滋賀県では、同県の税制について、公平・中立・簡素の税の原則および本県の行政需要の実情を踏まえて検証を行うとともに、同県税制のあり方について、専門的な見地から検討を行うため、知事の附属機関として、滋賀県税制審議会を設置しています。
この度この税制審議会が、「地域公共交通を支えるための税制の導入可能性について」として、公共交通機関を支えるための税制導入について、具体的に検討していくべきであることを答申しました。
地域公共交通を支えるための税制の導入可能性について 答申(概要版)|滋賀県税制審議会
地域公共交通を支えるための税制の導入可能性について答申(全文)|滋賀県税制審議会
滋賀県税制審議会|滋賀県ホームページ
概要は以下のとおりです。
詳細は、上記滋賀県税制審議会のWebサイトをご覧下さい。



▲滋賀県を走る鉄道。
上から順に「京阪石山坂本線」「JR湖西線」「近江鉄道」。
この他、県内には近江バス、江若鉄道といった路線バス事業者も存在し、県内の地域公共交通を担っています。
我が国では、公共交通機関の維持に対する公的資金の投入が少ない方だとと言われています。
元より、我が国の公共交通機関は、それ単体、あるいは公共交通機関とその沿線開発等の関連事業で収益を生み出してきたという歴史的経緯(特に利用者の多い都市部)があること、そして国の組織として運営されてきた日本国有鉄道が多額の債務を抱えて破綻し、民営化されたこともあり、公共交通といいながら、そこに税金等を投入して運営することに、他の国に比べると非常に嫌悪感を抱いているように感じます。
一方で、あくまで「公共」交通であることをもって、不採算による減便、撤退等については逆に「公共性の責務を果たしていない」等として、これまた多くの批判を浴びせるというのも、我が国の特徴といえるでしょうか。
直近では、JR西日本が利用者の少ないローカル線について、より良い輸送サービスを地域とともに検討するためとして、その収支状況を開示したところ、多くの沿線知事や首長から「不採算による切り捨て」等と批判されたのは、記憶に新しいところです。
これは大手事業者に限らず、中小事業者についても似たような考えで、「公的資金の投入はまかりならない」しかし「不採算によるサービス低下もまかりならない」という、二律背反な意識を多くの人々が持っており、新規建設にしろ維持にしろ、こと公共交通の財源として税金を投入する、とういう話を展開しただけで、多くの国民・住民は「無駄な税金の投入」と批判を浴びせてきたのではないのでしょうか。
しかし、よくよく考えると、「公共」と名がつくわけで、それは沿線住民が誰しも一定の負担で利用できること、そしてその利用が促進されることによる商業、観光、暮らし等の地域の活力は上昇すること、そしてその効果は公共交通の沿線外にも波及することにもなるかと思います。
また、自動車との対比で言えば、公共交通を維持することで当該地域の道路建設の費用を抑制し、その他の緊急度の高い道路建設・維持への費用に充てることもできるため、公共交通への税金の投入が、即座にそれ以外の住民の利益にならない、とは全く言えないと考えられます。
以上のように、公共交通の維持を税金で行うのは、「公共」というその使命を有する輸送手段であることから、むしろ当然にも思えるのですが、上述のとおり我が国ではあまり多くない税金投入で高品質な公共交通が維持されてきたことから、そういった発想の転換がまったく無かったのかも知れません。
今回滋賀県では、「地域公共交通を支えるための税制」として、公共交通を維持するための財源としての税として、その検討を始めるよう、税制審議会が答申を行いました。
これを踏まえて、滋賀県ではその導入について具体的な議論を進めていくことになります。
「どのような用途に用いるのか」(使途)、「どのように徴収するのか」(課税方法)については今後県民との議論を深めて考えるべき、としています。
使途については、地域公共交通の変化として、既存の地域公共交通の利便性向上のと利組みは勿論、デジタルトランスフォーメーションやアフターコロナの状況によるニーズの変化を踏まえて、多様な交通手段の可能性が広がるような使い方を考えること、また、地域公共交通が既に充実している地域とそうでない地域とのいずれからも納得感が得られるような使途を模索する必要性があることを、審議会では指摘しています。
また、課税方法については、既存の税目に対して上乗せする「超過課税方式」を検討することとされ、その徴収方法については「固定資産税等の資産課税」「個人県民税と法人県民税・法人所得税」「自動車税等の車体課税」の3つを例示し、それぞれの税目において解決すべき課題も示されています。
