トラック・バスの商用車メーカーである日野自動車では、今年の3月4日、同社の車両用エンジンの排出ガス及び燃費に関する認証申請において、不正行為を確認し、当該エンジン機種と搭載車両の出荷停止を行いました。

エンジン認証に関する当社の不正行為について|日野自動車
この時点で判明した不正事項としては、以下のことが判明していました。
・中型トラック「レンジャー」に搭載されている中型エンジンの排出ガス性能におけおる耐久試験において、排出ガス後処理装置を試験途中に交換するという不正を行ったこと
・大型トラック「プロフィア」及び大型バス「セレガ」「ガーラ」(いすゞ自動車)に搭載されている大型エンジンにおいて、燃費測定の際実際よりも良い燃費を燃料計に表示させる不正を行ったこと


これらの車種(「レンジャー」「プロフィア」「セレガ」「ガーラ」については、判明以降出荷を停止し、併せて同年3月11日に外部の法律専門家及び技術知見のある外部有識者から構成する特別調査委員会を設置し、不正の全容解明及び再発防止策の提言を委嘱しました。
特別調査委員会の設置について|日野自動車


その特別調査委員会の調査結果が去る8月2日に同社へ提出があり、それに基づいた対応を実施する旨、日野自動車より発表がありました。

不正行為の全容としては、以下のとおりです。
【車両用エンジン】
排出ガス関連:
平成15年排出ガス規制(新短期規制/E6)以降の幅広い機種において、主に劣化耐久試験に関する不正行為が判明。

燃費関連:
重量車燃費基準が導入され税制優遇制度の対象となった平成17年排出ガス規制(新長期規制/E7)以降、主に大型エンジンにおいて燃費測定に関する不正行為が判明

【産業用ディーゼルエンジン】
排出ガス関連:
平成 23 年規制(3.5 次規制)以降の幅広い機種において、主に劣化耐久試験に関する不正行為が判明

【虚偽の報告】
2016 年に国土交通省から、認証取得時の排出ガス・燃費試験における不適切事案の有無を報告するよう求められた際に、虚偽の報告を実施


これらの不正を受け、同社では開発・認証領域における体制及びプロセスの改善や、企業風土・土壌の改善と全社的コンプライアンスの強化を行うこととしています。

一方、現行の機種については、排出ガス規制値超過の可能性のある機種、または(超過の可能性は無いものの)認証プロセスにおける不正行為が判明した現行機種及び搭載車種については、出荷を停止し、今後市場措置及び国土交通省の指示に従うこととしています。



上述のとおり、今年3月に中型トラック等に搭載しているエンジンの認証において不正行為が判明した日野自動車ですが、その後の特別調査委員会の調査により、その不正の範囲は広範に及ぶことが判明しました。


詳細は、下記特別調査委員会の調査結果概要等をご参照ください。
日野自動車株式会社 特別調査委員会 調査報告書の概要
調査報告書(要約版)|日野自動車株式会社 特別調査委員会
調査報告書(全文)|日野自動車株式会社 特別調査委員会


「広範に及ぶ」不正の範囲は、エンジン機種の広さ(大型・中型)に止まるだけでなく、2003年以降の排出ガス規制以降の歴代機種という、エンジン世代をまたがって及ぶという、非常に大規模なものでありました。

そのため、現在日野自動車では、下記同社Webサイトの画像で分かるとおり、同社の殆どの車種が出荷停止となっている状況です。
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▲日野自動車トラックのラインナップ画像。
大型トラック「プロフィア」、中型トラック「レンジャー」が出荷停止となっており、小型トラック「デュトロ」のみ出荷している状況です。

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▲日野自動車観光バスのラインナップ画像。
大型バス「セレガ」、中型バス「メルファ」、小型バス「リエッセ供廚料瓦討離薀ぅ鵐淵奪廚能于拂篁澆箸覆辰討い泙后

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▲日野自動車路線バスのラインナップ画像
小型バス「ポンチョ」の他、大型バス「ブルーリボン」の一部車種(ハイブリッド、連接)が出荷停止となっています。

