JR西日本、JR東海、JR東日本及びJR北海道では、新幹線と在来線とを乗り継いで利用する際に、在来線の特急料金等を割り引く「乗継割引」を終了することを発表しました。

新幹線と在来線特急列車との「乗継割引」の終了について:JR西日本
新幹線と在来線特急列車との「乗継割引」の廃止について|JR東海
新幹線と在来線特急列車の「乗継割引」の取扱い終了について|JR東日本
乗継割引制度の廃止について|JR北海道

概要は以下のとおりです。

【制度概要】
新幹線と在来線特急列車を乗り継いだ場合に、在来線の特急・急行料金、指定席料金が半額となる制度。

【現在の対象乗継駅】
・北海道新幹線:
新函館北斗

・東北新幹線:
新青森

・上越新幹線:
長岡、新潟

・北陸新幹線:
長野、直江津(※1)、津幡(※2)、金沢

・東海道新幹線・山陽新幹線:
新横浜〜相生間の各駅、大阪(※3)

(※1)上越妙高駅に直通して運転する在来線の特急・急行列車に乗車し、上越妙高駅で北陸新幹線と乗り継ぐ場合に限る
(※2)金沢駅に直通して運転する在来線特急列車に乗車し、金沢駅で新幹線と乗り継ぐ場合
(※3)新大阪駅で新幹線と乗り継ぐ場合

【終了時期】
2024年春
なお、JR西日本及びJR東海では2024年3月16日(土)利用分より見直し



詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



国鉄時代から民営化後も引き継がれてきた割引制度である「乗継割引」。
下記「乗りものニュース」の記事によりますと、1965年に新幹線と在来線特急・急行を乗り継ぐ輸送形態ができるなかで、特急料金の割高感を解消するために設けられた制度とのことで、制度の変遷はあれど、60年近く続いてきた制度でありました。

基本的な枠組みとしては、新幹線と在来線の特急・急行列車を乗り継ぐ際、在来線側の料金を割り引くものでしたが、そこから派生して、本州と北海道や本州と四国などといったルートでも適用されることとなりました。

国鉄時代から長らく、ほとんど全ての新幹線の駅で乗り継ぐ場合に適用されていましたが、近年はその取扱いが徐々に縮小されてきました。
例えばJR東日本では、2002年12月の東北新幹線八戸開業を期に乗継割引の対象駅を縮小し、またJR九州では2011年3月の九州新幹線全線開業を期に乗継割引を廃止していました。

そして今年に入り、JR西日本が岡山〜新下関間での新幹線停車駅での乗継割引を今年4月1日乗車分より廃止となり、見直しの動きが続いてきました。


縮小が続くこの「乗継割引」が、今後どのような動きを見せるのか、北陸新幹線延伸開業を来春に控え気になっていたところでありましたが、いきなり「全廃」となるとは、個人的にも少々驚きがありました。
もう少しソフトランディングといいますか、段階的に縮小すると思っていただけに、ニュースでも大きく報じられていました。


この「乗継割引」ですが、上述のとおり「新幹線」と「在来線特急・急行」を乗り継ぐ場合、「在来線特急・急行」を割り引く制度なのですが、その条件を逆手に取り、長距離の在来線特急の特急料金を割り引く手段として、新幹線の隣駅間などで割安に設定されている「新幹線特定特急券」と併せて在来線特急料金に乗継割引を適用させる、という節約術も紹介されていたりしました。

ただ、こういった利用方法は割引制度の本旨にそぐわない利用方法でもありましたし、何よりこの「乗継割引」自体、在来線の特急料金が半額にされることから、乗継先の在来線特急・急行列車の収入がその分逸失することにもなり、本旨にそぐわない利用方法が起こりうることも併せて、制度の是正という点では長年の課題だったのかも知れません。


一方で、近年ではネット予約の普及に加え、チケットレス特急券の発達により、「乗継割引」に頼らなくとも、それなりの割引が得られる制度も用意されており、逆に「旅行前に乗り継ぐ列車を同時に購入する必要がある」乗継割引の制約が予定変更の柔軟性という意味では足枷になってきたかも知れません。

加えて、コロナ禍後の利用者の動向から、特にビジネス客がコロナ前には完全に戻らないことが徐々に見えてきたことも、割引制度を見直す一つのきっかけになっていたのかも知れません。


以上、その背景についてはあれこれ推察はしてみてみましたが、ともあれ、来春をもって、これまで親しまれてきた「乗継割引」が廃止となります。
特急券に記された「乗継」の文字も、あと半年ほどで見納めとなりそうです。



