JR北海道・函館本線の倶知安(くっちゃん)駅では、北海道新幹線札幌延伸に伴う工事を実施していますが、この度、新幹線延伸工事の一環として、在来線ホームの移設が実施されることとなりました。

倶知安駅 新ホームの使用開始について|JR北海道

概要は以下の通りです。

【新ホーム使用開始日】
2021年10月31日(日)

【主な整備内容】
ホーム(延長92m、幅4.5〜5m)
連絡通路(延長約40m)

【完成平面図】
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(上記発表資料(https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/210917_KO_KuccyanSt.pdf)より引用)

(※)工事に伴い列車の運休・バス代行輸送を実施
(10月30日(土)の上り列車の一部、10月31日(日)の下り列車の一部)





現在、2030年度末の札幌延伸を目指して工事が進んでいる北海道新幹線。
延伸となる新函館北斗〜札幌間の中で、延伸により最も大きく交通体系が変化するものと考えられるのが、この「倶知安」ではないか、と個人的に思っています。

倶知安町は、北海道後志総合振興局の所在地であることもあり、国や道の出先機関も多く立地する、この地域の中心地の役割を担っています。
加えて、隣接するニセコ町等とともに、スキーを中心とした観光資源が集積しており、コロナ禍前には国内のみならず海外からの観光客が多く来訪していた町でもあります。

勿論、コロナ後における状況にはまだ不確定要素があまりにも多いので、安易な予想は難しく、特に観光に関しては、コロナ禍の期間が長くなればなるほどダメージが大きいわけですが、一方で当地の自然環境と既に存在している観光インフラ(ホテル・スキー場)の量と質をみれば、コロナ禍後であっても一定の集客は見込めるのではないか、と考えてもいいのではないか、とも思っています。


ところが、現在倶知安に通ずる鉄道は函館本線のいわゆる「山線」で、かつては特急「北海」や急行「ニセコ」といった定期優等列車も運行されていましたが、いずれの列車も国鉄時代に廃止されて久しいところです。

現在は普通列車を主体のダイヤとなっていますが、その多くは倶知安〜長万部・小樽の区間運転が主体で、倶知安〜札幌方面の直通列車は、下り(札幌方面行き)2本、上り(倶知安行き)1本を数えるのみとなっています。

その直通列車の所要時間も、約2時間(快速「ニセコライナー」)と、普段使いとするにはあまりにも時間がかかるものとなっています。

方や高速バスに目を向けたとしても、北海道中央バスの「高速ニセコ号」が1日3往復、所要時間は2時間40分と、これまたJRの快速列車以上に時間がかかるものとなっています。
高速ニセコ号|北海道中央バス

それが、この北海道新幹線の札幌開業に伴い、札幌〜倶知安間はおよそ30分程度(※)で結ばれることから、この倶知安町が一気に札幌通勤圏に化けるのみならず、札幌からの日帰り観光は勿論、新千歳空港からのアクセスでも1時間30分程度(快速「エアポート」と北海道新幹線の所要時間で合計1時間程度、乗り換え等を含んだ時間)となり、居住・観光いずれにおいても大きな変化がもたらされることが、確実と考えられます。
(※)北海道庁Webサイトによれば、倶知安〜新小樽(仮称)は約13分、新小樽(仮称)〜札幌は約12分の想定である旨、記載されています。
北海道新幹線の最高速度と所要時間 - 総合政策部交通政策局交通企画課

勿論、札幌都市圏とあまりにも短い時間で結ばれることになるため、これまで否が応でも倶知安に居住せざるを得なかった人が通勤できることから住まなくなり、人口の減少が懸念されるということも考えられます。
ただ、「札幌から30分で結ばれる」ことは、それを補って余りあるインパクトがあるのではないかと思いますし、しかもそれが、これまで30年以上に渡って札幌・函館との直通列車が来なかったこの倶知安であるからして、その影響は他の延伸区間新駅よりもはるかに大きいのではないか、と考える次第です。


勿論、観光利用という点では、東京から5時間程度でダイレクトに結ばれることも、少なくないPR効果になるでしょうが、それよりも倶知安の住民の日々の生活などを考えると、「札幌と30分で結ばれる」ことの方が、はるかに大きな影響を与えるのではないか、とも考えられます。



前置きが大変長くなりましたが、このように北海道新幹線札幌開業後は「札幌と30分で結ばれる」倶知安でどのような変化がおきるのか、今から楽しみでもあり、興味があるのですが、その北海道新幹線延伸に向けての工事の一環として、在来線ホームの移設が実施されることとなりました。

移設される在来線ホームは、上記完成平面図のように、改札口からみて、現在のホームから更に奥に設置されることとなります。
この場所にはかつて、転車台や留置線が設置されていましたが、その場所に在来線を移設し、現在の在来線の場所に新幹線を建設する計画となっています。

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▲倶知安駅に停車するキハ150形(長万部行き)
この写真は2019年1月に撮影しましたが、その後キハ150形は既に「H100形」に置き換えられたわけですが、この写真のホームも、10月下旬で見納めとなります。

新しい倶知安駅ホームは1面2線の構造となっていますが、現在の列車本数からみれば、必要十分な本数といえるでしょう。
またホームの延長は約92mと、列車4両程度が停車できる長さとなっており、山線の拠点駅として長大編成が発着していた名残を今に伝える長いホームも、見納めとなりそうです。




ところでこの移設された在来線ですが、北海道新幹線全通後も引き続き運行されるのかどうか、という点では厳しい予想をせざるを得ません。

上述のとおり、小樽・札幌方面への利用は新幹線が開業することでそちらへシフトすること、そして残った地域輸送についても、現在でさえも小樽方面は上下合わせて25本、長万部方面は同14本と、バスへの移行を行ったとしても十分賄える輸送需要であることを考えると、このまま鉄道として残すことは難しいのではないか、とも思われます。

勿論、この「山線」を含む並行在来線の存廃については、今後地元等の関係者で協議の上、決定されていくことになるため、現段階では廃止が決まっている訳ではないのですが、状況はかように厳しい、ということは事実でありましょう。

その事実を前にして、「山線」を含む並行在来線に関して果たしてどのような決定が行われるのか。
貨物輸送との兼ね合いから路線そのものの廃止が難しい長万部〜新函館北斗の状況も踏まえて、北海道新幹線札幌開業までの間、引き続き注目していく必要があるのかな、と改めて感じたニュースでありました。



【関連ニュースサイト】
倶知安駅 新ホーム 供用(2021年10月31日〜) - 鉄道コム
JR北海道、北海道新幹線延伸に伴う倶知安駅新ホーム10/31使用開始 | マイナビニュース
函館本線 倶知安駅、新ホームを10月31日供用開始。北海道新幹線札幌延伸に向け移転 工事のため10月30日〜31日に一部列車運休。バスで代行輸送 - トラベル Watch



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