画像はいずれも日野自動車Webサイト(https://www.hino.co.jp/products/)より引用。


調査報告書では、これら不正の発生した真因として、
・みんなでクルマをつくっていないこと
(縦割り組織、自由闊達な議論の欠如、能力・リソースの認識の差、等)
・世の中の変化に取り残されていること
(風通しの悪い組織、できないことや過去の過ちを認められない、開発プロセスに対する不十分なチェック機能、等)
・業務をマネジメントする仕組みが軽視されていたこと
(開発プロセスの以降可否の判定が曖昧、規定やマニュアル類の整備が不十分、役員と現場との適切な権限分配の欠如、等)

を挙げており、同社に対して目指すべきクルマづくりのあり方について議論を尽くすことや、品質保証部門の役割の明確化・機能強化等、そしてその有効性のたゆまないチェックを求めています。



上述のとおり、殆どの車種が出荷停止となっている現状、日野自動車としては経営的には苦しい状況となっていますが、苦しい状況は、こと日野自動車に限らず、同社に部品を納入する仕入れ先、そして同社からユーザーへ車両を販売する販売会社といった、非常に広い範囲の事業者に影響が及ぶことは、容易に理解できます。

また、ユーザーにとっても、日野自動車の殆どの車種で新規の発注ができないことから、車両の導入や置き換えといった、車両調達計画にも大きな影響が及ぶことが考えられます。

また、ことバスに関しては、日野自動車といすゞ自動車との合弁会社である「ジェイ・バス」で製造し、両社のブランドで販売していることから、いすゞの「ガーラ」(大型観光バス)、「エルガデュオ」(連接路線バス)等も新規の発注ができないことから、日野のみならず、いすゞとの繋がりがあるバス事業者にとっても、車両導入において非常に大きな問題となると考えられます。


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▲日野・大型観光バス「セレガ」(龍神自動車)

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▲日野・大型観光バス「セレガ」(大阪バス)

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▲日野・小型路線バス「ポンチョ」(南海バス)

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▲JR三江線(廃止済)口羽駅に停車中の邑南町(島根県)の町営バスに使用されている日野・小型路線バス(ポンチョ)
ポンチョはこのように、自治体のコミュニティバスとして投入されているケースも多くあります。


日野自動車といえば、国内でも歴史のある商用車メーカーとして、多くのユーザーの信頼を得てきました。
中型トラック「レンジャー」については、長年同クラスのトップシェアを誇る上に、海外にも多くの車両を展開しています。
また、レースとしても「ダカールラリー」に1991年から継続して参加しており、その過酷なレースで培われた耐久性が、同社のバス・トラックにも展開されているという、信頼性から日野自動車の車両を使い続けた事業者も、きっと多いことだと思います。
ヒストリー&レースレポート | ダカールラリー | 日野自動車株式会社


今回の不正は、「排出ガス」と「燃費」に関することであり、エンジンの出力や耐久性、安全性に関するものではありませんでした。そのため、これら認証プロセスに不正のあった車両についても、当面の間使用し続けることができるという点では、過去の他社で起こったリコール隠蔽とは、若干性格の違うもの、と考えられるかも知れません。

しかし、同社では他の分野でも同様の不正を行っているのではないか、というユーザーの不信感は決して拭えるものではありませんし、また認証制度という「自動車メーカーの対する信頼の上に成り立つ「性善説」の制度」(調査報告書要約版・P35)を「根幹から揺るがすもの」(同・P36)という、非常に大きな事態を引き起こしてしまった、という点では、真摯に反省するだけでは済まない問題なのではないか、と思います。


今後の対応は、市場に出回っている車両の対応及び、規制値に問題の車両の再出荷に向けた取り組みになりますが、それだけでなく、特別調査委員会の調査報告書の提言を真摯に受け、その内容を実現できる取り組みを、同社全体で取り組んでいただきたいところです。


ともあれバスファンとしては、日野・いすゞの新車が一時的に納入されないことから、車両の動きもイレギュラーになることも考えられるので、そういった情報も今後バスファンを中心として発信されるのかな、とも思いますので、引き続き注目しておきたいな、と思っています。




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