JR西日本では、コロナ禍の厳しい経営状況の長期化、またデジタル化の進展等の社会変容を踏まえ、在来線特急料金の一部見直し(値上げ)を実施することを発表しました。

在来線特急料金の一部見直しについて:JR西日本

概要は以下のとおりです。

【在来線特急料金の一部見直し】
B特急料金をA特急料金に統一
(指定席特急料金[通常期]での比較)
50kmまで・・・現行:1,190円→改定1,290円(+100円)
100kmまで・・・現行:1,520円→改定1,730円(+210円)
150kmまで・・・現行:1,950円→改定2,390円(+440円)
200kmまで・・・現行:2,290円→改定2,730円(+440円)
300kmまで・・・現行:2,510円→改定2,950円(+440円)
400kmまで・・・現行:2,730円→改定3,170円(+440円)
401km以上・・・現行:3,060円→改定3,490円(+440円)

[参考:B特急料金の適用範囲]
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※上記のうち、「JR西日本エリア」が対象。
(JR西日本Webサイト(https://www.jr-odekake.net/railroad/ticket/guide/express_tickets/limited_express06.html)より引用)

・おトクな特急料金(特定特急料金)の見直し
津幡〜和倉温泉間(51km以上の区間):
指定席特急料金[通常期]・・・現行1,190円→改定1,290円
自由席特急料金・・・660円→760円

鳥取〜出雲市、米子〜益田間の自由席特急料金:
101〜150kmの区間・・・現行1,320円→改定1,560円
159km以上の区間・・・現行1,320円→改定1,800円

岡山〜児島間または同区間とJR四国内にまたがる場合の50kmまでの自由席特急料金(*):
現行560円→改定760円

博多〜博多南間:
100円→130円

(※)特急用定期券「パスカル」の特急料金相当額も見直し。
但し博多〜博多南間で通学定期を利用の場合の定期券用特急料金は据え置き

【新幹線と在来線特急列車との「乗継割引」の一部見直し】
山陽新幹線の岡山〜新下関間の新幹線停車駅で、新幹線と在来線特急列車とを乗り継ぐ場合に適用となる「乗継割引」を廃止

【見直し時期(予定)】
・在来線特急料金:2023年4月1日(土)(上記(*)はJR四国運賃改定実施日)購入分から)
・乗継割引:2023年4月1日(土)乗車分から


(関連)
乗継割引の廃止及びJR西日本に跨る場合のおトクな特急料金の廃止について|JR四国
・JR四国内を運行する在来線特急列車と新幹線を、乗継駅において直接乗継ぐ場合(同時に購入の場合に限る。)に適用していた乗継割引を廃止。
【乗継駅】岡山、高松、坂出(高松及び坂出は岡山で新幹線と乗り継ぐ場合に限る。)

・JR四国内を運行する在来線特急列車と寝台特急サンライズ瀬戸を乗継駅において直接乗継ぐ場
合(同時に購入の場合に限る。)に適用していた乗継割引を廃止。
【乗継駅】高松、坂出



詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



JR西日本では厳しい経営状況、そしてコロナ禍後の社会変容を踏まえて、運賃・料金の見直し(値上げ)を行うこととしています。
これまでも下記記事でご紹介したような内容の見直しを、来年4月1日購入分より実施予定として、既に発表しています。
阪和線の沿線から : 【JR西日本】京阪神エリアの特定区間運賃を一部見直し。天王寺〜和歌山間は870円→890円へ
阪和線の沿線から : 【JR西日本】山陽新幹線「のぞみ」「みずほ」指定席特急料金の値上げを実施(2023.4.1購入分〜)

また、「鉄道駅バリアフリー料金制度」を活用するべく、電車特定区間において大人普通運賃で10円の値上げを実施することも発表しています。
阪和線の沿線から : 【JR西日本】鉄道駅バリアフリー料金制度による値上げを実施(2023.4.1)2025年度からは料金収受エリア拡大を予定

