JR四国では、2023年春の改訂予定で、普通及び定期旅客運賃及び一部料金の改訂を実施するべく、国土交通大臣へ変更認可申請を行ったことを発表しました。

運賃改定の申請について|JR四国

概要は以下のとおりです。

【背景・目的】
・2021年度決算は、営業損益で202億円の赤字、経営安定基金運用を充ててもなお33億円もの経常赤字と極めて厳しい経営状況。
・今後についても、人口減少等による鉄道運輸収入の漸減に加え、オンライン会議やテレワーク等の新しい生活様式の定着による不可逆的な減少を見込まざるを得ない。
・一方、列車運行の安全・安定輸送の確保のために必要な安全対策や運転保安に直結する設備の老朽取替え等の安全投資や修繕費の確保は必須である状況。
・グループ一体となり増収努力及び経費節減等に取り組むとともに、国からの支援措置を活用した利便性向上施策及び省力化・省人化施策や、地域と一体となった利用促進・利便性向上に引き続き取り組むほか、MaaS の考え方のもと公共交通ネットワークの四国モデルを追求していく。
・今後とも地域の基幹的公共輸送機関としての役割を果たしていくため、徹底した経営努力を前提として、国、地域からの支援とともに、利用者にも一部のご負担をお願いするべく運賃改定を計画した。

【改定概要】
運賃改定予定日:2023年春
・増収規模:年間20億円程度を計画
改定率 :運賃・料金全体で約13%
※初乗運賃(現行)170円→改定190円
※1996年以来、27年ぶりの改定

【運賃改定概要】
<普通旅客運賃>
平均で12.51%の改定

<定期旅客運賃>
・普通運賃の改定に基づき改定。
・割引率を見直し
 通勤定期 :
 1箇月(現行平均)52.9%→(改定後平均)48.0%
 6箇月(現行平均)58.8%→(改定後平均)53.2%
 通学定期(大学生用):
 1箇月(現行平均)74.7%→(改定後平均)73.2%
 通学定期(高校生用):
 1箇月(現行平均)76.9%→(改定後平均)76.2%
 通学定期(中学生用):
 1箇月(現行平均)81.6%→(改定後平均)80.8%
・全体の改定率 ⇒ 通勤定期:平均28.14%、通学定期:平均22.43%

【その他】
特定特急料金の見直し及び廃止
・25キロまでの自由席特定特急料金を、330円から450円に見直し
・25キロまでの指定席特定特急料金を、1,070円から1,290円に見直し(A特急料金と統合)
・50キロまでの自由席特定特急料金を、530円から760円に見直し(A特急料金と統合)


詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



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▲多度津駅に停車中の2700系(左)と7000系(右)。
今回、運賃に加え、50kmまでの特急料金も値上げとなります。


JR四国では、発足直後から2000系をはじめとした特急車両の投入による特急列車の高速化や、予讃線を中心都市とした電化等、四国における基幹的公共交通機関として、様々な取り組みを行ってきました。

一方、JR四国を取り巻く環境としては、全国に先駆けた少子高齢化や人口減少、そして高規格道路網の整備、そして民営化当初には損失の補填として機能するはずであった「経営安定基金」の運用益減少により、厳しい経営状況が続いてきました。

それに対し、JR四国では、1996年1月に運賃改定を実施して以降、消費税率の引き上げを除き運賃改定を行ってきていませんでしたが、今後の展望としては引き続き人口減少が継続する一方、テレワーク等の「新しい生活様式」の普及による鉄道利用者の減少が加わることで、更に厳しい経営状況が予想されます。

そのため、同社でも様々な経費節減及び利用者確保の取り組みを進めるものの、安全・安定輸送を確保するためには、現在の運賃水準では中長期的な鉄道事業の継続は困難であるとして、今回運賃値上げの申請を行った、としています。


運賃値上げの内容は、全体で約13%となっていますが、一部距離帯では値上げ幅はこれ以上になっているところもあります。
一方で、同社の資料には、「他交通機関との運賃比較」もあり、この比較によると値上げ後の運賃であって他の交通機関と比較して決して高くない水準(JR四国が大幅に迂回する高松〜琴平間等を除く)であることから、利用者にも理解していただけるような運賃設定としていることが分かります。

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▲値上げ後のJR四国と、他交通機関との運賃比較
(上記発表資料(https://www.jr-shikoku.co.jp/03_news/press/2022%2008%2026%2006.pdf)より引用)


一方、今回の発表では、運賃だけでなく短距離(50kmまで)の特急料金についても見直しを行うこととしています。
具体的には、「特定特急料金」として、JR他社よりも割安に設定されていた料金について、25kmまでの自由席は330円から450円に見直し、また25kmまでの指定席及び50kmまでの自由席については、特定特急料金そのものを廃止して、JR他社と同水準(「B特急料金」)に見直すこととしています。

とはいえ、JR四国エリアでは、51km以上に関しては、この「B特急料金」よりも割高な「A特急料金」となっていることを考えると、利用者の逸脱を防ぐべく、値上げ幅を考慮した、とも考えられるでしょう。


一方、今回の値上げの理由として、今後の中長期的な取り組みによる事業継続が挙げられていますが、その利用者サービス向上策も示されており、その中で、特に鉄道ファンにとっての注目は、「新型ローカル気動車の開発・導入」や「特急電車リニューアル」でしょうか。
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▲主な利用者サービス向上策
(上記発表資料(https://www.jr-shikoku.co.jp/03_news/press/2022%2008%2026%2006.pdf)より引用、赤枠は管理人による)

特に「新型ローカル気動車の開発・導入」については、現在JR四国では最も古い気動車となっているキハ47形等の置き換えが示されています。
一方で、新たに導入されるローカル気動車については、その車両がどのようなものになるのか気になるところです。
この点、JR四国では2025年度以降、電気式気動車を50両から80両程度導入する計画を、昨年11月に「意見招請に関する公示」で発表しています。
意見招請に関する公示|JR四国

【お礼】
この公示は、下記「鉄道プレス」さんの過去記事から情報を仕入れることができました。
この場を借りてお礼を申し上げます。
ありがとうございました。


このため、上述の「新型ローカル気動車」は「電気式」となる可能性が高いのですが、一方どのようなデザインとなるのか、また形式はどのようなものになるのか、といった点は、今後ファンに取っても注目の内容でありましょう。



ともあれ、人口減少や高規格道路、そしてコロナ後の行動変容で、JR四国に限らず利用者が今後も減少し続けることは避けようがありません。
一方で、基幹的な公共交通機関としての鉄道の維持が必要であるのであれば、それ相応の費用負担が増えることは、利用者としても理解していく必要があるかと思いますので、今回の値上げについても、これまでも行ってきたJR四国の経営努力をより応援するとともに、少しでも利用者の減少を食い止め、収支の改善を図ることができればいいな、と感じたニュースでありました。




【関連ニュースサイト】


JR四国、翌23年春から運賃値上げへ 初乗り170→190円 一部の特急料金も | 乗りものニュース

JR四国、運賃改定を申請「対キロ区間制運賃」導入 - 2023年春から | マイナビニュース

JR四国、2023年春に運賃改定。初乗り大人170円から190円に値上げ、定期割引率も見直しへ - トラベル Watch



【関連ブログ】
JR四国値上げへ - 続・吾輩はヲタである

JR四国、2023年春値上げ: たべちゃんの旅行記「旅のメモ」



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