個人的に気になるのはやはり、公共交通が手薄な地域に対するフォローで、既に人口が非常に少なく、公共交通が皆無の地域では、ここで徴収された税金が他の地域の公共交通の維持にしか使えず、かといってその波及効果も感じることが難しいことから、このままでは納得感が得られにくいとは思います。
ただ、そういった地域についても、既存の鉄道・バスのみならず、より小規模の公共交通を導入する財源としてこの税制を活用できれば、そのような地域でも賛成を得られる可能性はありますので、結局は滋賀県の交通ビジョンが、そこまでの姿を描くことができるかどうか、にかかるのではないでしょうか。
あと、車ばかり使って公共交通を使わない人にとっても、将来車を運転できなくなったときに公共交通が無いと生活が苦労すること、そして公共交通の維持そのものが地域にプラスの効果を生み出す(例:地価の維持)といった面も根気強く説明してくことも求められるのかも知れません。
ともあれ、20世紀は公共交通は言ってみれば「官から民」の時代でしたが、21世紀は「官と民」で維持していく必要があるのではないかと思います。
その財源としての交通税の導入は、個人的には賛成でありますので、上記の点を含めた意見に対して丁寧に対話していき、実際の導入に結びつければいいな、と感じたニュースでありました。
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この度この税制審議会が、「地域公共交通を支えるための税制の導入可能性について」として、公共交通機関を支えるための税制導入について、具体的に検討していくべきであることを答申しました。
地域公共交通を支えるための税制の導入可能性について 答申(概要版)|滋賀県税制審議会
地域公共交通を支えるための税制の導入可能性について答申(全文)|滋賀県税制審議会
滋賀県税制審議会|滋賀県ホームページ
概要は以下のとおりです。
【概要】
・滋賀に相応しい税制の目指すべき方向性として、「コミュニティの強化につながる税制」「脱炭素社会の実現へ向けたクリーンな税制」「デジタル化の進展によるライフスタイルの変化に対応した税制」「産業構造の転換に対応するための税制」「税制を通じて県としての役割を果たしていくこと」の5つの方向性を審議会では示している。
・「地域公共交通を支えるための税制」は、上記5つの方向性全てに適っていることから、その導入可能性を検討していくべきとしていた。
・地域公共交通の維持・充実は、地域の暮らし全般を支える基礎的なニーズであると同時に、単にその利用者のみならず、県全体の社会・経済の基盤であり、産業や観光の振興にもつながるものである。
・それを踏まえて、滋賀県が現在進めている「滋賀交通ビジョン」の見直しと並行して、「地域公共交通を支えるための税制」の導入に向けて、県民とも議論を行い、新たな税制を設けることに具体的に挑戦するとともに、その議論のプロセス自体を通じて「より良き自治を追求」し、「変わる滋賀、続く幸せ」の実現につなげていくべきであると提言。
・この税制構築の取組は、様々な環境の変化に伴う地域公共交通の危機を転機とし、その維持・充実に戦略的に取り組むことを通して、県全体の発展につなげていくための取組であり、国の取組を待つことなく、また、個々の市町の区域にも限定されない、広域的な見地に立つ県として、導入へ向けた挑戦をすべきものである。
・また、「滋賀交通ビジョン」の見直しと並行して、税制導入へ向けた検討を一体的に行いながら、県と市町との協調のもとに住民参加を促しつつ、地域ごとのニーズを掘り起こしていくことも企図して、住民に納得感が得られる形を目指していくことが求められる。
・税収の使途については、将来の地域公共交通の姿をどのように描くのかについて、県民との合意形成を図ることが先決であって、課税方式についても、既存税目への超過課税を基本としながら、複数の税目を組み合わせていくことも選択肢としつつ、県民との議論を踏まえて考えていくべきである。
詳細は、上記滋賀県税制審議会のWebサイトをご覧下さい。



▲滋賀県を走る鉄道。
上から順に「京阪石山坂本線」「JR湖西線」「近江鉄道」。
この他、県内には近江バス、江若鉄道といった路線バス事業者も存在し、県内の地域公共交通を担っています。
我が国では、公共交通機関の維持に対する公的資金の投入が少ない方だとと言われています。
元より、我が国の公共交通機関は、それ単体、あるいは公共交通機関とその沿線開発等の関連事業で収益を生み出してきたという歴史的経緯(特に利用者の多い都市部)があること、そして国の組織として運営されてきた日本国有鉄道が多額の債務を抱えて破綻し、民営化されたこともあり、公共交通といいながら、そこに税金等を投入して運営することに、他の国に比べると非常に嫌悪感を抱いているように感じます。
