こちらの記事でも触れたとおり来年3月のダイヤ改正にも何らかの見直しがされる旨ご紹介した「北陸」「能登」ですが、やはりといいましょうか、来年3月を持って廃止・臨時化される旨、発表されました。
平成22年春ダイヤ改正について(JR西日本プレスリリース)
上記プレスリリースでは、「北陸」「能登」に関しては次の通り記されています。
また、JR西日本の社長会見では、次の通り発表されています。
つまり、「北陸」「能登」を統合して、新たに臨時夜行急行列車を設定するとのことですが、どういう列車となるのか、がやはりミソでしょうか。
寝台車主体か、それとも座席車主体か。
理想を言えば、現在の「北陸」の設備を流用した臨時列車となればいいのでしょうか、車両老朽化が臨時化の理由の一つであるだけに、それがどこまでできるのかは、疑問な点もあります。
さて、今回のダイヤ改正、JR西日本管内に限って言えば、減量化が目立つダイヤ改正となりました。
・「こだま」「ひかりレールスター」の運転取りやめ、臨時化
・「はるか」の昼間時一部列車の臨時化及び全列車の西九条停車取りやめ
・「雷鳥」「くろしお」の週末運転の列車の臨時化
JR西日本全体のダイヤ改正プレス資料では、この程度の減量内容ですが、各支社のプレスリリースを覗いてみると、減量改正の実態が明らかになります。
(金沢支社関連)
金沢支社プレスリリース(PDF)
・「サンダーバード」「雷鳥」の一部列車の減車(9両→6両)
・普通列車の土休日の運休拡大
(大阪支社関連)
大阪支社プレスリリース(PDF)
・利用の少ない列車の見直し
(平日)
・朝・夜間帯:学研都市線・大阪環状線
・朝時間帯:JR東西線
・夜間帯:大和路線・和歌山線
(土曜・休日)
・朝・夜間帯:学研都市線・大阪環状線・大和路線
・朝時間帯:JR東西線
・夜間帯:阪和線
(和歌山支社関連)
和歌山支社プレスリリース(PDF)
・和歌山〜和歌山市の始発繰り下げ・最終繰り上げ・土日運転列車の運転取りやめ
・新大阪発紀伊田辺行き最終列車の行き先を御坊行きに変更(御坊〜紀伊田辺間を短縮)
・新宮〜紀伊勝浦間の深夜・早朝の臨時列車の運転取りやめ
(神戸支社関連)
神戸支社プレスリリース(PDF)
・JR神戸線須磨〜西明石間の普通列車の運転間隔見直し
・和田岬線での土曜夜の運転間隔見直し
・加古川線の土日の朝・深夜時間帯の加古川〜厄神間の列車の運転間隔見直し
(岡山支社)
岡山支社プレスリリース(PDF)
・姫新線・因美線の列車運転取りやめ(各線1往復)
・山陽本線、赤穂線、伯備線、姫新線、因美線での土休日の運転を取りやめる
・快速「マリンライナー」の減車(全列車概ね1両〜2両の減車)
(広島支社)
広島支社プレスリリース(PDF)
・山陽本線での快速列車の普通化・運転間隔の整理
・芸備線「みよしライナー」1往復減(区間運転の普通列車に振替)
・早朝深夜・土休日の列車の運転見直し
(米子支社)
米子支社プレスリリース(PDF)
・境線の土休日1時間ヘッド化
いずれの内容も、主に地域輸送を担う普通列車の見直しがメインとなっています。
この理由について、様々な要因が考えられます。
例えば、JR西日本に特有の原因として例の福知山線事故からの安全対策による運転要員の配置の関係もあるでしょう(この関係は、今年3月のダイヤ改正で近畿圏の最終列車繰り上げという形でも措置されています)。
また、高速道路無料化の影響を直接的に受けた列車の削減(例えば「ひかりレールスター」「こだま」「くろしお」「雷鳥」の削減)や、その影響がJR西日本の経営に波及し、間接的な影響として地域輸送の普通列車の削減というダイヤ改正となった、とも分析できるでしょう。
個人的な感想を言えば、「ご利用状態を勘案した見直し」等といった勿体ぶった表現をせず、「利用客減少による減便ダイヤ改正」とはっきり表現し、その理由(直接的な理由は低い利用状況ですが、それを減便に結びつけなければならない理由)としてJR西日本が考えている理由を素直に挙げればいいのに、と思ったりもします。
勿論それで、マスコミからの非難を浴びるということもあるでしょうが、大いなる批判を浴びた先の事故調漏洩と今回の減便ダイヤ改正とは性格を異にすることでして、例えば高速乗り放題の影響を素直に挙げることで、世間に対する問題提起を行う、という点も大事なのではないかと思うのです。
勿論それで、「列車削減も大事だが、公共交通機関としての責務も果たせ」というのなら、じゃあその「責務」に対するコストは誰が負担するのか。高速道路乗り放題の影響で内部補助が機能しなくなったからこそ、地域輸送の普通列車にメスを入れざるを得ないのではないのかも知れません。
