私の住んでいる大阪府阪南市で現在、「阪南市地域公共交通網形成計画(案)」へのパブリックコメントが募集中です。

「阪南市地域公共交通網形成計画(案)」に対する皆さんのご意見を募集します。/阪南市ホームページ

パブリックコメントとは、下記阪南市Webサイトによると、「市政の運営における基本的事項を定める計画や広く市民に適用され、市民生活に重大な影響を及ぼす条例等の制定・改廃等において、案の段階で広く市民のみなさまに公表し、ご意見をお寄せいただき、お寄せいただいたご意見についてとりまとめたうえで本市の考え方を公表するとともに、有益なご意見を考慮して本市の意思決定を行うこと」とされています。

参考:
パブリックコメント/阪南市ホームページ

こういったパブリックコメントは、多くの自治体でも同様に制度が整備されており、いま話題のとある県のゲームやらの時間を制限するとやらの条例案についても、現在パブリックコメントに付されているところです。
(参考)
香川県|香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)素案についてパブリック・コメント(意見公募)を実施します
(※)ところで上記の香川県の条例素案へのパブリックコメントですが、意見を提出できる対象が香川県に住所を有する者と条例素案第11条に規定する事業者に限られています。
なので、私のように香川県民でない個人は、この条例素案に意見をすることができないのですが、他の同じく香川県が実施するパブリックコメントでは、特にそのような制限は無さそうな感じです。
また他のパブリックコメントでは、期間が1ヶ月程度確保されているのに対し、この条例素案では2週間程度と期間が短くなっています。
議会事務局提案のパブリックコメントでは、他と違う取り扱いを可能とする等、そんな要綱があったりするのか気になるところですが、それはそれで公平なのか、という気もしますし、割と重大な条例素案なだけに、より広く意見を受けるべきではないか、という手続き上の批判というのも起こりそうな気します。
ともかく香川県在住の皆さんは、このパブリックコメントに何らかの意見をしてもらえると有り難いです。



本題から少しそれましたが、今回パブリックコメントが募集されているのは、「地域公共交通網形成計画」ですが、これは2018年(平成30年)3月に策定された「阪南市公共交通基本計画」(以下、「基本計画」)の実施計画として、その基本理念を実現するための計画として定めるものです。
阪南市公共交通基本計画を策定しました。/阪南市ホームページ

基本計画は、2018年度(平成30年度)から2027年度(令和9年度)までの10年間の計画で、その基本理念として「公共交通と自動車交通のインテグレーション(※)の実現」として、目的や状況に応じて多様な手段が選択可能な姿を目指すこととしています。
((※)統合、融合、融和等の意味で、本基本計画では「融合」の意味で使用)

その基本方針を踏まえ、基本方針として、「広域基幹交通」「市内基幹交通」「地域内交通」のそれぞれに対応した基本方針を設定し、必要な取組の方向性を示しています。
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▲阪南市公共交通基本計画における基本方針の設定
(同基本計画Webサイト(http://www.city.hannan.lg.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/25/koukyoukoutuukihonnkeikaku_honpen.pdf)P57より引用)

取組の方向性としては、「公共交通の利便性向上」「賑わい再生」という大きな二つの柱のなかで、更に「交通結節点の整備による機能向上」「公共交通ネットワーク改善による地域公共交通システムの構築」「公共交通の利用環境の改善」、そして「公共交通による外出機会の増加」といった4つの方向性から施策を推進、これらの施策をパッケージ化して取り組むことで、基本理念の実現を目指すものとしています。
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▲「基本計画」に基づく取組の方向性と施策例
(同基本計画P61より引用)

今回パブリックコメントが募集されている「地域公共交通網形成計画」は、上記に記した「基本計画」の実施計画として、基本計画を実現する具体的な施策を計画する位置づけとなっています。
その具体的な取組としては、以下のとおりとなっています。

●目標1:需要と供給を踏まえた効率的な公共交通の実現
施策1:重複運行区間における輸送効率の改善
施策2:地域内交通における路線の見直し

●目標2:利便性の向上による快適な利用環境の実現
施策3:鉄道・バス間の乗継環境の改善
施策4:経路検索による情報提供の実現に向けたデータの整備

●目標3:地域公共交通の役割と必要性に関する意識醸成
施策5:公共交通利用促進に向けた勉強会の実施
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▲地域公共交通網形成計画を達成するための具体的な取組
(阪南市地域公共交通網形成計画(案)本編(http://www.city.hannan.lg.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/25/moukeiseikeikaku_an_honpen.pdf)P24より引用


「施策1」は、南海ウイングバス南部が運行する路線バスの尾崎線(尾崎駅前〜和泉鳥取)、阪南スカイタウン線(箱作駅前〜桃の木台1丁目〜箱作駅前)と阪南市コミュニティバス「さつき号」との重複運行区間において、輸送効率を改善することで、収支改善を図るものです。
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▲路線バスと「さつき号」の重複運行区間
(同計画案本編P25 より引用)