一方で、あくまで「公共」交通であることをもって、不採算による減便、撤退等については逆に「公共性の責務を果たしていない」等として、これまた多くの批判を浴びせるというのも、我が国の特徴といえるでしょうか。
直近では、JR西日本が利用者の少ないローカル線について、より良い輸送サービスを地域とともに検討するためとして、その収支状況を開示したところ、多くの沿線知事や首長から「不採算による切り捨て」等と批判されたのは、記憶に新しいところです。
これは大手事業者に限らず、中小事業者についても似たような考えで、「公的資金の投入はまかりならない」しかし「不採算によるサービス低下もまかりならない」という、二律背反な意識を多くの人々が持っており、新規建設にしろ維持にしろ、こと公共交通の財源として税金を投入する、とういう話を展開しただけで、多くの国民・住民は「無駄な税金の投入」と批判を浴びせてきたのではないのでしょうか。
しかし、よくよく考えると、「公共」と名がつくわけで、それは沿線住民が誰しも一定の負担で利用できること、そしてその利用が促進されることによる商業、観光、暮らし等の地域の活力は上昇すること、そしてその効果は公共交通の沿線外にも波及することにもなるかと思います。
また、自動車との対比で言えば、公共交通を維持することで当該地域の道路建設の費用を抑制し、その他の緊急度の高い道路建設・維持への費用に充てることもできるため、公共交通への税金の投入が、即座にそれ以外の住民の利益にならない、とは全く言えないと考えられます。
以上のように、公共交通の維持を税金で行うのは、「公共」というその使命を有する輸送手段であることから、むしろ当然にも思えるのですが、上述のとおり我が国ではあまり多くない税金投入で高品質な公共交通が維持されてきたことから、そういった発想の転換がまったく無かったのかも知れません。
今回滋賀県では、「地域公共交通を支えるための税制」として、公共交通を維持するための財源としての税として、その検討を始めるよう、税制審議会が答申を行いました。
これを踏まえて、滋賀県ではその導入について具体的な議論を進めていくことになります。
「どのような用途に用いるのか」(使途)、「どのように徴収するのか」(課税方法)については今後県民との議論を深めて考えるべき、としています。
使途については、地域公共交通の変化として、既存の地域公共交通の利便性向上のと利組みは勿論、デジタルトランスフォーメーションやアフターコロナの状況によるニーズの変化を踏まえて、多様な交通手段の可能性が広がるような使い方を考えること、また、地域公共交通が既に充実している地域とそうでない地域とのいずれからも納得感が得られるような使途を模索する必要性があることを、審議会では指摘しています。
また、課税方法については、既存の税目に対して上乗せする「超過課税方式」を検討することとされ、その徴収方法については「固定資産税等の資産課税」「個人県民税と法人県民税・法人所得税」「自動車税等の車体課税」の3つを例示し、それぞれの税目において解決すべき課題も示されています。
個人的に気になるのはやはり、公共交通が手薄な地域に対するフォローで、既に人口が非常に少なく、公共交通が皆無の地域では、ここで徴収された税金が他の地域の公共交通の維持にしか使えず、かといってその波及効果も感じることが難しいことから、このままでは納得感が得られにくいとは思います。
ただ、そういった地域についても、既存の鉄道・バスのみならず、より小規模の公共交通を導入する財源としてこの税制を活用できれば、そのような地域でも賛成を得られる可能性はありますので、結局は滋賀県の交通ビジョンが、そこまでの姿を描くことができるかどうか、にかかるのではないでしょうか。
あと、車ばかり使って公共交通を使わない人にとっても、将来車を運転できなくなったときに公共交通が無いと生活が苦労すること、そして公共交通の維持そのものが地域にプラスの効果を生み出す(例:地価の維持)といった面も根気強く説明してくことも求められるのかも知れません。
ともあれ、20世紀は公共交通は言ってみれば「官から民」の時代でしたが、21世紀は「官と民」で維持していく必要があるのではないかと思います。
その財源としての交通税の導入は、個人的には賛成でありますので、上記の点を含めた意見に対して丁寧に対話していき、実際の導入に結びつければいいな、と感じたニュースでありました。
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