「列車削減よりもJALと同じく経営合理化が必要ではないか」というのなら、じゃあその合理化の程度について、JR西日本は他のJRグループ・民鉄各社と比べてどうなのか。
それよりも何より、行き過ぎた合理化が事故を招かない、ともいえないのではないか。適度な合理化と公共交通サービスの提供をどこで折り合いをつけるのか、という点も重要かと思います。
(個人的には、JR西日本はかなり合理化を進めている、という印象を持っています(その方向性が本当に経営に寄与しているかどうかはともかくとして)が、皆様はどうお考えでしょうか)
「JR西日本も利益を生み出してるのだから、多少利益が減っても列車の本数は維持すべきでは」というのなら、では、そもそも国鉄を民営化したのはなぜ、ということになる訳でして、民間企業による効率的な経営は、積極的にも消極的にも効率性を目指すことになるわけで、今回はそれを消極的に目指した訳です。
そもそも、利益向上を目指さない民間企業、というのが、民間企業として如何におかしいかは、他の業界を見れば十分わかることですし、それがダメというのなら、国鉄改革で単純民営化という方策を採るべきでなかった、という議論が出てくるかも知れません。
そんな色々な議論も生まれて、じゃあ結局公共交通機関を維持していくために事業者・利用者・行政・マスコミはどうしていけばいいのか、という点が見えてくるのにな、と思うわけです。
そのあたり素直に表現しないことが「大人の事情」というのもあるのでしょうが、高速道路無料化という「子ども」が考えても特に鉄道全体に悪影響を及ぼす政策を支持するくらいの国民性ですから、そんな大人の事情なんて分かりっこないよ(マスコミも含めて)と思ってしまうところです。
思うに、今回のダイヤ改正の内容は、単に減量改正というだけでなく、その背後を見ることで、今後の公共交通機関(特に地方の)をどう維持していくのか、という問題提起が含まれた内容なのでは、と思っています。
別エントリーでは阪和線関連の改正内容をみていきたいと思います。
(本当は阪和線関連を同一エントリーで見ておきたかったのですが、これだけ長くなったので、別エントリーとすることにしました)
平成22年春ダイヤ改正について(JR西日本プレスリリース)
上記プレスリリースでは、「北陸」「能登」に関しては次の通り記されています。
ご利用の減少と車両老朽化に伴い、東京と北陸方面を結ぶ寝台特急「北陸」(上野〜金沢間)、急行「能登」(上野〜金沢間)の運転を取りやめます。
また、同区間においては、週末や夏休みなどお客さまの多い時期を中心に臨時急行列車を運転します。
また、JR西日本の社長会見では、次の通り発表されています。
また、ご利用の減少や車両老朽化に伴い、金沢〜上野間の寝台特急「北陸」、急行「能登」を廃止します。ただ、週末を中心に一定のご利用がございますので、このニーズに対しましては、夜行臨時列車を運転することで対応してまいります。
つまり、「北陸」「能登」を統合して、新たに臨時夜行急行列車を設定するとのことですが、どういう列車となるのか、がやはりミソでしょうか。
寝台車主体か、それとも座席車主体か。
理想を言えば、現在の「北陸」の設備を流用した臨時列車となればいいのでしょうか、車両老朽化が臨時化の理由の一つであるだけに、それがどこまでできるのかは、疑問な点もあります。
さて、今回のダイヤ改正、JR西日本管内に限って言えば、減量化が目立つダイヤ改正となりました。
・「こだま」「ひかりレールスター」の運転取りやめ、臨時化
・「はるか」の昼間時一部列車の臨時化及び全列車の西九条停車取りやめ
・「雷鳥」「くろしお」の週末運転の列車の臨時化
JR西日本全体のダイヤ改正プレス資料では、この程度の減量内容ですが、各支社のプレスリリースを覗いてみると、減量改正の実態が明らかになります。
(金沢支社関連)
金沢支社プレスリリース(PDF)
・「サンダーバード」「雷鳥」の一部列車の減車(9両→6両)
・普通列車の土休日の運休拡大
(大阪支社関連)
大阪支社プレスリリース(PDF)
・利用の少ない列車の見直し
(平日)
・朝・夜間帯:学研都市線・大阪環状線
・朝時間帯:JR東西線
・夜間帯:大和路線・和歌山線
(土曜・休日)
・朝・夜間帯:学研都市線・大阪環状線・大和路線
・朝時間帯:JR東西線
・夜間帯:阪和線
(和歌山支社関連)
和歌山支社プレスリリース(PDF)
・和歌山〜和歌山市の始発繰り下げ・最終繰り上げ・土日運転列車の運転取りやめ
・新大阪発紀伊田辺行き最終列車の行き先を御坊行きに変更(御坊〜紀伊田辺間を短縮)
・新宮〜紀伊勝浦間の深夜・早朝の臨時列車の運転取りやめ
(神戸支社関連)
