JR北海道では、輸送密度200人以上2,000人未満の8線区(黄線区)において、事業の抜本的な改善方策の検討を行うにあたり、有効な改善方策を調査・検証するための事業を実施することを発表しました。

【社長会見】輸送密度200人以上2,000人未満の線区(⻩線区)における調査・実証事業について|JR北海道

概要は以下のとおりです。

<事業概要(主なもの)>
【鉄道・バス共通時刻表】
・鉄道とバスの運行時刻が一目で確認できる時刻表を各線区で制作

【観光利用の拡大】
・「くしろ湿原ノロッコ号」の臨時運行
(10月運行予定)
「地球探索花咲線」で車両を増結し、景色の良い海側に指定席を導入した列車を運行
(8月実施予定)
「フラノラベンダーエクスプレス」延長運転
(快速列車として富良野〜旭川間を延長運転、7月の土・日・祝日運行予定)
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(上記発表資料(https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20230517_KO_demonstration_project.pdf)より引用)


【公共交通全体の利用拡大に向けたバスとの連携】
・都市間(札幌〜北見・網走)の利便性向上
(札幌まで片道JR、片道バスでも利用しやすくなる取組、7〜8月予定)
・高校・病院直通バスの実証運行
(花咲線・落石〜根室間、2024年3月まで運行予定)
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(上記発表資料(https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20230517_KO_demonstration_project.pdf)より引用)


詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



JR北海道の「同社が単独で維持困難な線区」のうち、輸送密度200人〜2,000人の線区は、路線図で示された色が黄色であったことから、「黄線区」と総称されています。

輸送密度が200人未満の「赤線区」(呼称の由来は同様)の方向性が定まったいま、今後はこれら黄線区の取り扱いが焦点となります。

これら黄線区は、先の赤線区とは異なり、都市間輸送を担う特急列車も運行されており、先の赤線区よりも地域における重要度は高いと考えられます。
一方で、これらの線区と併走する高規格道路の開通もあり、利用者が自家用車へ流れていることから輸送密度でみれば鉄道としての特性が発揮しづらい現状があります。

観光や用務利用などでも重要な位置を占める一方、これまでの利用促進の取り組みでも思うような効果が出ない中、事業の抜本的な改善方策を検討するにあたり、今回様々な実証事業が実施されることとなりました。


概要は上記のとおりですが、ファン的に面白いと感じたのは、「花咲線への指定席導入」「フラノラベンダーエクスプレス」の旭川延長でしょうか。

まず「花咲線」の指定席導入ですが、この花咲線(根室線・釧路〜根室)は、道東の更に東部の主要都市を結ぶ線区、また太平洋を望む景色が良い路線、そして何より道東最果ての街・根室へ向かう路線として、観光の需要は高いものと考えられます。
私自身も2016年7月にこの花咲線・釧路〜根室間に乗車し、その風景や、最果ての街へ向かう雰囲気を存分に味わうことができました。
阪和線の沿線から : 根室本線・釧路〜根室間(花咲線)・東根室駅・納沙布岬訪問記(2016.7.1)


この花咲線の列車ですが、景色をより楽しむためには、海側の座席を確保することが肝要ですが、全ての列車が普通車自由席であることから、そんなベストな座席を確保するためには、先着順に並ばなくてはならなりません。

そんなことから、花咲線の一部列車に指定席を導入するのは、個人的にはいい取り組みに感じました。
ファン的には「どの時間帯の列車に設定される」のか、また、「指定席で販売する際の列車名は何か」というのが注目でしょうか。

花咲線には、「はなさき」「ノサップ」という愛称付き快速列車が運行されています。
このうち、下り「ノサップ」(釧路11:12発→根室13:22着)は、観光客の利用も多い時間帯と思慮されますので、そのまま「ノサップ」の愛称で指定席が設定されるかも知れません。

ともあれ、指定席を設定するためには何らかの列車名を付けないといけないわけですので、それがどんな名称になるのか、きっぷファンの観点からも注目の列車といえます。
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▲根室駅に停車中のキハ54系と、花咲線の車窓から見る厚岸湾。
一部列車の増結の上、海側の座席を指定席として運行することが発表されました。
こういった眺めのよい座席が確保できるのは、利用者にとっても嬉しいですし、また指定席料金の収入も得られることから、事業者にとっても有効な施策ではないかと思われます。



もう一つの「フラノラベンダーエクスプレス」の延長運転ですが、シーズンを中心に札幌〜富良野を直通運転する特急列車で、根強い人気があります。
しかし、富良野から上富良野・美瑛方面には、更に富良野線に乗り換える必要がありますが、今回の直通運転では、その手間が無くなります。

更に、延長区間の富良野〜旭川間では「快速列車」として運転されるので、261系5000代の富良野線入線という珍しい光景のみならず、料金不要で乗車できるという、レアかつ太っ腹な設定といえます。


ファン的に特徴的な列車を2種類ご紹介しましたが、その他にもバスとの連携など、公共交通そのものの利用を底上げしていく施策も盛り込まれています。
もはやJR北海道のみならず、公共交通そのものが岐路に立たされている北海道。
今回の施策がいずれも良好な成績を収め、そして線区の維持に貢献できる改善方策が策定されることを願いたいな、と感じたニュースでありました。




【関連ニュースサイト】
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