福井鉄道のエントリーの続きで、田原町からえちぜん鉄道三国芦原線に乗車します。

えちぜん鉄道は、以前の京福電鉄三国線・越前本線を引き継いで運行している第3セクター鉄道です。
えちぜん鉄道が設立されたきっかけは、京福電鉄が平成12年・13年に立て続けに正面衝突事故を起こしたことにあります。この正面衝突事故を起こして福井県内の京福電鉄では全線での運行停止措置が発せられ、安全対策をなされることが求められたのですが、従前より全線廃止を提案せざるを得なかった京福の経営状況から見て安全対策への投資が難しく、京福としては営業の継続を断念することとなりました。元・京福電鉄の路線は代行バスによる運行となりました。

しかし、積雪の多い福井市周辺では、特に道路の混雑が鉄道休止により拍車がかかり、代行バスがダイヤ通りに走らない、また自家用車でさえも京福運行時に比べて移動が困難になる、所謂交通マヒの状態が発生しました。
つまり、鉄道会社そのものは赤字で運営できないレベルであったとしても、それは社会的に見て便益が無いわけでは決してない。社会的に有益で必要なものであること、たとえ赤字であっても必要な鉄道路線であったことが、これらの路線の運休によって明らかになりました。また、そのことを主に沿線住民は身をもって体験することに、またより広い意味で言えば、壮大な社会実験となってしまったのでした。

こういった状態から、鉄道をこのまま廃止するわけにはいかない。しかし京福電鉄も営業が引き継げない。そこで、沿線自治体が主に出資を行った第3セクター鉄道として設立されたのがこのえちぜん鉄道です。

えちぜん鉄道は平成14年に設立され、翌平成15年7月より一部区間で運行を再開し、同年中に全線で運行を再開することとなりました。
運行再開時に、えちぜん鉄道として新たな取組(それは他の鉄道会社でも珍しいものでしたが)を幾つか導入しています。ここからの乗車記ではその辺りにも触れることができれば、と思います。

前置きが長くなってしまいましたが、いよいよえちぜん鉄道に乗車します。


今回は、月曜日だったので、一日フリーきっぷが利用できない(土・日・祝日の利用)ので、何かいいきっぷが無いものかと考えてみたら、翌17日まで利用可能な三国サンセットビーチきっぷという切符がありました。これは1,500円でえちぜん鉄道全線フリーきっぷに三国サンセットビーチでの海の家利用券等がセットになったものです。
勿論、海水浴に行くのが目的ではないので、サンセットビーチの分は使わずじまいですが、平日に限れば1,500円で十分元が取れるので、このきっぷを購入しました。

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田原町駅駅舎。
田原町駅は有人駅だったので、このサンセットビーチきっぷを購入しました。えちぜん鉄道では、乗降客の多い駅を中心に有人駅を設置しています。

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田原町駅駅名票

10時48分。三国港行きが入線してきました。
乗車したのはMC5001形。車内はロングシート・3扉の車両。

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MC5001形(三国港)

意外と新しそうな車両で、製造銘板をみると、「武庫川車両 1999年」と書いてありました。阪神の改造車か、それとも新造車か?乗ったときにはわかりませんでしたが、あとから調べてみると、京福時代に導入された新車(但し足回りは廃車流用)した車両で、2両製造したうちの1両が正面衝突事故で廃車となり、1両だけの虎の子、ということがわかりました。
参考:京福電気鉄道モハ5001形電車 - Wikipedia

車内は座席に7割ほどの乗客。午前の福井発としては、決して悪くない利用率です。

えちぜん鉄道の日中の列車の殆どには、「アテンダント」とい女性が乗務しています。
アテンダントは、乗車券の販売・回収や観光・接続案内の車内アナウンス、高齢者などの乗降時のサポートを車内でおこなっており、私が乗車した列車でも乗車券の販売・回収は勿論のこと、「各種割引きっぷの案内(三国サンセットビーチきっぷも含む)」「えちぜん鉄道主催旅行の案内」「接続バステクノポート号の乗換案内」「東尋坊方面へのバス案内」や高齢者の話し相手等、多岐に渡って活躍されていました。

そのえちぜん鉄道のアテンダントさんが書かれた書籍がこちら。
Amazon.co.jp: ローカル線ガールズ: 嶋田郁美: 本

私はまだこの本を手にしていませんが、何かの機会に読んでみたいと思います。

さて、列車の話に戻します。
乗客は福井を遠ざかるにつれて少しずつ減るものの、無人になるということはありません。対向の福井行きはいい具合に混雑しているところからも、地域に定着している路線として機能していることが分かります。

列車は水田地帯をひた走り、約30分。あわら湯のまち駅に到着。
駅名から分かるように、ここは芦原温泉の最寄り駅で、大きな旅館が多く建っているところからしても、他の駅とは趣が違っていました。
ここでまとまった下車がある一方、若干ではありますが三国港方面への乗車もあり、こういった短区間での利用も細かく拾っているところも、地域の定着度合いが垣間見えた一コマでした。

列車は更に進んで、三国駅に到着。ここは旧・三国町の中心ということもあり、殆どの乗客はここで下車。終点の三国港まで乗り通すのは私を含めて数名となりました。

11時28分、三国港駅到着。

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国鉄三国線の駅として開業の後、京福線が乗り入れてきて、両線の列車の終着駅となりました。
そして、国鉄三国線が廃止され京福の駅として独立。京福の営業断念後、えちぜん鉄道の駅として、都合3つ目の鉄道会社等の終着駅となっています。

三国港駅は今年春に駅舎の改装工事が完了し、かつての雰囲気をそのままに、レトロ調な趣となっています。
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駅の端には、国登録有形文化財の眼鏡橋がかかっています。これは国鉄三国線開業時から存在する、歴史的に価値のある橋なんだそうです。
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眼鏡橋の説明です。
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折り返し、11時39分発の福井行きに乗車しますが、折り返しの内容は次のエントリーで述べたいと思います。

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