北海道新幹線・新函館北斗〜札幌間の開業に伴い並行在来線となる函館本線・函館〜小樽間について、新幹線開業後の運営について協議が行われており、先程長万部〜余市間については、沿線の自治体がバス転換の方針で一致し、廃止の方針が確定しています。


並行在来線対策について協議する「北海道新幹線並行在来線対策協議会」のうち、長万部〜小樽間の方針について検討する後志ブロック会議では、残る余市〜小樽間については、関係する小樽市及び余市町で引き続き協議することとされていました。


この問題について昨日(3月26日)、両市町と北海道を加えた三者で協議が行われた結果、バス転換に合意した旨の報道が各メディアで報じられました。

並行在来線 長万部―小樽廃線へ バス転換合意 27日決定:北海道新聞 どうしん電子版
道と小樽市、後志管内余市町は26日、2030年度末の北海道新幹線札幌延伸に伴いJR北海道から経営分離される並行在来線の函館線長万部―小樽間(140・2キロ)のうち、余市―小樽間(19・9キロ)のバス転換に合意した。これにより、通称「山線」と呼ばれる長万部―小樽間は沿線全9市町がバス転換を容認し、鉄路は廃線が確実となった。道と9市町は27日に協議会を開き、全線バス転換を決める。

小樽市の迫俊哉市長と余市町の斉藤啓輔町長、道の担当者が、小樽市役所で非公開で協議。鉄路の存続を訴えてきた余市町の斉藤町長は協議後の記者会見で「バスの速達性の確保と新たな交通の拠点・ネットワーク整備について、最大限努力すると道の確約を得た。鉄道をやめても便益が下がらず、むしろ住民や来訪客の利便性向上も可能になるのではないか」と転換を受け入れた理由を説明した

上記北海道新聞Webサイト(https://www.hokkaido-np.co.jp/article/661497/より引用)


巨額赤字、苦渋の転換 余市−小樽バス合意 道路・拠点整備で協議決着:北海道新聞 どうしん電子版
全面開通から120年近い歴史を持つ長万部―小樽間の存廃は、余市町の対応が最後の焦点だった。「道庁として最大限努力していくということが確約された」。斉藤啓輔町長は道、小樽市との協議後の記者会見で、バス転換受け入れの理由をこう語った。

 また、鉄路の代わりに《1》道路ネットワークを整備するなど鉄道と同程度の迅速性の担保《2》JR余市駅前のターミナル整備―を道から勝ち取ったと強調。「新たな交通ネットワーク構築ができる」と力を込めた。
上記北海道新聞Webサイト(https://www.hokkaido-np.co.jp/article/661638?rct=n_major)より引用



小樽―余市間廃線へ 北海道新幹線の並行在来線 - 産経ニュース
令和12年度末の北海道新幹線の札幌延伸に伴い、JR北海道から経営分離される並行在来線の函館線小樽―余市(19・9キロ)の廃線をめぐり、道と沿線の小樽市、余市町は26日、3者協議を開き、バスに転換する方向で合意した。同区間は廃線となる見通し。

道の試算では、小樽―余市を第三セクターの鉄路で残した場合は30年間で約206億円の赤字になる一方、バス転換した場合は約18億円にとどまる。小樽市は財政負担できないとしてバス転換の意向を固め、余市町もバスを含めた輸送手段の確保を条件に廃線に同意することを検討していた。

上記産経新聞Webサイト(https://www.sankei.com/article/20220326-LBCKM5GISJMIBFL7AW4A4HNGNE/)より引用


上記各メディアの引用記事のとおり、現状(2018年度)で2,144人/日・kmの輸送密度を有する小樽〜余市間、殊更その区間多くを占める余市町の対応が焦点となっていましたが、今回北海道からバス転換となった際の速達性確保や新たな交通拠点・ネットワーク整備、具体的には道路ネットワークの整備やJR余市駅前ターミナルの整備、といったバス転換の際の条件について、北海道が最大限努力する旨の合意を得たことから、今回函館線の廃止・バスへの転換についても容認の方向で合意となりました。

上記引用記事にもあるように、本日(3月27日)に北海道と後志ブロックの9市町で協議会を開き、全線バス転換を決めることとなっていますが、既に残りの7町はバス転換に合意していることから、この方針が覆る可能性は低いかと思われます。



