JR東日本では、同社の陸羽西(りくうさい)線について、古口〜高屋駅間の高屋トンネルの直下で、国土交通省が建設する高屋道路の「(仮称)高屋トンネル」と交差させる工事が施工されることに伴い、2022年5月14日(土)から2024年度中までの間、同線全線での運転取り止め及びバス代行輸送を実施することを発表しました。

国土交通省による「(仮称)高屋トンネル」の施工に伴う陸羽西線全線の運転取りやめとバスによる代行輸送のお知らせ|JR東日本

一般国道47号 高屋道路「(仮)高屋トンネル」の施工について〜JR陸羽西線のバス代行輸送によりトンネル工事を推進〜|国土交通省山形河川国道事務所

概要は以下の通りです。

【運転取りやめ期間】
2022年5月14日(土)〜2024年度中(予定)(参考:約3年程度)

【運転を取りやめる列車】
陸羽西線(新庄〜余目・酒田間)を運転する全列車

【代行バス運転区間】
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(上記発表資料(https://www.jreast.co.jp/press/2021/sendai/20220222_s01.pdf)より引用)


その他詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



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▲新庄駅に停車中のキハ111型。
画像は陸羽東線・鳴子温泉行きですが、陸羽西線とも共通に運用されているようです。


陸羽西線は、奥羽本線の新庄から羽越本線の余目を結ぶ路線で、両本線を結び、山形県の内陸部と日本海沿岸部とを結ぶ路線として、かつては急行「月山」号といった優等列車が設定されていました。
現在でもその役割を残す快速「最上川」が1日1本(酒田発新庄行き)が設定されています。

この陸羽西線のほぼ中間に位置する古口〜高屋間では、併走する国道47号の高規格道路「高屋道路」が建設されることとなっていますが、その高屋道路の「(仮称)高屋トンネル」建設に支障が生じることから、工事の間、陸羽西線全線で運休・バス代行を実施するというものです。

「道路工事で支障になるので運休」というのも、聞いただけではよく分からない点もありますが、その点は、冒頭でリンクを張った国土交通省山形河川国道事務所に資料が掲載されていますので、そちらを確認することで分かります。

まず、今回の工事となる「(仮称)高屋トンネル」の位置図がこちらです。
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(国土交通省山形河川国道事務所発表資料(https://www.thr.mlit.go.jp/bumon/kisya/kisyah/images/79060_1.pdf)より引用)

国道47号は、陸羽西線及び最上川と併走して走る道路ですが、今回整備される「高屋道路」が含まれる区間では、連続雨量150mmを越えた際に事前通行規制が実施される区間であることから、この区間の南側をトンネル等で通過するバイパス道路が建設されることとなっています。

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(国土交通省山形河川国道事務所発表資料(https://www.thr.mlit.go.jp/bumon/kisya/kisyah/images/79060_1.pdf)より引用)

その高屋道路のうち、陸羽西線と交差する「高屋トンネル」では、陸羽西線のトンネル(第2高屋トンネル)の約3m下を国道バイパスのトンネルが通過することから、工事期間中の列車運行への安全対策には、技術的な課題が多いことから、安全確保を図るため、トンネル掘削施工期間中は、陸羽西線を運休して、バス代行輸送にすることとなりました。


高屋トンネル周辺の地形図は、上掲の位置図からも分かるように、最上川に沿う険しい地形であり、既存国道との接続点も考慮する必要から、やむを得ず陸羽西線とこれほど近接した箇所にトンネルを建設することになったものと考えられます。

また、当初は列車を運行しながらの施工を計画していましたが、安全性の観点から列車を運休させるというのは、やむを得ない判断、といえるでしょう。


ということですので、今年5月14日(土)から2024年度中までの間、陸羽西線は全線が運休・バス代行となることが決定しました。(2022年5月13日(金)までの運転
そのため、特に「乗りつぶし」で鉄道全線乗車を目指している方は、運休スケジュールに注意して乗りつぶしを進める必要がありますので、十分注意しておく必要があります。




ところでこの陸羽西線ですが、輸送密度で見ると、2019年度(コロナ禍前)でさえも343人/日コロナ禍後の2020年度は163人/日と、非常に厳しい利用状況となっています。
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▲「第1回 鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」JR東日本説明資料より引用(https://www.mlit.go.jp/tetudo/content/001464076.pdf

JR東日本発足時(1987年度)の2,185人/日に比べると、85%減となっており、国鉄再建法における第1次特定地方交通線の基準である「輸送密度2,000人/日未満かつ30km以下の行き止まり線」または「輸送密度500人/日未満かつ50km以下」の基準であれば、バス転換の対象とされていた線区であります。

このように、利用状況が著しく少ない陸羽西線でありますので、今回の工事により今後の路線そのものの見直しの契機になってしまうのでは、という懸念を示す声もありそうです。
勿論、今回の運休は道路整備事業者に起因するものですので、バス代行輸送や陸羽西線のトンネル補強工事等の費用については、基本的に道路整備事業者である国が負担するものと思われます。

そのため、道路工事に起因しての廃止、というのは無いかと思われますが、今後国道バイパスが開業することで、更に陸羽西線の利用者が減少するようであれば、それこそ路線の存廃に関わる問題になってくるかと思われます。

勿論これは、こと陸羽西線に限った話ではありませんが、運休期間がおよそ3年間も続くことから、その間にこういった利用者の僅少な地方ローカル線に関する議論がどのように進むのか、そして状況がどのように変化するのか、それに伴い陸羽西線の運転再開に何か影響を及ぼしてくるのか、というのも同時に気になるニュースと感じた次第であります。




【関連ニュースサイト】
陸羽西線 全線運休・バス代行輸送(2022年5月14日〜) - 鉄道コム

陸羽西線,5月14日から当面の間バス代行輸送を実施|鉄道ニュース|2022年2月23日掲載|鉄道ファン・railf.jp

陸羽西線「2年間運休」が心配な件。ミニ新幹線化計画も頓挫して | タビリス

新庄酒田道路「高屋トンネル(仮称)」工事のためJR陸羽西線を運休。5月14日から2024年度にかけてバス代行輸送 - トラベル Watch



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