大阪府阪南市では、同市で策定した「阪南市地域公共交通網形成計画」に基づき、市内を運行する路線バス及びコミュニティバスについて、主に重複運行区間に関するバス路線再編を行い、路線バス・コミュニティバス両方の収支改善を図り、持続可能な公共交通の実現を目指すこととしています。

この路線バス・コミュニティバスの再編について、3月11日(金)から16日にかけて住民説明会を実施するとともに、パブリックコメントを実施することを発表しました。

路線バスとコミュニティバスの再編に伴うダイヤ改正に係る住民説明会について/阪南市

【説明会】
(開催日時・場所)
令和4年3月11日(金)午後7時〜 尾崎公民館(定員20名)
令和4年3月12日(土)午後2時〜 防災コミュニティセンター(定員30名)
令和4年3月14日(月)午後7時〜 箱作住民センター(定員15名)
令和4年3月15日(火)午後7時〜 西鳥取公民館(定員20名)
令和4年3月16日(水)午後7時〜 東鳥取公民館(定員20名)

いずれも先着順

【パブリックコメント】
令和4年3月22日(火)〜令和4年4月21日(木)




阪南市では、令和2年3月に「阪南市地域公共交通網形成計画」を策定しました
阪南市地域公共交通網形成計画を策定しました。/阪南市

ここでは、「需要と供給を踏まえた効率的な公共交通の実現」「利便性の向上による快適な利用環境の実現」「地域住民の公共交通の役割と必要性に関する意識醸成」の目標が掲げられおり、それに向けての施策を実施することとしています。

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▲「阪南市地域公共交通網形成計画」の目標及び施策
(同計画より引用)


今回の路線バス・コミュニティバスの再編は、この目標のうち「公共交通運営の効率化及び効果的な運行」を目指すものとし、その施策として「重複運行区間における輸送効率の改善」及び「地域内交通における路線の見直し」を実現するものであります。

この「重複運行区間」については、特に阪南市外の方には若干の説明が必要かと思います。
現在、阪南市内で完結する南海バス運行の路線バスは、以下の2路線が運行されています。
【701系統・701C系統(尾崎線)】
尾崎駅前〜和泉鳥取〜尾崎駅間(一部、中村西口止め)

【771系統・771C系統(阪南スカイタウン線)】
箱作駅前〜桃の木台小学校前〜箱作駅前(一部、桃の木台3丁目止め)


これとは別に阪南市の事業として実施しているコミュニティバスのうち、「緑が丘・さつき台コース」は南海バス「尾崎線」と、「桃の木台・万葉台コース」は「阪南スカイタウン線」と路線の一部が重複しています。
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▲阪南市内重複区間の現状について
(阪南市役所作成資料(https://www.city.hannan.lg.jp/material/files/group/21/03data00002.pdf)より引用。以下単に「阪南市役所資料より引用」と記す。)



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▲阪南市コミュニティバス「さつき号」。
阪南市役所を拠点に市内各地への路線を設定していますが、一部路線バスと重複する区間もあります。


このように、路線バスとコミュニティバスの路線が重複している区間があり、特に利用者の少ない時間帯においては非効率であり、採算性の低下による持続可能なバス路線の維持が難しいことから、今回これらを再編しようとするのが、今回の案であります。

ではどのように再編するのかについてです。
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▲重複運行区間におけるバス再編(案)
(阪南市役所資料より引用)

具体的には、現在路線バスが朝から夜まで、コミュニティバスが昼間を中心に運行していることから、昼間の時間帯において、双方が重複している状況となっています。

これを、路線バスについては朝夕のみ、昼間はコミュニティバスのみとすることで、重複を解消し、市内のバス交通の役割分担を明確化させることとしています。



では、具体的な再編について、以下の資料にて提示されていますので、見ていくことにします。

【(路線バス)尾崎線・(コミバス)緑が丘・さつき台コース】
まず、尾崎駅間〜和泉鳥取〜尾崎駅前の区間であります。
路線バスダイヤの現行と再編案がこちらです。
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▲路線バス尾崎線変更ダイヤ案
(阪南市役所資料より引用)

現行ダイヤでは、6時台から21時台にかけて終日、1時間あたり1〜3本が運行されています。
これを、朝6・7時台、夜18時〜21時台のみの運行とし、8時〜17時台はコミュニティバスによる運行とします。

一方、コミュニティバスの現行と変更ダイヤ案はこちらになります。
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▲コミュニティバス「緑が丘・さつき台コース」の変更ダイヤ案
(阪南市役所資料より引用)

コミュニティバスは、現行のダイヤに加え、4便増便することになりますが、この増発便については、路線バス尾崎線のルートをそのまま通ることになります。
そのため、現行の系統のように「和泉鳥取駅前」や「緑ヶ丘」及び「さつき台」エリアの各停留所は経由しないこととしています。

これにより、路線バスでは日中の18本が削減されますが、その一方代替となるコミュニティバスが4本増便されることとなり、既存のコミュニティバスと合わせて、8時台〜17時台に1時間あたり1本の便数が確保されることとなります。



