和歌山県の瀞峡で観光船事業を経営している熊野観光開発では、この瀞峡で運行するウォータージェット船について、2021年1月1日付けで事業を休止することを発表しました。

瀞峡ウォータージェット船事業の休止について|熊野観光開発

概要は以下の通りです。

・熊野観光開発では、古くはプロペラ船の時代から、近年はウォータージェット船を運行してきたが、2011年の「紀伊半島大水害」以降、ウォータージェット船が航行する熊野川及び北山川に流入する土砂が年々増加し、自社による航路整備の作業効率が著しく悪化し、航路維持にかかる労力が過大となっている。

・同社では運営方法の見直し等で、事業存続に向けて努力してきたが、作業員の高齢化に加え、今般の新型コロナウイルス感染拡大の影響による乗客の減少もあり、事業を休止することとした。

・休止開始日は2021年1月1日。なお現在も航路悪化等のため運休中


詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



奥熊野のパワースポットである瀞峡を、これまた全国的にも珍しい「ウォータージェット船」で駆けめぐるこの瀞峡ウォータージェット船は、北山村のいかだ下りと並んで、奥熊野の著名な観光スポットでありました。
断崖奇岩を眺めながらの往復2時間の船旅は、これまた心を洗われる旅路だったかと思います。

その瀞峡ウォータージェット船ですが、上記発表資料でも言及されているように、2011年(平成23年)9月に発生した「紀伊半島大水害」以降、流入する土砂の量が増加し、それに伴い土砂の浚渫等の作業が負担となっていたようです。

確かに近年、このウォータージェット船の運休が増えたような気がしていたのですが、何故に増えてきたのか、少し疑問に思っていたのですが、土砂の流入が増えた結果水深が浅くなることから、ちょっとの大雨で土砂が多く流入しただけで航行が不可能になっていた、というわけでしょうか。

それに加え、今回の新型コロナウイルス感染症による観光客の減少が追い打ちをかけ、結果、今回の事業休止に至った、ということのようです。


私自身、この「ウォータージェット船」に以前から乗船してみたいと思っていました。
ウォータージェット船が航行する北山川の上流にある和歌山県北山村(日本唯一の、全域が飛び地の村)には、何度か訪問したことがあるのですが、その途中にあるウォータージェット船乗り場の側を通る度に、「いつか乗ってみたいなあ」と思っていました。

ウォータージェット船の絶景は、Web等のメディアで知っていただけに、それをいつか実感したい、と思っていたところ、このような事業休止の発表を聞いて、ただ寂しい気持ちと、もっと早くに乗船という行動に移せなかった自らの怠慢さに後悔の念を抱いた次第です。


土砂流入の増加という、ある意味自然相手の理由なので、「廃止」ではなく「休止」としてはいるものの、航路復活は限りなく難しいのではないか、と感じるだけに、本当に「乗れるうちに乗っておく」のは、こと鉄道に限らず、あらゆる公共交通機関に通じるものだな、と感じた次第です。

今回の新型コロナウイルス感染症で、公共交通機関はモードに関係なく、どこも苦しい経営が続いています。
一時的な苦境、というにはあまりにも長く、そして先の見えない状態が続いているなか、事業そのものを休止・廃止するケースは更に出てくるのかも知れません。
勿論、そうならないように様々な支援策が講じられる(Go To トラベルもその施策の一環とも解釈できます。)べきですが、それであっても力尽きる公共交通機関が今後もでてこないとも限らないことを考えると、何とも複雑にも感じた次第でありました。

ともあれ、「乗れるうちに乗っておく」という心がけを改めて突きつけられた、とも感じたニュースでありました。



●関連ニュースサイト:
瀞峡ジェット船休止 運営会社「航路整備の労力過大」:紀伊民報AGARA



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