ久美子らの最終学年がどのように幕を閉じるのかが、明らかとなります。
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私自身も早速購入し、休日を半日使って読み終わりましたので、その内容や感想を、これまたこれまでの例にならって、適当に・ざっくばらんにご紹介したいと思います。

※注意
以降は原作本の内容が記されている、すなわち「ネタバレ」となる内容です。
本書をまだ読んでいない方など、当作品についてのネタバレを望まない方は、他のページに移っていただきますようお願いいたします。





●まず結果から:
上記「注意事項」をご覧になった上で、当ブログに目を通されているかと思われますので、まずは結果からまとめたいと思います。

○吹奏楽コンクール結果:
関西大会:金賞・代表
全国大会:金賞


○オーディション選出結果(低音のみ):
関西大会:
ユーフォニアム・・・黒江真由(くろえ まゆ)(ソリ)・黄前久美子
チューバ・・・加藤葉月(かとう はづき)・鈴木美玲(すずき みれい)・鈴木さつき・釜屋すずめ(かまや すずめ)

全国大会:
ユーフォニアム・・・黄前久美子(ソリ)・黒江真由
チューバ・・・加藤葉月・鈴木美玲・鈴木さつき・釜屋すずめ


コンクール結果を見れば、「有終の美」でありました。

久美子らが1年生の時に立った全国大会の舞台、この時は銅賞でした。
そして2年生時には、その全国大会の舞台にさえ立つことは出来ませんでした。(関西大会金賞、代表には選出されず)
そして今年度。55名のコンクールメンバーを大会毎にオーディションする方式を採用し、また難易度の高い自由曲を選択し、何より部員が一丸となり練習に励んできたこと等々、前年よりも更に高い緊張感をもって関西大会に臨んだ結果、望み通りの結果が得られたではないのでしょうか。

次いでの全国大会も、再々度のオーディションによりメンバーが選出されて臨んだ結果、全国大会金賞という、年度当初の目標を遂に成し遂げることができました。


・・・とこう書くと、順風満帆に結果を残したように思えますが、そこに至る過程が、実に読者の心をえぐるような展開となっているのが、これまでの「響け!ユーフォニアム」での様式美、といいましょうか、この最終楽章・後編でもその展開手法は遺憾なく?発揮されていました。

具体的には、上記オーディション選出結果でも分かるように、ユーフォニアムのソロが関西大会では転校生・黒江真由となったこと、そしてそもそもユーフォニアムが京都府大会では3名(上記2名に久石奏(ひさいし かなで))だったのが2名に減らされ、逆にチューバが3名から4名に増やされたことでしょうか。

実力的には久美子と肩を並べる力を持つ真由でありますが、3年生から転校してきた転入生。
その位置づけの彼女が、関西大会で部長の久美子に替わってソリを担うことになったということは、他の部員に心理的な混乱を与えたのは間違いありません。
しかも当の真由本人が「オーディションを辞退したい」と全国大会オーディションに向けてまで、幾度も久美子に訴えるほど、執着が無いとくれば、本当に「恐ろしい人」と奏が断じるのも当然とも思えるでしょう。

加えて、関西大会でユーフォニアムを減員して奏が外れるといった重ねての波乱材料もあるとなれば、顧問の滝先生に対する不信感も出てこないこともありません。
まさその不信感は、当の久美子自身も感じるようになり、そのことでドラムメジャーの高坂麗奈(こうさか れいな)と遂に衝突してしまいます。

麗奈と二人きりの時、上記の不信感を打ち明けたところ、麗奈に「部長失格やな」と言われたこと、そしてそのことを、副部長の塚本秀一(つかもと しゅういち)の居る前で明らかとなってしまい、そしてそのことで、幹部間に亀裂が入るという収拾の付かない事態になってしまいました。


そんな展開の中、久美子が相談したのは、卒業生の田中あすか。
あすかの家に向かうと、同じく卒業生の中世古香織(なかせこ かおり)が出てきて驚いた久美子でありましたが、二人に相談したところ、あすかからは滝先生も未熟である(特に人間関係の管理)ことから、それを補っていかないといけない、という、少なくとも久美子にとっては目から鱗のアドバイスを受けました。

そして、久美子は翌朝、麗奈に滝先生が完璧では無い、だからこそ滝先生についていくべきだ、ということを伝えます。
麗奈も麗奈で、久美子に部長失格だったということを言い過ぎた、と釈明します。

加えて久美子は部員全員の前で、自分の思いを伝えます。
これは、香織が久美子に対し、自分の気持ちをちゃんと伝えること、というアドバイスを忠実に実行した瞬間でもあったでしょうか。
部長になってからこれまで、部員の相談に乗ったりして、部の運営が円滑に回るように苦心してきた久美子でありましたが、よもや相談所の自分が今度は相談する側になってしまう、ということになりましたが、やはりそういうアドバイスは卒業生の役割であった、といえるでしょう。