「施策2」は、「さつき号」の収支率が約2割という状況を鑑み、事業全体の効率性の観点から、バス停の配置やルート等の見直しを段階的に進めるとともに、新たな交通システム(乗合タクシー等)も視野に検討する、というものです。
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▲「さつき号」のバス停別乗降人員
(同計画案本編P26より引用)

「施策3」は、バス利用を増加させるための改善点として、「鉄道とバス路線の乗り継ぎが悪い」点が3番目に多いことを踏まえ、市内の交通結節点(南海尾崎駅、鳥取ノ荘駅、箱作駅、JR和泉鳥取駅)において、鉄道、路線バス、「さつき号」間の乗り継ぎに考慮したダイヤ設定を行い、乗継利便性の向上を図る、というものです。

「施策4」は、近年広く利用されているインターネットによる路線検索において、南海電鉄、JR西日本、南海ウイングバス南部路線バスはカバーされている一方、「さつき号」が対応していない状況から、「さつき号」についても、データを整備して経路検索事業者へ情報提供する、というものです。

「施策5」は、住民アンケート調査結果で、市内バス交通の必要性を感じているのが約5割である一方、74歳以下の世代ではバスをほとんど利用していない(7〜8割)という状況から、地域住民に対して公共交通に関する現状の理解を促進し、地域の実情に応じた利用促進を図るため、地域の公共交通に関する勉強会を実施する、というものです。
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▲公共交通利用促進に向けた勉強会の実施による、地域住民の意識醸成イメージ
(同計画本編P29より引用)

これら5つの施策について、2020年度(令和2年度)から2022年度(令和4年度)の3年間で実施していくもの、というのが今回の計画(案)というものです。


阪南市の公共交通を取り巻く状況は、上述「基本計画」にデータと調査でまとまっており、概略すれば、高い自家用分担率により、特に市内のバス利用が低く、現状を放置すればバスを中心とした公共交通の縮小・撤退が避けられないものである、と考えられます。

そのためには、そもそも阪南市内に「バス」が走っていて、それを使わないとなくなってしまう、というのを、住民がもっと知っておく必要がありますし、一方で、「使えないもの」を「使え」というのは難しいことから、可能な限りの利便性向上を図るために、可能なことから実施していく必要がある、と考えられます。

そういうった観点から今回の計画案をみますと、まず「施策1」「施策2」で挙げられた、「さつき号」の運行を持続可能なものとする改善・見直しが注目されます。
私の場合、和泉鳥取駅と尾崎駅の間を利用することが少なからずあるのですが、まさにここが路線バス・さつき号の併走区間であります。
この状況をちょっとは整理した方がいいのではないか、とは以前から思ってはいたのですが、昨今のバス運転手不足もあることから、今回の計画案に掲げることで、より持続可能な姿とするのは、やはり必要なのかな、と思っています。

一方、施策3の「乗継改善」は、鉄道側のダイヤが広域な網を形成している関係上、主にバスダイヤの改善になるかと思います。

また、施策4での経路検索への「さつき号」追加ですが、まずコミュニティバスが経路検索に含まれない理由としては、利用者に制限がある地域もあることから、必ずしも鉄道・路線バスと同列に利用できるものではない、という事情があるのかもしれません。

ただ、こと「さつき号」に関して言えば、阪南市民であるか否かに関わらず利用が可能で、またそのルートも「尾崎駅前〜山中渓駅前」等のように、「さつき号」利用が合理的な場合もあります。
そう考えると、「さつき号」については、路線バスと同等に利用できる交通機関であり、特に桜や行楽のシーズンになれば、経路検索に表示されたルートをもとに、市外からの観光客も利用者も上積みできることから、収支率改善に寄与することも考えられます。

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▲阪南市役所前に停車する阪南市コミュニティバス「さつき号」。
今回パブリックコメントを募集する「地域公共交通網形成計画」で、持続可能な運行形態に向けての取組が示されています。


そして、施策5の勉強会実施ですが、そもそも決して少なくない阪南市民が、「バス」という乗り物が自分の市内を走っている、ということを知らないのではないか、と私は以前からおぼろけながら思っていたりしています。
そんな、地域の公共交通機関に無関心な住民の意識を改革し、バスも利用できるものであり、自家用車が使える世代であっても、バスは時折でもいいから使わないといけないものだ、と意識づけを根気強くしていく必要なのかな、と感じています。


以上、長々と今回の地域公共交通網形成計画(案)についてコメントしましたが、パブリックコメントの締切は2月12日(水)となっています。
パブリックコメントの提出について、どこかの県のゲームを規制する条例のような、阪南市在住の要件等はない模様ですので、阪南市外の在住の方々も、ご自分がお住まいの公共交通の状況などと比較して、意見してくださればいいな、とも思っています。

勿論、阪南市在住の方々についても、上記でも縷々記してきたように、まさに「我が事」として捉えていただき、意見をして頂ければと思います。
その際に、やはり計画を全て読むのも大変、ということもあるので、ある程度整理して記してみましたので、是非ともご参考にしていただければと思います。


というわけで、私も意見をしてみようかな、と思いますが、その結果が公表されれば、当ブログでもご紹介できればと思っています。



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