京阪電鉄では、交通系ICカードの利便性向上を図るため、ICOCAによる新たなポイントサービスの開始を発表しました。

ICOCA による新サービス「京阪電車ポイント還元サービス」の開始について|京阪電鉄

概要は以下の通りです。

【京阪電車ポイント還元サービスの概要】
●開始日:
2020年12月1日(火)初発より

●対象路線:
京阪線、鋼索線(大津線は除く)

●ポイントサービスの概要:
・ポイントサービスに登録したICOCAで、対象路線の同一運賃区間を1ヶ月間(1日〜末日)に11回以上乗車した際、11回目以降の利用に乗車運賃合計額の10%のポイントを付与。
・貯まったポイントは、翌月15日以降に自動券売機、チャージ機でポイントをチャージすることで、1ポイント1円として電車利用や買い物に利用可能。
・ポイントは、利用月から起算して3ヶ月後の月末までにチャージしなかった場合は失効。



併せて、京阪電鉄からは、京阪線、鋼索線における回数券の発売終了・利用終了についても発表されています。
京阪線・鋼索線における回数券の発売終了・利用終了について|京阪電鉄

概要は以下の通りです。

【京阪線・鋼索線における回数券の発売終了・利用終了について】
●発売終了日:
2020年12月30日(水)

●利用終了:
2021年3月31日(水)

●廃止対象券種:

普通回数券、時差回数券、土・休日割引回数券


いずれも詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



今回京阪電鉄から発表のあったICOCAによるポイントサービスですが、回数券の廃止と同時に発表があったことから分かるように、回数券からのサービスの移行、という意味合いになるかと思われます。

現在の京阪電鉄の回数券は、普通回数券(11枚つづり)の他、時差回数券(12枚つづり)、土・休日割引回数券(14枚つづり)が用意されています。
きっぷ(普通券・回数券)|きっぷ・ICカード|電車・駅のご案内|京阪電気鉄道株式会社

回数券の場合は、購入月の三ヶ月後の月末まで有効な上に、1枚ずつバラして使うことも可能であることから、定期券を購入するほどでもない利用の場合や、加えて土休日やオフピークの時間帯を利用する場合に重宝するきっぷであったかと思われます。

一方、「バラして使える」点から、主に金券ショップ等ではこれらの回数券を1枚単位でバラして発売しているケースも多く見られ、交通費を抑えたい人々には重宝されている一方、鉄道事業者にとってみれば、個別の旅客から得られる筈の収入が得られていない、という問題点もあったかと思います。

そういった点もあり、既にJR西日本では、特に割引率の高かった「昼間特割きっぷ」を廃止し、代替として「ICOCAポイント」を利用して「昼間特割きっぷ」設定区間に対して「時間指定ポイント」を設定して、通常よりも高めのポイント付与率を設定しています。
(参考)


今回の「京阪電車ポイント還元サービス」では、大まかな仕組みは上記の「ICOCAポイント」と類似なものとなっていますが、一方で、廃止となる「時差回数券」「土・休日割引回数券」の代替サービスとなるポイント還元が設定されていません。

また、回数券のように購入時点から割引が適用されるのではなく、一ヶ月単位で同じ運賃区間を11回以上利用した場合に初めて割引が適用される点から考えると、普通回数券と比較しても値上げになりそうな感じです。

以上の条件を踏まえて、例えば淀屋橋〜三条間(普通運賃420円)で、「ポイント還元サービス」の還元後の実質額と、現在発売中の各種回数券とで、どの程度の金額の差があるのかを試算したのが、以下の表となります。
keihan_icocapoint

毎月30回(15往復相当)までを比較してみましたが、いずれであっても現在の回数券よりも実質的に値上げになるのは確かなようで、更にこれまで時差回数券や土・休日割引回数券と比べると、かなりの実質値上げになりそうです。

もっとも、「回数券」自体、本来は「乗車回数の多い利用者に対する割引サービス」で設定されているものが、バラして利用できるが故に、「複数人グループでの割引利用」や「金券ショップでのバラ売り」といったように、本来の趣旨から逸脱した利用方法がなされている実態があります。
そういう意味では、交通系ICカードによるポイント付与による代替サービスが提供可能になったことから、「回数券」というきっぷが消えるのは、時代の流れといえるかと思われます。

また、これを機会に、利用促進を図るために大幅な割引を行っていた回数券についても、本来得られる収入の確保の観点から、ある程度の整理はこれまた仕方がないのかな、とも思っているのですが、ただ、土・休日割引回数券の代替サービスが無い点など、かなり思い切った制度変更を行ったなあ、とう印象を抱きました。

回数券制度に大ナタを振るった今回の京阪電鉄の改正ですが、他の関西地区民鉄にもこの流れが広まっていくのか、今後の動向にも注目したいな、と感じたニュースでありました。



●関連ニュースサイト:
京阪電車の回数券終了 12月からICOCAで独自の「ポイント還元サービス」開始 | 乗りものニュース
京阪、12月30日で回数券廃止、代替は「京阪電車ポイント還元サービス」: たべちゃんの旅行記「旅のメモ」



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