【(路線バス)阪南スカイタウン線・(コミバス)桃の木台・万葉台コース】
次に、箱作駅前〜桃の木台〜箱作駅前のルートです。
上記と同様、まず路線バスダイヤの現行と再編案をお示しします。
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▲路線バス阪南スカイタウン線 変更ダイヤ案
(阪南市役所資料より引用)

こちらも、上記の路線バス尾崎線と同様、6時台から22時台にかけて終日、1時間あたり1〜3本が運行されていますが、これを朝6時〜9時台・夕方17時台〜22時台の運行とし、10時〜16時台はコミュニティバスによる運行とします。

コミュニティバスの現行と変更ダイヤ案はこちらになります。
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▲コミュニティバス「桃の木台・万葉台コース」変更ダイヤ案
(阪南市役所資料より引用)

こちらも同様に、路線バスの運転を取りやめる時間帯に3本増発し、既存便と合わせて箱作駅前〜桃の木台〜箱作の区間について、10時台〜16時台に1時間あたり1本程度の便数が確保されることとしています。
(7時台に運行されていた1便は減便されるため、コミュニティバス全体では2便の増便となります。)

このコースでは、増発便・既存便の経由地の違いは基本的になく、一部の便が「万葉台住民センター」「万葉台第1児童遊園」を経由するのみとなっています。



これらに加え、「尾崎コース」「山中渓・桜ヶ丘コース」で減便を実施することとなり、再編後の路線バス及びコミュニティバスの運行ルートは下記のとおりとなります。
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▲阪南市内の路線バス・コミュニティバス再編後のルート図
(阪南市役所資料より引用)


また今後のスケジュールも示されています。
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▲ダイヤ改正までのスケジュール
(阪南市役所資料より引用)

これによりますと、冒頭に記した「市民説明会」「パブリックコメント」を実施したあと、許認可手続きや事前周知等を踏まえ、令和4年(2022年)10月10日前後にダイヤ改正を実施する、というスケジュールとなっています。



以上が、今回阪南市役所から提示のあった路線バス及びコミュニティバスの再編内容であります。

現在の阪南市コミュニティバスが運行されたのが、平成15年(2003年)2月と、既に20年目に入っていますが、その間基本的なルート設計はあまり変わらず、部分的な増減便を実施してきました。

一方で、南海ウイングバス南部の「尾崎線」「阪南スカイタウン線」も引き続き終日の運行が続いていて、徐々に減便をしつつある一方、上述のとおり1時間に1本は必ず運行されている、といったダイヤは、基本的に崩れてこなかったように思えます。

これらコミュニティバスと路線バスとでは、経由地や時間帯によって差があることもあってでしょうか、その重複については特に調整は取られてこなかったようですが、阪南市内でのバス利用者の減少や、バス事業者・コミバス事業の採算性の低下等から、この重複運行の見直しが過大となり、市の地域公共交通網形成計画に盛り込まれ、今回その再編が明らかになったものです。


これらの再編内容を見てますと、一定程度の減便は避けられないものの、1時間に1本程度の便数は確保され、必要程度のサービスは確保されているものと考えられます。

一方で、箱作駅前〜桃の木台〜箱作駅前コースでは、阪南スカイタウンから南海線を利用する通学生もおり、それらの学生が帰宅する15時台・16時台の便数が薄いのが若干気になりますが、「地域公共交通網形成計画」内の資料によりますと、阪南スカイタウン線については、17時台以降に利用者が増えることから、「16時台までコミュニティバスで運行」というのはある意味現状に沿った対応なのかも知れません。
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▲路線バス「阪南スカイタウン線」とコミュニティバス「桃の木台・万葉台コース」の時間別利用者数
(「阪南市地域公共交通網形成計画」より引用)
路線バスの利用者は5〜7時台及び17時台〜21時台に多いことが分かります。


(※)なお、通学生の関連でありますが、泉鳥取高校(最寄り停留所:和泉鳥取)については、新規入学者の受け入れを令和4年度(2022年度)限りとし、令和7年(2025年)3月31日をもって閉校(りんくう翔南高校と統合)されることとなっており、今後和泉鳥取停留所への通学輸送は漸減することが予定されています。
(参考)
泉鳥取高等学校とりんくう翔南高等学校の機能統合による再編整備について|泉鳥取高校


また、これは要望になるかも知れませんが、日中運行時間帯において、路線バスの運行がないことから、路線バスの定期券所持者については、コミュニティバスも利用可能(但し路線バスが運行する停留所での乗降に限る)とする措置もできればいいな、とも思ったりしました。


現行の南海バス尾崎線・阪南スカイタウン線ともに昼間の便数が半減することから、利用者の反対意見もあり得るかと思いますが、実情を見ますと、この程度の削減は仕方がない程度の利用実態でありますので、それに沿った再編、といえるでしょう。

この再編ですが、単に重複運行の整理に止まらず、持続可能なバス路線の運行により、将来様々な理由で車を運転できなくなった時に、その代替としての路線バスを維持していくことができるようにするための再編でもありますので、そういった趣旨も理解しながら、この再編案に意見することができればと思っています。



冒頭に記したように、このバス再編については、住民説明会が実施されますので、私自身も忙しい中ではありますが、可能であれば参加して、市当局の考え方を聞きつつ、不明な点については質問することができればいいな、と思っています。




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