神戸支社プレスリリース(PDF)
・JR神戸線須磨〜西明石間の普通列車の運転間隔見直し
・和田岬線での土曜夜の運転間隔見直し
・加古川線の土日の朝・深夜時間帯の加古川〜厄神間の列車の運転間隔見直し
(岡山支社)
岡山支社プレスリリース(PDF)
・姫新線・因美線の列車運転取りやめ(各線1往復)
・山陽本線、赤穂線、伯備線、姫新線、因美線での土休日の運転を取りやめる
・快速「マリンライナー」の減車(全列車概ね1両〜2両の減車)
(広島支社)
広島支社プレスリリース(PDF)
・山陽本線での快速列車の普通化・運転間隔の整理
・芸備線「みよしライナー」1往復減(区間運転の普通列車に振替)
・早朝深夜・土休日の列車の運転見直し
(米子支社)
米子支社プレスリリース(PDF)
・境線の土休日1時間ヘッド化
いずれの内容も、主に地域輸送を担う普通列車の見直しがメインとなっています。
この理由について、様々な要因が考えられます。
例えば、JR西日本に特有の原因として例の福知山線事故からの安全対策による運転要員の配置の関係もあるでしょう(この関係は、今年3月のダイヤ改正で近畿圏の最終列車繰り上げという形でも措置されています)。
また、高速道路無料化の影響を直接的に受けた列車の削減(例えば「ひかりレールスター」「こだま」「くろしお」「雷鳥」の削減)や、その影響がJR西日本の経営に波及し、間接的な影響として地域輸送の普通列車の削減というダイヤ改正となった、とも分析できるでしょう。
個人的な感想を言えば、「ご利用状態を勘案した見直し」等といった勿体ぶった表現をせず、「利用客減少による減便ダイヤ改正」とはっきり表現し、その理由(直接的な理由は低い利用状況ですが、それを減便に結びつけなければならない理由)としてJR西日本が考えている理由を素直に挙げればいいのに、と思ったりもします。
勿論それで、マスコミからの非難を浴びるということもあるでしょうが、大いなる批判を浴びた先の事故調漏洩と今回の減便ダイヤ改正とは性格を異にすることでして、例えば高速乗り放題の影響を素直に挙げることで、世間に対する問題提起を行う、という点も大事なのではないかと思うのです。
勿論それで、「列車削減も大事だが、公共交通機関としての責務も果たせ」というのなら、じゃあその「責務」に対するコストは誰が負担するのか。高速道路乗り放題の影響で内部補助が機能しなくなったからこそ、地域輸送の普通列車にメスを入れざるを得ないのではないのかも知れません。
「列車削減よりもJALと同じく経営合理化が必要ではないか」というのなら、じゃあその合理化の程度について、JR西日本は他のJRグループ・民鉄各社と比べてどうなのか。
それよりも何より、行き過ぎた合理化が事故を招かない、ともいえないのではないか。適度な合理化と公共交通サービスの提供をどこで折り合いをつけるのか、という点も重要かと思います。
(個人的には、JR西日本はかなり合理化を進めている、という印象を持っています(その方向性が本当に経営に寄与しているかどうかはともかくとして)が、皆様はどうお考えでしょうか)
「JR西日本も利益を生み出してるのだから、多少利益が減っても列車の本数は維持すべきでは」というのなら、では、そもそも国鉄を民営化したのはなぜ、ということになる訳でして、民間企業による効率的な経営は、積極的にも消極的にも効率性を目指すことになるわけで、今回はそれを消極的に目指した訳です。
そもそも、利益向上を目指さない民間企業、というのが、民間企業として如何におかしいかは、他の業界を見れば十分わかることですし、それがダメというのなら、国鉄改革で単純民営化という方策を採るべきでなかった、という議論が出てくるかも知れません。
そんな色々な議論も生まれて、じゃあ結局公共交通機関を維持していくために事業者・利用者・行政・マスコミはどうしていけばいいのか、という点が見えてくるのにな、と思うわけです。
そのあたり素直に表現しないことが「大人の事情」というのもあるのでしょうが、高速道路無料化という「子ども」が考えても特に鉄道全体に悪影響を及ぼす政策を支持するくらいの国民性ですから、そんな大人の事情なんて分かりっこないよ(マスコミも含めて)と思ってしまうところです。
思うに、今回のダイヤ改正の内容は、単に減量改正というだけでなく、その背後を見ることで、今後の公共交通機関(特に地方の)をどう維持していくのか、という問題提起が含まれた内容なのでは、と思っています。
別エントリーでは阪和線関連の改正内容をみていきたいと思います。
(本当は阪和線関連を同一エントリーで見ておきたかったのですが、これだけ長くなったので、別エントリーとすることにしました)