そして今回、在来線の特急料金の一部についても値上げを実施することとし、上記と合わせて、都合4種類の値上げを来年4月1日付けで実施することとなります。


これらの値上げについては、コロナ禍後の利用者回復が望めないのと、バリアフリー整備のための料金徴収ということで、いずれもJR西日本を取り巻く環境が厳しいことから、やむを得ずの実施、と個人的には理解しています。

勿論、値上げそのものは利用者の財布を直撃するわけですから、利用者の反発がでてくることは、同社としても想定内ではありましょうが、もはやそういった利用者の意見だけで運賃・料金を維持することが難しくなってきている、というのは値上げを批判する際でも理解はしておきたいところでしょう。


とはいえ、今回の値上げは、「B特急料金」「乗継割引」の廃止と、かなり大ナタを振ってきた印象があります。

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▲B特急料金エリアの一つである「阪和線」を運行する特急「くろしお」287系。

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▲同じくB特急料金エリア内である「きのくに線白浜駅」に停車中の特急「くろしお」283系。

B特急料金は、国鉄時代に多数の急行列車を特急列車へ格上げした際、大幅な値上げを緩和するべく、これまでの特急料金(「A特急料金」に相当するもの)よりも割安な料金として設定されたものでありました。
上述の「くろしお」が運行する阪和線・紀勢本線では、かつては急行「きのくに」も運行されていました。


一方、「乗継割引」は、新幹線開業による在来線直通列車の廃止・整理により、これまで乗り換えなしで利用できた特急・急行列車で、新幹線との乗り換えが発生することにより、利用者の料金負担が大幅に上昇するのを緩和する制度として設定されました。
制度概要としては、在来線特急・急行列車と新幹線を乗り継ぐ場合、在来線の特急・急行料金、指定席料金が半額になる、というものであります。
(参考)
新幹線と在来線の乗継割引│きっぷのルール:JRおでかけネット

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▲岡山駅で発車を待つ特急「南風」2700系。
ここ岡山駅で山陽新幹線とこの特急「南風」の特急券を同時に購入する場合、特急「南婦」の特急料金が半額になるのが「乗継割引」になります。


しかし今回のJR西日本とJR四国の発表では、JR西日本管内の「B特急料金」、そして岡山以西の「乗継割引」をいずれも廃止にする、というもので、驚いた方も多くおられたかと思います。

これらの値上げにより、例えば岡山乗換で四国方面へ特急列車利用の場合、乗継割引の廃止により1,000円以上の値上げ(例:山陽新幹線からの乗継割引適用の岡山駅〜宇和島間・・・1,580円→3,170円)となる区間も発生し、確かに利用者にとっては痛手、といえるでしょう。


一方、乗継割引については、1駅でも新幹線の区間を含んでいれば適用されることから、1駅間等で割安な料金が設定されている新幹線の自由席特急券と組み合わせて、在来線特急料金を安く済ませるという制度の趣旨にもとる利用方法もあるため、適切な料金体系への整理、という意味もあるのではないか、とも考えられます。


加えて、上記JR西日本発表資料では、「JR西日本ネット予約「e5489」では便利でおトクな商品もご用意しています。詳細は決まり次第お知らせいたします。」(上記発表資料より引用)と敢えて記しているところから、料金体系の整理で窓口・みどりの券売機等からネット予約へのシフトを図ろうとする意図も見えなくはないのかな、とも思ったりします。
(もっともこれは、ネット予約での価格設定如何とは思いますが…)


ともあれ、JR西日本やJR四国の苦しい事情が分かるだけに、かなり痛い値上げではありますが、単純に反対できるものではない、とも思うだけに、今後はネット予約等でおトクな商品を見つけて活用していきたいと思いますし、そういったおトクなきっぷの情報も積極的に当ブログでご紹介していきたいと思います。




【関連ブログ】
【JR西日本】「B特急料金廃止」など特急料金を値上げへ - 鉄道プレス



【関連ニュースサイト】


JR西日本、在来線特急料金をA特急料金に統一 - 乗継割引は一部廃止 | マイナビニュース

JR西日本、博多南線の特急料金を値上げ - 改定後は130円、4/1から | マイナビニュース

消えゆく乗継割引制度、本来は利用者向けの高額料金救済制度だった | マイナビニュース



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