このブログの名称にも使わせていただいている「阪和線」は、今から92年前の1929年、「阪和電気鉄道」(以下、「阪和電鉄」。)という鉄道会社により開業されました。

翌1930年には天王寺〜東和歌山(現・和歌山)まで開業し、現在の阪和線の路線形態となったわけですが、既に並行して南海鉄道(現・南海電鉄)が営業していたなか、阪和間の利用者を少しでも獲得するべく、スピードアップをはじめとした様々な取り組みを実施しました。

阪和電鉄のスピードアップに対する飽くなき姿勢は、天王寺・東和歌山間(約62km)を最速45分で結ぶ超特急列車の運転に代表されるところで、この記録は営業列車としては戦後の国鉄「こだま」号が運行開始するまで破られなかった、とも言われています。

その阪和電鉄も、開業後わずか10年ほどしかしない1940年に南海鉄道と合併し、南海鉄道の「山手線」に、そして1944年には国に買収される経緯をたどりました。

その後、日本国有鉄道、そして国鉄民営化によりJR西日本へと、運営主体は変化しましたが、他の大阪近郊路線等と併せたネットワークの一翼を担っているのは、皆様ご承知のとおりであります。


その阪和電気鉄道が全線開業し、昨年で丁度90周年を迎えたわけですが、それを記念した、当時の阪和電鉄の様子をパンフレット等の資料で辿る企画が、和泉市の「大阪府立弥生文化博物館」で開催されていました。


この企画ですが、昨年12月から開催されていたものの、個人的に仕事の都合も忙しく、なかなか見に行けなかったものの、終了までに何とか訪問しておきたい、ということで、昨日(3月27日)、終了一日前にしてようやく見に行くことができました。


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▲大阪府立弥生文化博物館。
今回の企画展「泉州を貫く軌跡」の垂れ幕が、当時の阪和電鉄の広告を再現したデザインで描かれています。

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▲企画展会場

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▲あいさつ文

会場内は、撮影可能となっていましたので、様々な記録を撮ることができましたのでご紹介します。

この企画では、阪和電鉄の開通、全通と、その後の軌跡としての集客施策、そして南海鉄道との合併・国有化の様子を、様々な資料により振り返るものとなっています。


【開通、そして全通】
阪和電鉄開通、全通時の広告、きっぷなどです。
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【運行時間短縮の挑戦】
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▲阪和間を48分、そして45分と短縮していった軌跡が一目で分かる時刻表。
当時としては破格のスピードであったことが分かります。

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▲こちらは紀勢西線(現・紀勢本線)との連絡時刻表ですが、阪和電鉄側の時刻表では「阪和間45分」が強調されている一方、紀勢西線からの時刻表では、阪和電鉄、南海電鉄双方の時刻が記載されていました。

【春夏秋冬の催し】
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▲春の沿線案内

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▲夏の沿線案内

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▲秋の沿線案内

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▲冬の沿線案内

阪和電鉄では、春夏秋冬に応じた集客施策を実施していました。
現在のように宅地開発されるずっと前の時代でもあったことから、通勤利用者等の確保に苦しんでいた一方、沿線の自然などを売りにした行楽利用を積極的にPRしていました。

カラー刷りのパンフレットから、当時の行楽スタイルが垣間見ることができるのも興味深いところです。


【沿線の名所・観光地、そして砂川遊園】
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▲沿線案内

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▲沿線名所

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▲砂川遊園パンフレット

阪和電鉄沿線の名所や観光地をPRする個別のパンフレットも多く作成されていました。
特に阪和砂川(現・和泉砂川)駅に建設された「砂川遊園」は、同社でも力を入れていた行楽施設でありました。
現在はその跡形もなく、住宅地となっていますが、当時の賑わいを伝えるエピソードが、解説文にも記載されていました。

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▲解説文によりますと、「閉園時間近くになると砂川駅では乗車券を買い求める列が駅前通りにまで伸び、入場制限をするほどでした。」とあります。
通勤・通学客が主体の現在の和泉砂川駅では、想像すらできない様子ですが、当時の砂川遊園の人気ぶりがこの様子からも分かります。


【住宅地開発】
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▲上野芝霞ヶ丘住宅案内

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▲阪和葛葉(現・北信太)、泉ヶ丘(現・東佐野)の住宅案内


開業当時は沿線人口が少なく、通勤・通学客が見込めず苦しい経営だった阪和電鉄ですが、それでも他の民鉄事業者と同様、宅地開発にも力を入れていました。
代表的なのが上で挙げた上野芝、阪和葛葉、泉ヶ丘の住宅地開発で、宅地購入者には1年間の阪和電鉄無料乗車券も進呈されていた模様です。

