石川県の金沢市を中心とした「石川中央都市圏」において、同圏域内でスムーズに移動できる交通サービスの実現や、広域的な公共交通網の構築に向けて、「石川中央都市圏地域公共交通計画」の策定に着手しています。

その地域公共交通計画の策定に向けた協議会の内容が、金沢市のWebサイトで公開されています。
石川中央都市圏における広域的な地域公共交通計画の策定について/金沢市公式ホームページ いいね金沢

この地域公共交通計画の中で、大きな課題となっているのが北陸鉄道線(石川線・浅野川線)の持続可能性の確保であります。
この両線を運営する北陸鉄道では、持続可能な運営の観点から設備面の維持管理を「公」が担い、北陸鉄道がサービス向上に専念する「上下分離方式」による運営を提案しており、また、この上下分離に関しても浅野川線・石川線両線一体での運営を提案してきています。

去る11月7日、この協議会が開催され、会議の席上、北陸鉄道から各路線の現状について報告がありました。
この中で、特に石川線(野町〜鶴来(つるぎ))について老朽化による車両更新が必要なこと、また道法寺変電所が故障していることが報告されました。
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(上記金沢市Webサイト内資料(https://www4.city.kanazawa.lg.jp/material/files/group/8/dai3kai_tiikikoukyoukoutsuukyougikai_hokulikutetudou.pdf)より引用)


まず車両について、既存車両(7000系・7700系)については、製造後60年近くが経過しており、老朽化が激しいのに加え、交換部品が無い状況となっています。
一方、これらの車両を置き換えるには、新西金沢駅付近の旧教線に対応可能な中古車両が存在しないことから、車両置き換えとなれば新造車両を投入する必要があり、2025年度の車両更新のためには、来年度(2023年度)に発注する必要がある、としています。

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▲今はなき「加賀一の宮」駅に停車中の北陸鉄道石川線7000系。
元は東急7000系を譲受した車両で、ステンレス車体であるものの、経年60年となり、老朽化やメンテナンスが難しい状況となっています。


また、変電所に関しても、石川線に4箇所ある変電所のうち、「道法寺変電所」が故障しており、冬場の電力消費状況によって運行に影響を及ぼす可能性があるものの、こちらも老朽化による交換部品の欠如から、修理方法を検討している状況です。
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(上記金沢市Webサイト内資料(https://www4.city.kanazawa.lg.jp/material/files/group/8/dai3kai_tiikikoukyoukoutsuukyougikai_hokulikutetudou.pdf)より引用)


いっぽうで、石川線については輸送人員が減少していることから、バス転換、BRT化などの選択肢も協議会では検討しており、そのための需要調査の速報についても、この協議会で報告がありました。
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(上記金沢市Webサイト内資料(https://www4.city.kanazawa.lg.jp/material/files/group/8/dai3kai-tiikikoukyoukoutsuukyougikai_siryou1.pdf)より引用)

この調査では、鉄道の現状維持とBRT化を比較していますが、BRT化とした場合では維持管理費は鉄道より抑えられる一方、所要時間が増加することが予想されます。
またそれだけでなく、
・全国的なバス運転手不足による他の路線バス減便が必要
・BRT化工事のため工事期間中(1年〜2年)、路線バスによる代替輸送となり、自家用車への逸走が考えられる
・石川線をBRT化した場合、浅野川線へ車両工場の機能を移転する必要があり、浅野川線の収支に影響を及ぼす

といった問題も生じることから、BRT化が望ましいとも考えにくい状況となっているのも確かです。


そして、これらの結果を基に石川線の車両更新の期限である2023年度中に石川線の今後のあり方を決定する必要があります。


この石川線、輸送密度はコロナ禍前で2,000人/km・日を切っている一方、朝ラッシュ時には一定の利用者があることから、鉄道からバスに単純に置き換えれば済む、という状況でも無さそうなのが、この問題を難しくしていることもあり得るでしょう。
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▲石川線・浅野川線の輸送密度等
https://www4.city.kanazawa.lg.jp/material/files/group/8/dai1kai_tiikikoukyoukoutsuukyougikai_siryou23.pdfより引用)


このような状況を考えると、単純なBRT化・バス転換は難しいと考えられますが、では上下分離や車両置き換えのために沿線自治体が簡単に費用を拠出できるのか、という問題もあります。
いずれにせよ、時間的余裕があまりない状況でありあすので、今後の動向にも注目しておく必要があるのではないか、とも思います。

また、石川線が存続・廃止どちらになるにせよ、現在同線で活躍している7000系・7700系は2025年度に置き換えのスケジュールが表明されています。
東急7000系は同社での廃車後、この北陸鉄道のほか、弘南鉄道(青森県)、福島交通(福島県)、水間鉄道(大阪府)、秩父鉄道(埼玉県)に譲渡されたようですが、このうち秩父鉄道及び福島交通では譲渡車全車が廃車となりました。
一方、残り3社では引き続き活躍していますが、既に老朽化が久しいことから、この北陸鉄道だけでなく、他の2社でも車両置き換え等の動きが出てくるかも知れませんので、こちらも引き続き注意して動向を見ておきたい、ニュースでありました。

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▲北陸鉄道石川線 野町駅
多くの利用者は、この野町駅とJR北陸本線との乗換駅である新西金沢駅で乗り降りしている状況です。
金沢市中心部へは乗換が必要となることから、BRT化による利便性向上も考えられますが、一方で運休期間が必要なこと、運転手不足を悪化させるといった課題もあります。




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