和歌山電鐵貴志川線では、2006年の運行開始以来、ネコの駅長「たま」や様々なデザイン電車により、一時は廃止の危機のあった同線が、ローカル線再生のモデルケースとなるまでに復活してきた過程は、多くの方に知れ渡ったところです。

一方で、近年では、台風による復旧工事費に加え、昨年の関西空港連絡橋への貨物線衝突による海外インバウンド客の激減、そして構造的な問題である少子高齢化に伴う通勤・通学客の減少等が重なり、2017年・2018年の2年間で、5000万円の累積赤字を計上する事態となっています。

更に今年も赤字となれば、債務超過への対処が必要な心配にもなってきていることから、この8月に「キシカイセイプロジェクト」と銘打って、様々な企画を実施することで、貴志川線の安定的な永続運行を目的として、貴志川線等の地域公共交通の現状を正しく知ってもらうとともに、社会インフラとしての貴志川線の安定的な永続ができるよう、行政、地域、事業者が一体となって取り組みを行うことを目標として、プロジェクトを実施することを発表しました。

貴志川線を未来につなごう!キシカイセイ”プロジェクト 始動!|和歌山電鐵

プロジェクトの内容は以下の通りです。

第1弾:「迷探偵コンナンクイズラリー 貴志川線最大の危機を救え!」開催
・2019年7月20日(土)〜9月1日(日)まで
迷探偵コンナン クイズラリー 〜貴志川線最大の危機を救え!〜 2019.7.20から

第2弾:「あと5回きっぷ」の発売
・2019年8月11日(日)から
・普通券5枚綴り、台紙に新聞風等の現状を伝えるメッセージ
「あと5回きっぷ」の発売開始!

第3弾:「枕木オーナー」の募集
・緊急安全対策で約700本の木枕木の交換への支援募集

第4弾:登録有形文化財「伊太祈曽車庫」の観光資源化
・案内看板等の整備、見学ルートの回廊化による集客施設としての有効活用
・体験メニューの開発による滞在型観光の開発
・貴志川線関連資料等の展示スペースや休憩スペースの整備

第5弾:クラウドファンディングの活用
・「貴志川線を持続可能で安定的に永続すること」を目的とした施策に対する支援を募集

第6弾:副駅名称(命名権)、貴志川線サポーターの募集
・駅名称を含め、駅看板やHPへ企業名を掲出

第7弾:キャッシュレス決済への対応
・2次元バーコード(QRコード)決済の導入(8/11よりPayPay、Alipayを先行導入)
QRコード決済《PayPay》《ALIPAY(アリペイ /支付宝)》8.11からサービス利用開始

第8弾:四季の郷公園味覚ゾーンとの連携強化
・駅〜公園間の2次交通の拡充

第9弾:観光いちご狩り事業への参入可能性を研究
・高い人気の観光いちご狩りの需要を取り込むため、協会と連携し貴志川線専用農園の可能性を研究

第10弾:三社参り周遊きっぷの開発
・認知度を高め、周りたくなる動機づくりに周遊乗車券を開発
・御朱印帳付き周遊きっぷ等



詳細は、上記発表資料をご覧下さい。


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▲貴志川線沿線随一の桜の名所・大池遊園を走る貴志川線・たま電車。
(2018.4.1)
大池遊園へのアクセスとしても至便な貴志川線。観光アクセスの観点からも路線の永続が不可欠といえます。

冒頭で記したように、南海電鉄時代に廃線の危機にあった貴志川線ですが、両備グループの継承による和歌山電鐵として再出発し、今ではローカル線再生のモデルケースとまで言われましたが、近年では観光客の減少等による経営の悪化もあり、持続的な運営は難しい状況になっている模様です。

そんな現状を、沿線内外にアピールし、元来地方公共交通のあるべき姿である「公有民営」に取り組まなければいけない時期との認識のもと、「第二の創業」として、様々な企画・施策を実施することが発表されました。


個人的に注目したのは、「あと5回きっぷ」「キャッシュレス決済への対応」でしょうか。

「あと5回きっぷ」は、かつて「あと4回きっぷ」として、貴志川線利用者の更なる支援を目的に発売されましたが、今回は「5回」と回数が1回増えていることからも、危機感がにじみ出ていることがわかる方も多いのではないのでしょうか。
この「あと5回」は、沿線の住民(約8万人)が1年間にあと5回多く貴志川線を利用することにより、赤字運営からの脱却が可能であることから命名されています。
現状の年間利用者は210万人程度とのことですので、利用者数の20%増は簡単ではありませんが、逆に言えば、沿線のみんながあと5回利用するだけで、達成できるわけですから、沿線住民の再度の奮起を期待したいところです。

もう一方の「キャッシュレス決済への対応」ですが、2次元バーコード(QRコード)決済の導入として、既に「PayPay」「Alipay」を先行導入しているとのことです。
「ICOCA」等の交通系ICカードの導入が難しい和歌山電鐵にとっては、設備投資が少なくて済むQR決済は、キャッシュレス決済への対応としては妥当な選択であるといえるでしょう。
実際、岐阜県の長良川鉄道では今年の7月1日から「PayPay」による決済サービスを開始しており、この手の決済への対応は、おいそれと交通系ICカードを導入できない地方鉄道を中心に広がっていくのではないかと思われます。
参考:スマホ決済アプリ「PayPay」でのお支払い|長良川鉄道

和歌山電鐵では、この「PayPay」に加え、中国で普及している決済サービス「Aplpay」を試験導入しているところが、訪日外国人旅行者も多く利用する実態を象徴しているともいえるでしょう。
ただ現状では、運賃の支払いは利用できず、あくまで貴志駅や伊太祈曽駅でのグッズ販売のみに使えるとのことなので、注意が必要です。

QR決済は、他にも様々な種類があり、百花繚乱の様相を呈していますが、今後本格運用では主に普及しているサービスを中心に実施されるのではないのでありましょうか。
また、現在はサービス提供していない、乗車券類等への導入も、期待したいところであります。


以上のように、永続に向けて実は結構重大な局面を迎えている貴志川線。
私としても、紀の川市貴志川地区と和歌山市内を結ぶ主要な公共交通機関として、廃止されることによるデメリットは計り知れないと感じていますし、両備グループ小嶋社長が唱える「公設民営」でないと、こういう「収益は出ないけど社会的に必要な路線」の維持は難しいと思っています。
一方で、未だ「採算が取れない公共交通機関は不要」という、もはや錆び付いた古くさく時代遅れな考え方が、未だこの日本に蔓延っている現状があるのもこれまた事実でありまして、そういった考えを払拭し、真にあるべき公共交通機関の維持運営の方法とは何か、というのは沿線内外に問題提起していく意味では、今回の企画がより多くの方々に認知され、そして行動に結びつくことが必要なのかな、と思っています。

沿線民ではありませんが、明日でも早速「あと5回きっぷ」を買ってこようかなとも思いますが、この記事を読んだ方々も、それぞれのやり方で貴志川線の永続へ協力していただければと思い、本日のエントリーとさせていただきます。



●関連ニュースサイト:
和歌山電鐵 あと5回きっぷ 発売(2019年8月11日〜) - 鉄道コム
和歌山電鐵 迷探偵コンナン クイズラリー(2019年7月20日〜) - 鉄道コム



●関連ブログ:
wap ONLINE:わか電、キシカイセイなるか?!



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