とまあ、これだけの過程を経て、全国大会のソリは再び久美子が担うことで、大会本番を迎えた、とうことになりました。

「久美子が自分自身がどうしたいのか」。
強烈な個性の滝先生と麗奈がいたからこそ、敢えて表に出す必要のなかった思いが、よもや演奏者としての自分自身を取り巻く問題から、それを吐露することで、最後の最後に問題を解決するに至った。
ここに至るまでの展開に、前巻同様胃の痛い思いをしながら読んだ方も多いのではないのでしょうか。


●それぞれの進路:
久美子らは高校3年生。高校卒業後の進路も描かれました。

まず、既に進路の方向性が固まっていた川島緑輝(かわしま さふぁいあ)と麗奈は、秋には既に志望校合格の通知を受け取っていました。
それに対し、夏頃まで志望校やその方向性さえもきっちり定まっていなかったのは、葉月と久美子でありましたが、そのうち葉月は、お盆休み中の大学イベントを見た結果、保育士の資格が取れる短大を志望することに決めました。

既に担任の松本美知恵(まつもと みちえ)から「面倒見がいいので、子供と関わる仕事はどうか」とアドバイスされたのが決め手となりました。
考えてみれば、これまでで明るいキャラクターでありながら、2年続けてAメンバーに選ばれないなど、何かと冷遇された立場でありましたが、前作「前編」から1年生の指導係を担ってそのレベルアップに多大な貢献をし、また学年差を抜きにして後輩と接することが出来るという一種の能力も描かれており、面倒見の良さは、副顧問の美知恵が理解するには十分だったのではないのでしょうか。

中学時代は元々運動部で、体力的には問題の無い葉月。
保育士というフィールドは、彼女の能力を十分に発揮できる場所ではないでしょうか。


そして、当の久美子の進路は、「学校の先生」でした。
しかも、エピローグでは、7年後の北宇治高校で吹奏楽部の副顧問となっていることが描かれています。
「前編」のプロローグでは、中庭に生える桜の木の樹齢が7年、という描写がありましたが、実はこれは久美子らの学年が卒業記念に植えたもの、という種明かしとなっています。
また「前編」では、先生(ここでは久美子と描かれていない)が赴任して3年目という記述でしたが、上記の桜の樹齢と兼ねて考えると、久美子が大学卒業後、新任で北宇治高校に赴任、そして3年目の春がエピローグ・プロローグの時間軸、ということになります。

先の前編では、美知恵との個人面談で、「人間に興味がある」として、文学部、言語学部、社会学部、教育学部といった選択肢を示された久美子でしたが、どうやらこれらの中から教育者の道を選択した、という伏線が回収された、最後でありました。


●久美子3年生編もアニメ化決定:
このように、コンクール全国大会金賞という、多くの読者がきっと期待していたであろう結果に、でもその過程は一筋も二筋も行かなかったという意味でも読者の期待通りにまとまった今回の「後編」。

高校時代の本編描写は、コンクールも終わってしまった以上、この先が望める訳ではないのですが、短編的なストーリーを掘り起こす要素はまだ残っていると考えられるだけに、そういった意味での続編も期待であります。

加えて、この久美子らの3年生編も、アニメ作品としての製作が決定されています。
参考:『響け!ユーフォニアム』久美子3年生編 制作決定!!:NEWS | 『響け!ユーフォニアム』公式サイト

現在、久美子らが2年生編の劇場版アニメが公開されていますが、既にこの3年生編が発表されています。
転入生という位置づけで新たに加わったキャラクター・黒江真由がどのような声優さんで表現されるのか、といったところも今後の続編で注目であります。


このように、本編は終わりましたが、まだまだ各種展開が続くこの「響け!ユーフォニアム」。
このブログでは、2015年7月に発表された京阪電鉄とのコラボ企画のご紹介がはじまりでした。
参考:【京阪電鉄】アニメ「響け!ユーフォニアム」とのコラボ企画を実施。企画きっぷの発売や大津線ラッピング電車の運転、パネル展示等を実施 : 阪和線の沿線から

以降、テレビアニメ放送・劇場版アニメ公開等の節目などでコラボイベントが実施され、その様子も当ブログで幾度もご紹介してきました。
原作本の本編の時間軸としてはここで終了となりますが、今後の3年生編のアニメ製作等、まだまだ各種メディア展開が続く「響け!ユーフォニアム」ですから、京阪電鉄とのコラボ企画もまだ続けばいいなと思いますし、その情報は精力的にご紹介していきたいと思いますので、これまで同様、多くのアニメファン・鉄道ファン・吹奏楽ファンの方々に参加していただければいいな、と感じた次第であります。




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