天草エアライン(熊本県天草市、AMX)、オリエンタルエアブリッジ(長崎県大村市、ORC)、日本エアコミューター(鹿児島県霧島市、JAC)、全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL)の5社では、本邦航空会社としては初となる、大手系列を越えたコードシェア(共同運航)を開始することを発表しました。

地域航空サービスアライアンス有限責任事業組合(EAS LLP)本邦初 メンバー5社による系列を超えたコードシェア(共同運航)を開始します|プレスリリース|ANAグループ企業情報
地域航空サービスアライアンス有限責任事業組合(EAS LLP) 本邦初 メンバー5社による系列を超えたコードシェア(共同運航)を開始します|プレスリリース|JAL企業サイト

概要は以下のとおりです。

【コードシェア概要】
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(上記発表資料(https://www.anahd.co.jp/group/pr/202208/20220823-2.html)より引用)

<既存のコードシェア>
ANA→ORCと実施中
JAL→AMXと実施中。またJACは共同引受によりJAL便名で運行中

<新規のコードシェア>
ANA→AMX、JACで実施
JAL→ORCで実施

<開始後の姿>
ORC、AMX、JACの対象路線を、ANA、JAL便名で搭乗可能

【コードシェアのネットワーク図】
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(上記発表資料(https://www.anahd.co.jp/group/pr/202208/20220823-2.html)より引用)

【コードシェア開始日】
2022年10月30日(日)


詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



このブログでは、鉄道に限らず様々な公共交通機関のニュースを提供していて、今回の各社の取り組みもその中の一つとしてご紹介するわけですが、特に鉄道ファンにとっては「?」な内容かも知れないので、背景を簡単にご紹介しておきます。

まず、タイトルに出てくる「コードシェア」ですが、下記ANAのWebサイトにあるとおり、2社以上の航空会社によって共同運航している便を指します。
コードシェア便とは(共同運航便) | ご予約/旅の計画 | 国際線航空券予約・空席照会 | ANA

もう少し具体的に、そして例えて言えば、「ANAの便に、ANAの便名とユナイテッド航空(アメリカ)の便名が付いている」ケースなどが考えられます。
この場合、実際に飛ぶ飛行機、そして機内でサービスを提供するのはANAですが、この飛行機のきっぷはANAのみならずユナイテッド航空でも販売される、というものであります。

なぜそんなことを行うのか、というと、簡単に言えば「販路の拡大」が目的といえるでしょう。
上記の場合、アメリカから羽田・成田経由で日本国内に向かう利用者が、ユナイテッド航空のサイトで日本国内の路線もまとめて予約が可能となるため、ANA側としてはアメリカ国内での販売拡大が期待、そしてユナイテッド航空にしても日本国内線の売り上げを計上できるため、両社にとってメリットがある、そういう仕組みと理解できるでしょう。

このコードシェア、国際的には航空連合(アライアンス)内の各社相互間で実施される等、かなり広まっている一方、日本国内はどうかといえば、
・ANAとのコードシェア:
AIR DO、IBEXエアラインズ、オリエンタルホテル、ソラシドエア、スターフライヤー)
・JALとのコードシェア:
フジドリームエアラインズ、天草エアライン
(※)その他、JALとジェットスター・ジャパンとで、JAL国際線利用者対象のコードシェアを実施
という状況で、ANA・JALの系列を越えたコードシェアは実施されていませんでした。


一方、長崎、熊本、鹿児島の離島を結ぶ路線は、これら離島の生活には欠かせない路線でありますが、一方で利用者が限られることからその運営は従前より苦しく、その航空路線維持が課題となっていました。
そこで、離島路線を運行する3社(AMX、ORC、JAC)と大手航空会社2社(ANA、JAL)の計5社で「地域航空サービスアライアンス 有限責任事業組合」(EAS LLP)を2019年10月に設立し、これら離島やそれに準ずる地域の生活に重要な役割を果たす路線を持続可能とするための取り組みを行っています。

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▲EAS LLPの構成イメージ
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▲EAS LLPで取り組む施策のイメージ
(いずれも、上記発表資料(https://www.anahd.co.jp/group/pr/202208/20220823-2.html)より引用)


今回、このEAS LLPの取り組みの最大の目玉ともいえる、「ANA・JALの系列を超えたコードシェア」が実施されることとなりますが、これにより、長崎・熊本・鹿児島の離島路線については、ANA、JALどちらの便名でも予約が可能、ということになります。

日本の民間航空会社の歴史が始まって以降、様々な航空会社が設立され、そして再編されてきましたが、その中で「大手」と称されるANA・JALは、常に国内民間航空の「双頭」として君臨してきました。
これら両社は国内線・国際線ともに互いを競争相手として認識し、ともに顧客から自社が選ばれることを目指して、就航地、機材、サービス等々の面で切磋琢磨してきたといえます。
そういう点では、サービス提供の面で両社が提携し、同じ航空機に両社の便名が付けられる、ということはまずあり得ない話であったかと思います。


しかし、離島路線の維持の取り組みのなかで、この「あり得ない」と考えられていた大手2社によるコードシェアが実現するわけですから、少し航空業界を知っている方にとっては、このニュースがどれだけ衝撃か、というのはご理解いただけるかと思います。


そして、期待したいのは、ANA、JAL各社で行っているマイレージサービスでの、これらの離島路線コードシェア便の特典航空券の利用でしょうか。
今回のコードシェアにより、これまではANAマイレージクラブ会員では、特典航空券で利用できなかった天草、種子屋久、奄美の離島への便が、この10月末からは可能となることが期待されますので、これも楽しみにしたいと思います。

マイレージ会員にとっても嬉しい今回の共同運航実施。
これにより、離島航空会社各社の経営が安定化し、生活路線の維持に寄与できると本当に喜ばしいことだな、と感じたニュースでありました。




【関連ニュースサイト】
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