西九州新幹線の開業が間近となる中、本日大村車両基地で新幹線車両「かもめ」4編成が並んだ姿が、報道向けに公開されました。

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運行開始後は、このように4編成揃う姿は見られませんので、これも開業までの間の限られた姿という貴重なものになりそうです。


ところでこの西九州新幹線関係の乗車券ですが、先の記事でご紹介したように「長崎本線・現川経由と同一線として扱う」「浦上〜長崎間は分岐駅通過特例が適用される」ことが既に示されています。
阪和線の沿線から : 【西九州新幹線】長崎本線(在来線)とのきっぷのルールについてまとめてみました。現川経由と新幹線は同一線に、浦上〜長崎間は分岐駅通過特例が適用になります(2022.9.23〜)

これらの規定を頭に入れた上で、今回「新鳥栖→道ノ尾」(長崎本線・佐世保線・西九州新幹線・長崎・浦上)の乗車券を購入してみることにしました。
なお、長崎駅での途中下車は行わないこととします。

そして出てきたきっぷはこちらになります。
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▲新鳥栖→道ノ尾の乗車券

「経由」欄をみてみますと、「長崎線・佐世保線・武雄温泉・新幹線・諫早・長崎線」となっていますが、この経由欄と上記の購入しようとした経路を見比べると、違和感はないでしょうか。

そう、乗車券は「諫早で長崎本線に乗り換えてしまっている」のです。

「これでは長崎どころか浦上にも行けないのではないか?」と思われるかも知れません。
しかし、このきっぷ、「長崎・西浦上で途中下車しなければ長崎経由で道ノ尾まで行ける」ことになりそうです。

ではなぜ行けるのか、について少し触れてみたいと思います。

【参考】
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▲新鳥栖〜道ノ尾の路線図
(交通新聞社「デジタル時刻表Lite」より引用、確認日:2022年9月11日、赤枠・青枠は管理人による)




既に先の記事でご紹介したように、西九州新幹線から長崎本線・長与経由(東園〜西浦上)へ向かう場合、長崎駅で途中下車しなければ、長崎駅で乗り換えてもはみ出した区間(浦上〜長崎)は含めずに計算することが可能です。

では、上述のきっぷの経路は、「長崎線・佐世保線・武雄温泉・新幹線・浦上・長崎線」になるのではないか、と思われます。
しかし、実際「みどりの券売機」でこの乗車券を購入しようとすると、以下のような画面を遷移していきます。

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▲新鳥栖→道ノ尾で、経路を選択した後の画面。
浦上で長与経由に乗り換える計算となっています。


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▲長崎駅で途中下車するか否かの確認画面に映ります。
今回は「途中下車しない」を選択します。


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▲次に移る画面の「ご案内」に注目してみてください。
「長崎駅を含む折返し区間では、途中下車できません。」
「西浦上駅から道ノ尾駅間は、途中下車できません。」
一つ目の注意事項は、先の「分岐駅通過特例」に関する内容と考えられますが、注目は、二つ目の注意事項です。
「西浦上から」も途中下車できないのは何故か。


その謎を解く規程が「選択乗車」であります。
選択乗車というのは、乗車券に表示されている経路にかかわらず、予め定められた経路のどちらか一方を選択して乗車することができる制度です。

以下に、JR九州の「旅客営業規則」から該当する条文を引用してみます。
(選択乗車)
第157条 旅客は、次の各号に掲げる各駅相互間(略図中の====線区間以遠の駅と━━線区間以遠の駅若しくは◎印駅相互間)を、普通乗車券又は普通回数乗車券(いずれも併用となるものを含む。)によつて旅行する場合は、その所持する乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、各号の末尾に記載した同一かつこ内の区間又は経路のいずれか一方を選択して乗車することができる。ただし、2枚以上の普通乗車券又は普通回数乗車券を併用して使用する場合は、他方の経路の乗車中においては途中下車をすることができない。

JR九州旅客営業規則(https://www.jrkyushu.co.jp/railway/ticket/rule/transport/より引用、下線太字は管理人による。)


この「選択乗車」、現時点で合計57件設けられいますが、その中で、今回の乗車券に関する規程がありました。

(56) 喜々津以遠(西諌早方面)の各駅と、長与・西浦上間各駅との相互間(現川経由、本川内経由)。この場合、乗車券の券面に表示された経路以外の長与・西浦上間内では、途中下車の取扱いをしない
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▲JR九州旅客営業規則(https://www.jrkyushu.co.jp/railway/ticket/rule/transport/より引用、下線太字は管理人による。)


つまり、「諫早〜喜々津〜長与〜道ノ尾」でも「諫早〜現川〜浦上〜道ノ尾」のいずれの経路の乗車券であっても、もう一方のルートを採ることができるわけです。
ただ、「もう一方のルート」を採る場合、長与〜西浦上間では、券面の経路外の各駅では途中下車できないこととなっています。

今回のケースに当てはめると、
・長崎駅で途中下車しなければ、「諫早〜現川〜浦上〜道ノ尾」の乗車券で利用可能(分岐駅通過特例)
・西浦上で途中下車しなければ、「諫早〜長与〜道ノ尾」の乗車券で利用可能(選択乗車)

の二つの規程により、上述の乗車券が発券されるに至った次第です。



「選択乗車」ということを初めて聞いた方もおられるかも知れません。
しかし、阪和線沿線の方にとっては、知らず知らずのうちにこちらの選択乗車を使っている場合が考えられます。

(29) 大阪以遠(天満又は福島方面)の各駅と、西明石以遠(大久保方面)の各駅との相互間(東海道本線及び山陽本線経由、新幹線経由)。この場合、乗車券の券面に表示された経路以外の区間内では途中下車の取扱いをしない。
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▲JR九州旅客営業規則(https://www.jrkyushu.co.jp/railway/ticket/rule/transport/より引用)


例えば、「くろしお」「はるか」を利用して新大阪駅から山陽新幹線に乗り換える場合、通常ですと「西九条→大阪(通過扱い)→新大阪→新神戸→西明石→山陽新幹線」という経路の乗車券が必要ですが、この「選択乗車」が設けられているため、「西九条→大阪→神戸→西明石→山陽新幹線」の、短い方の経路の乗車券で利用することが可能となっています。

但し、この場合、経路に入っていない区間(上述の場合は新大阪・新神戸)では途中下車できないこととなるのに留意が必要です。

かつて、この経路で乗車券を購入した際、窓口の社員さんが「新大阪で途中下車されますか?」と敢えて確認されていましたが、それはこの「選択乗車」のどちらの経路(新神戸経由または神戸経由)で発券するかを確かめるものであったかと思われます。



以上、先のブログ記事でご紹介した西九州新幹線に関するきっぷのルールを確認するために、実際に発券して、またその際の「みどりの券売機」の画面についても確認してみました。

この「選択乗車」、JTBやJRの時刻表には一切記載がないので、ご存じない方も多いかと思われますが、JR各社の旅客営業規則にはきっちり記載されています。
またこの選択乗車は、国鉄時代から引き継がれてきた制度でもあるので、過去には様々なバリエーションもあったようですが、かなり整理されたとはいえ、今でも60近くの設定があります。

興味ある方は今回ご紹介した「旅客営業規則」を元に、色々調べてみるのも面白いかも知れませんね。




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