全日本吹奏楽連盟では、2020年度の全国大会(全日本吹奏楽コンクール、全日本小学生バンドフェスティバル、全日本マーチングコンテスト)の中止を発表しました。

2020年度 秋季事業の中止について|全日本吹奏楽連盟

中止の理由としては、新型コロナウイルス感染症が、依然として収束予測が立たない状況の中、同連盟では秋季事業の開催について検討、協議を重ねてきたのですが、参加団体構成員、来場者、関係する全ての者の生命と安全が最優先との結論に達し、標記事業の中止を決定した、とのことです。

同連盟としては、本決定は苦渋の決断であり、吹奏楽を愛好する方々の気持ちを察すると、本当に心の痛む思いであるとする一方、この重大な経験を克服した先には、吹奏楽の輝かしい未来が必ず見えてくるものと確信しており、この緊急事態に屈することなく、吹奏楽の灯を守り続け、ますます発展するよう一層の努力を重ねていくこととしています。

なお、コンクール課題曲については、2020年度の作品を来年度の課題曲にする、としています。

なお、上記大会を全日本吹奏楽連盟と共に主催する朝日新聞社のサイトには、上記説明に加えて補足が掲載されていましたので、併せてご紹介します。
全日本吹奏楽コンクールなど3大会の中止について|お知らせ | 朝日新聞社インフォメーション

詳細は、上記Webサイトをご覧下さい。



新型コロナウイルス感染症については、緊急事態宣言が発出され、移動や集会といった、感染拡大を伴う行動を極力自粛するよう要請されているところです。
そのため、このブログでも、鉄道・バス・航空といった公共交通機関の利用者が極端に減少していることを、幾度となくご紹介してきました。

一方で、「密集」「密接」といった点では、吹奏楽をはじめとした演奏・講演等の活動も軒並み抑制がされているところです。
これらの活動については、演奏者等が練習場所において密接・密集・密閉した環境にあるのが多いこと、また本番の環境でも、ホール等の屋内施設では観客が密集・密接・密閉している環境であることから、新型コロナウイルス感染症の収束の目処が立たないと、実際に活動を再開するのは難しい状況であるといえます。

また、吹奏楽コンクールに関して言えば、例年、7月から8月にかけて各都道府県、あるいは都道府県内を更に細かく分けたブロック毎の大会が行われ、各都道府県の代表となった学校・団体が、各支部(関西・東海・中国等、概ね全国の地方区分毎に相当、但し例外もあり)大会で演奏し、支部大会の代表となった学校・団体が、秋に実施される全国大会に出場する、という流れになっています。

(※)参考までに、吹奏楽コンクールの仕組み(都道府県大会→支部大会→全国大会)については、アニメ「響け!ユーフォニアム」の作中でも説明されています。
本作品では、コンクールへの挑戦がメインに描かれていることもあり、吹奏楽コンクールの仕組みやそれ向けての練習などを感じ取るのにとって、非常に分かりやすい作品となっています。
もっとも、学校によってその姿勢に強弱はあるでしょうが、夏の本番に向けて、練習を積み重ねていく描写は、どの学校にもあり得る光景ではないか、と思います。




そのため、コンクールへの練習については、春頃から各団体・学校は開始し、夏の大会を目指すところが多いのでありますが、中学・高校でいえば、例年ならば新入生の指導を行いつつ、春のイベント演奏会を行いつつ、コンクールを見据えた練習を行うという時期であるはずのこの時期ですが、こと今年に関して言えば、新型コロナウイルス感染症の影響により、学校自体が休校措置となっている地域が多い中で、練習さえもできない状況が続いています。


今後、新型コロナウイルス感染症の収束度合いをみて、学校の事業再開も検討されるものと考えられますが、仮に再開したとしても、しばらくは感染防止策として、分散登校やオンライン授業の併用といった措置が講じられるものと考えられます。
そのような状況の元では、吹奏楽をはじめとしたクラブ活動の再開は、かなり遅い時期にずれ込むことは容易に推測されますし、そこからコンクールへの練習を始めたとしても、例年の時期でのコンクール実施は、スケジュール的に難しいものとも考えられます。

とはいえ、スケジュールの問題は調整すれば不可能ではないにしても、それまでの過程で、密集・密接・密閉の環境とならざるを得ない練習環境の中、仮に練習中に感染クラスターが発生したとすれば、それこそ今後の吹奏楽の活動自体が持続困難な状況に追いやられるのは、想像に難くありません。

一方で、この吹奏楽コンクール、特に中学・高校の部に関して言えば、学生生活における吹奏楽活動の中で、その結果が金賞・銀賞・銅賞といった目に見える形で評価されること、また金賞の中でも次の大会へ進出できる代表団体が選ばれることから、このコンクールでより良い賞や上位の大会を目指すべく、練習を積み重ねてきている生徒達も非常に多いと考えられます。

そんな生徒達の成果を発表する機会を取りやめることについては、冒頭の全日本吹奏楽連盟の発表どおり、「苦渋の決断」であり、「心の痛む思い」であったかと思われます。
特に、最高学年となる中学三年生、あるいは高校三年生の生徒達にとっては、今年が最後のコンクールとして、これまで以上に練習に打ち込もうと、意気込んでいた方も多いかと思われるだけに、最後のコンクールの機会がこのようになくなってしまったことは、非常にショックだと思われます。

なお、今回の全日本吹奏楽連盟の発表は、あくまで「全国大会の中止」であり、地方大会については、主催する各支部や県などの連盟が、開催の可否について決定することとされています。
(上記朝日新聞社のお知らせ参照)

とはいえ、上述の新型コロナウイルス感染症対策の関係上、練習や大会そのもの開催の準備に時間が必要なこと、そして特に中学生や高校生の三年生にとっては、受験や就職の関係もあり、遅い時期のコンクールを実施することが時間的に難しいこと、加えて今年度のコンクール課題曲が、来年度のコンクールに持ち越されることも併せ持って考えると、今回の全国大会中止の決定を踏まえて、地方大会についても中止の決定を行うことになるのではないか、と思われます。



私自身、中学・高校時代に吹奏楽コンクールに出場したことがありました。
どちらも、それほど高レベルな演奏技術を持った学校ではなかったので、コンクール大会は、大阪府内の地区大会で、良くて銀賞どまり、という結果ではありましたが、とはいえコンクールに向けて練習してきたことが、演奏技術の向上に貢献してきたことは確かで、その後の秋のイベントでの演奏に活かすことができた、と思っています。

勿論、吹奏楽という音楽に、金賞・銀賞・銅賞といった評価が馴染むものではないのは確かですが、ただ、より良い賞を目指して練習することで、吹奏楽コンクールが、日本の吹奏楽の全般的なレベルアップに果たしてきた役割は、大きなものだ、と個人的には評価しています。

それだけに、今年度の吹奏楽コンクールの中止は、そういったレベルアップの機会を失った、という意味でも非常に痛手ではありますが、今回の新型コロナウイルス感染症が、特にこういった演奏活動では感染しやすい環境であることも考え、何より「感染しないこと」が重要であることを考えて、「苦渋の決断」を吹奏楽に携わる、また吹奏楽を愛好する皆が受け入れたいな、と感じた次第であります。



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