その「乗継」が記された特急券をご紹介したいと思います。
手元にあった一例として、長万部→(特急)→新函館北斗→(新幹線)新青森の特急券をご紹介します。
img188-2
▲長万部→新函館北斗の特急券・グリーン券。
在来線側には右下に四角で「乗継」と印字されます。

img189-2
新函館北斗→新青森の新幹線特急券・グリーン券。
こちらは着駅(新青森)の下に「乗継」の文字が印字されます。

DSC06162_R
DSC06142_R
▲それぞれ乗り継いだ列車。
来年3月以降は、これらの乗り換えでも「乗継割引」は消滅することとなります。




ところで、今回のJRグループ4社から発表された資料ですが、いずれも「乗継割引の廃止」という内容は同じでありながら、それに至る経緯の書き方が微妙に違っていました。
各社の経営状況やスタンスが見えてくるようで面白いと感じましたので、ここで併せてご紹介しておきます。

【JR西日本】
JR西日本では、コロナ禍後のお客さまのご利用状況の変化やデジタル化の進展等の社会変容を踏まえ、乗継割引を終了いたします。
(上記発表資料(https://www.westjr.co.jp/press/article/items/230922_00_press_noritsugi.pdf)より引用、下線太字は管理人による。)


【JR東海】
東海道新幹線のご乗車に際しては、約半数のお客さまに、新幹線の会員制ネット予約&チケットレス乗車サービス「EXサービス」をご利用いただくなど、ネット予約へのニーズが高まってきています。
こうしたお客さまのご利用状況の変化を踏まえ、東海道新幹線と在来線特急列車とを乗り継ぐケースにおいて、新幹線は「EXサービス」、そして在来線特急列車もネット予約してご乗車いただけるよう、来春、EX会員が新幹線以外の旅先でのコンテンツ等を予約いただける「EX旅先予約」にて、在来線特急列車のおトクな商品をご用意する予定です。
これに伴いまして、新幹線と在来線特急列車とを乗り継いだ場合に適用される「乗継割引」を来春、廃止します。
(上記発表資料(https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000042960.pdf)より引用、下線太字は管理人による。)



【JR東日本】
JR東日本では、新幹線ネットワークの拡大や、インターネット販売等の拡充による販売環境の変化により、お客さまのご利用方法が変化しています。新幹線と在来線特急列車を乗り継いだ場合に在来線特急料金等が半額となる「乗継割引」についても、ご利用するお客さまが減少していることを踏まえ、このたび取扱いを終了します。
(上記発表資料(https://www.jreast.co.jp/press/2023/20230922_ho01.pdf)より引用、下線太字は管理人による。)


【JR北海道】
JR北海道では、お客様のご利用状況や弊社を取り巻く経営環境の変化を踏まえ、北海道新幹線と在来線特急列車との乗継割引を廃止いたします。
(上記発表資料()より引用、下線太字は管理人による。)




【関連ブログ】
【JR各社】新幹線⇔在来線特急の乗継割引廃止を発表。料金値上げへ - 鉄道プレス
JRグループ、乗継割引廃止: たべちゃんの旅行記「旅のメモ」



【関連ニュースサイト】
在来線特急料金が半額の「乗継割引」、2024年春で取り扱い終了へ - 鉄道コム
新幹線×在来線特急「乗継割引」廃止 約60年の歴史に幕 紙のきっぷ減で「役目終わった」 | 乗りものニュース
JR北海道・JR東日本・JR東海・JR西日本「乗継割引」2024年春に廃止 | マイナビニュース
JR北・東・東海・西、新幹線と在来線特急列車の「乗継割引」廃止へ 2024年3月 | レイルラボ ニュース
新幹線・在来線特急列車の「乗継割引」廃止へ JR4社が発表、2024年春 | 鉄道ニュース | 鉄道チャンネル
新幹線と在来線特急の「乗継割引」終了 JR各社 - Impress Watch
JR北海道、「乗継割引」の取り扱いを来春終了 - TRAICY(トライシー)
JR東日本、「乗継割引」を来春終了 - TRAICY(トライシー)
JR東海、「乗継割引」の取り扱い終了 - TRAICY(トライシー)
JR「乗継割引」廃止へ。国鉄時代の割引制度、また姿を消す | タビリス
在来線特急「乗継割引」廃止に悲鳴 「ステルス値上げ」「だからネット予約しなかった」一方で廃止やむなしの声も | 乗りものニュース



↓↓鉄道系ブログ・ニュースポータルサイト「鉄道コム」はこちらをクリック↓↓
鉄道コム