上述のとおり、小樽〜余市間は、2018年度の輸送密度が2,000人/日・kmと、最近各地の鉄道線区の存廃の基準にもされている2,000人/日・kmを上回ってはいます。
余市町の人口は、同町Webサイトによると2022年2月末現在で17,827人となっていますが、2030年には14,430人、2050年には8,562人と、現在の半分程度にまで減少することが見込まれています。
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▲長万部〜小樽間の沿線人口見通し
(第10回後志ブロック会議(令和3年11月1日)資料https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/5/1/9/1/9/5/9/_/参考資料_函館線(長万部・小樽間)のあり方の検討について(1).pdfより引用)


そのため、小樽〜余市間の輸送密度も将来的に減少が予想され、2050年度には811人/日・kmとなる予測も示されています。
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▲長万部〜小樽間の輸送密度の将来予測
(第10回後志ブロック会議(令和3年11月1日)資料https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/5/1/9/1/9/5/9/_/参考資料_函館線(長万部・小樽間)のあり方の検討について(1).pdfより引用)


一方、現在小樽〜余市間については、JR函館線の他、路線バスや高速バスが運行されていますが、ある程度の本数が既にあることに加え、仮に鉄道廃止となった場合の新たなバスダイヤや、現状の鉄道における利便性を維持するルートの検討が行われています。
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▲現行のバス運行区間及び本数。
(第10回後志ブロック会議(令和3年11月1日)資料(https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/5/1/9/1/9/6/0/_/参考資料_函館線(長万部・小樽間)のあり方の検討について(2).pdfより引用)
余市〜小樽間には、既に121本のバスが運行されています。


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▲利便性を高めるバスルートの検討
(第10回後志ブロック会議(令和3年11月1日)資料(https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/5/1/9/1/9/6/0/_/参考資料_函館線(長万部・小樽間)のあり方の検討について(2).pdfより引用)
既存路線の増便に加え、
・余市から最上トンネル(整備中)を通ることで隘路区間が解消されることで、小樽市内南西部の高校への通学に便利なルートを開設
・余市〜札幌駅への直通高速バスを設けることで、現在のJR線乗り継ぎで札幌へ向かうのと同等の所要時間で結べる新ルートを開設
の2つの検討されています。


これらにより、余市町民の小樽・札幌方面への通勤・通学・その他用務での利用の利便性が確保されることが、北海道によって確約されたことが、今回の決定の決めてとなった、といえるでしょう。


一方で、北海道にとっては重い課題を突きつけられた、ともいえるでしょう。

財政的な負担は鉄道維持に比べると軽くなることは事実ですが、一方で、最上トンネルの整備や余市駅のターミナル機能の整備、加えて、これら増便・開設するバスルートを運営するバス事業車との調整や新規投入となる車両の財政負担等の課題について、北海道がリーダーシップを取って整備・調整する必要がありますが、北海道新幹線の全線開業による並行在来線区間の廃止とともに、円滑なスタートを切れるのか、沿線住民は勿論、沿線外、道外の人々にとっても、むしろこれから注視していく必要があるようにも思えます。



今回の三者の決定により、函館線の長万部〜小樽間は、遅くとも北海道新幹線の札幌開業をもって廃止されることが決定となりました。

これにより、小樽駅に気動車が行き交う姿が見られるのも、北海道新幹線開業前までということが確定となりました。
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▲小樽駅に停車中の長万部行きキハ150形。
現在この区間では新型車両「H100形」により運行されていますが、気動車自体がこの駅に乗り入れてくるのも、あと9年程度となりました。

H100形自体は今後もJR北海道の閑散区間を中心に運用されますが、これについても2030年度までとなりますので、同線区間、特にニセコ地区の山々を走る姿や、そしてそもそも小樽駅に乗り入れてくる様子も、そう遠くないうちに見納め、となります。


これで北海道新幹線札幌開業に伴う並行在来線区間のうち、長万部〜小樽間についてはその方針が定まったわけですが、一方で函館〜長万部間については、その方針が全く定まっていない状況となっています。

この区間は、沿線の普通列車利用は少ない一方、本州と北海道を結ぶ貨物列車の主要ルートとなっていることから、長万部以北よりもはるかに複雑な問題を抱えており、沿線自治体の協議だけでは容易に解決できない問題が山積しています。

今回の長万部以北では、最終的に余市からのアクセス整備を道が責任を持って行うことで合意に到りましたが、この長万部以南で、北海道、そして道外からの物流という観点からは国との調整も非常に大きなものとなりますが、現在の議論の状況で果たして北海道新幹線全線開業時に何らかの形へのスムーズな移行が可能であるのか、これまた非常に気がかりなところであります。


引き続き、この北海道新幹線の並行在来線問題については、動きが出てくればご紹介していきたいな、と思っています。




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