毎月発売される鉄道雑誌のうち、自分自身に「刺さる」内容の特集の時は、実際に購入して読んでみることにしています。
この1月に発売された鉄道雑誌の内、注目したのは「鉄道ファン」でした。

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鉄道ファン 2020年 03月号 [雑誌]
鉄道ファン 2020年 03月号 [雑誌]




特集は「形式記号「ユ」」。
「ユ」は郵便車を指すモノですが、そもそも「郵便車」とは何なのか。
もはや若いファンは勿論、いわゆるアラフォーのファンであっても、実際に走っているのを見たことが無い人も多いのではないのでしょうか。
国鉄がJRになったのみならず、かつて郵便事業を扱っていた「郵政省」という国の役所が、総務省郵政局、日本郵政公社を経て、現在の日本郵便・ゆうちょ銀行・かんぽ生命と民営化された今となっては、それは無理もない時代でありましょう。

かつて、国鉄が民営化される少し前まで、郵便物の輸送に鉄道が利用されていたのみならず、その仕分けまでも車内で行われていた時代がありました。
その仕分けのため、郵政省の職員が、運転士・車掌という国鉄の職員とは別に乗務していたこと、またその郵便物の輸送のために専用に設計された車両が用意されていたこと、加えてそれらの車両の一部は、何と国鉄ではなく郵政省が所有していた私有車であった、等々・・・
現在からすれば想像だにつかないであろう郵便物の輸送が行われていました。


今回「鉄道ファン」で特集されている、形式記号「ユ」は、その郵便輸送のために製造された車両、「郵便車」の全国鉄形式をまとめたものであります。
これら郵便車は、客車・電車・気動車それぞれに存在していたのみならず、全室が郵便車である車両の他、荷物車や座席車との合造車があったりと、形状のバラエティのに富んでいたものでありました。

今回の特集では、それら国鉄の郵便車が全形式収録された、まさに記録的価値の高いものでありますので、ファンにとっては是非とも入手しておきたい一冊といえるでしょう。

客車・電車・気動車、それぞれに応じて新製あるいは改造により世に送り出された郵便車。
高度経済成長期は、それこそ郵便輸送の大動脈として活躍し、全国津々浦々で「〒」マークを記した車両が、他の車両と連結され、あるいは単独で運行されていました。
しかし、高速道路網の発達や航空機の普及により、鉄道による郵便輸送は徐々に縮小され、遂に国鉄末期の1986年(昭和61年)に郵便車による郵便輸送は終焉を迎えました。

その終焉まで郵便輸送を支えた車両まで網羅した今回の特集でありますので、例えば1984年(昭和59年)に新製されたものの、上述の取り扱い終了によりわずか4年で廃車となった「クモユ143」も収録され、輸送形態の変化と所有形態の特異さ(郵政省所有のため、転用が困難だった)に翻弄された短い歴史も、この特集から垣間見ることができます。

前述のとおり、一言で「郵便車」といっても、様々な形態がありました。
それらを眺めながら、当時の郵便物輸送事情に思いを馳せるだけで時間が過ぎ去りそうなほどの資料性のある今回の鉄道ファン、本当にお買い得な一冊に感じました。


折角の機会ですので、「郵便車」と鉄道郵便について、更に詳しく書かれている書籍が二冊ほど手元にありましたので、ご紹介しておきます。

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●鉄道ピクトリアル2017年5月号「【特集】郵便・荷物電車」(上記写真左)
合造車の組み合わせとしても多い、郵便電車と荷物電車の特集です。
郵便車の設備や、当時JR東日本長野総合車両センターに在籍していたクモユニ143形をクローズアップした記事と、郵便車についても、相当のページが割かれています。



●客車の迷宮(交通新聞社新書)(上記写真右)
P136〜P141の「郵便局が移動する」の項で、郵便車と、その中で働く郵便職員に触れられています。
当時の郵便職員の仕事が細かく記されており、こちらも「郵便車」をマスターする上では読んでおきたいところです。







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