上野芝、阪和葛葉あたりだと、当時であってもまだ大阪市内への通勤圏内ではあったかと思いますが、泉ヶ丘ともなると、当時の感覚では相当遠い場所だったのかも知れませんね。

【色々な「狩り」】
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当時の行楽としては、様々な「狩り」が盛んだったようです。
まだ自然も豊富に残っていた当時の阪和沿線でも、そういった「狩り」目当てのPRも積極的に行っていました。
「みかん」「もみじ」「鮎」「いちご」といった、今でも行われている「狩り」に加え、「チューリップ」や、はたまた「うさぎ」の狩りというのもあったようです。

【ハイキング列車】
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「狩り」加え、「ハイキング」も盛んだったようです。
阪和沿線のハイキングコースとしては、山中渓から和泉山脈を越え紀伊に降りる、「紀泉アルプス」と称するコースなどをPRしていましたが、その紀泉アルプス等のハイキングのために、臨時列車も用意されていた模様です。
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▲ハイキング列車案内
この広告によれば、臨時のハイキング列車は、日祝運転で、阪和天王寺8:10発→長滝8:46着→山中渓8:55着というダイヤになっていたとのことです。
途中の停車駅は特に記されていなかったことから、客扱いはなかった模様で、そういう列車が設定されていた、というのも改めて驚いた次第です。


【南海鉄道との合併】
かように、様々な施策を実施してきた阪和電鉄ですが、冒頭にしるしたように、1940年に南海鉄道と合併され、鉄道史上から姿を消すこととなります。
合併後の案内地図では、南海鉄道山手線として記され、同社の南海線、高野線等と並んで示されることとなりました。
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▲南海鉄道合併後の案内地図。
阪和電鉄時代とはことなり、山手線(旧・阪和電鉄線)も同様のラインカラーで図示されています。


【阪和電鉄を語る「モノ」】
阪和電鉄の歴史は、わずか10年で幕を閉じました。
そのこともあって、チラシ、リーフレット等により歴史を振り返ることが多いのですが、それ以外にも「モノ」として残っているものが展示されていました。

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▲主に国鉄時代のグッズですが、阪和線50周年記念として、開業当時の車両(モヨ100)が選ばれているのは注目すべきところといえるでしょう。

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▲阪和電鉄が進めた行楽地開発の一つとして「射的場」が開設された時のグッズです。
灰皿の底には阪和電鉄の社章(アルファベットのH、Wを組み合わせたもの)が入っているのが特徴的です。

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▲「黒潮号」ヘッドマーク(復元品)
阪和電鉄が白浜への直通列車として運転していた「黒潮号」のヘッドマークです。

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▲国鉄時代の旧型国電に掲出されていた行先表示板です。
「直行」の種別は、現在の「区間快速」に相当するものです。
「和歌山」の行先は、「東和歌山」の改称前から使われているもので、「東」の文字が上から消されているのが分かります。

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▲方向幕
そして時代は下り、JR西日本時代の103系などに使用されていた方向幕です。
この方向幕も現在は過去のものとなり、現在はLEDによる表示になっています。


【阪和電鉄のきっぷ】
当時の阪和電鉄で発売されていたきっぷ(複製含む)も展示されていました。
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▲阪和電鉄のきっぷ。
国鉄・JR時代のきっぷも混在していますが、一番右の列に展示されているのが阪和電鉄時代のきっぷです。

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実物の展示ではありませんが、阪和電鉄時代のきっぷの複写物が展示されていました。
回数乗車券(画像1枚目)のデザインがお洒落なのが目を惹きます。
また、全通記念試乗券、優待乗車券(画像3枚目)といったものも複写展示されており、これまた貴重な資料でありました。

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▲阪和バス乗車券
阪和電鉄では、関連事業としてバスの運行も実施していました。
その優待乗車券も展示されていました。
前述の住宅地購入者等にも優待券が配られていたのかも知れません。




展示の内容は以上の通りでありました。

営業開始から、わずか10年で消え去っていた、ファンにとってはある意味「伝説的な」存在でもあった阪和電鉄ですが、その実はスピードアップへの挑戦をしながら、沿線への集客も地道に行っていた鉄道会社であることが、これらの資料からもうかがうことができます。

今回の展示は、冒頭に記したように、なるべく早く訪問したかったわけですが、個人的な様々な事情により、ようやく昨日訪問することができました。
ブログでアップするのも終了日当日となってしまいましたが、阪和電鉄の短い歴史を深く紹介した展示としてご紹介できればと思った次第です。


昨年全通90周年を迎えた阪和線。
10年後の100周年にはどのようなイベントが実施されるのか、今から楽しみですが、そのイベントをこのブログでご紹介ができるよう、日々の更新も地道に続けていきたいな、と思った次第です。




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