下記の記事でご紹介したように、7月3日(金)から熊本県南部を中心とした豪雨の影響により、JR九州やくま川鉄道、肥薩おれんじ鉄道では大きな被害が発生しました。


このうちJR九州の被害状況が、本日発表されましたのでご紹介します。

「令和 2 年 7 月豪雨」による当社の被災状況について|JR九州

概要は以下の通りです。

【JR九州の被害状況】
●久大本線:
豊後中村〜野矢間の「第二野上川橋りょう」が流失した他、橋脚の傾斜、トンネルや線路への土砂流入、盛土流出等、145件の被害。
現時点では日田〜向之原間の復旧見通しは立たず。

●肥薩線:
球磨川第1橋梁(鎌瀬〜瀬戸石間)、第二球磨川橋梁(那良口〜渡間)が流失した他、盛土、路盤、道床流出など65件の被害。
現時点では八代〜真幸間の復旧見通しは立たず。

●鹿児島本線:
(熊本地区)
玉名〜肥後伊倉間で大規模な土砂流入発生。
(鹿児島地区)
木場茶屋〜串木野、上伊集院〜広木間で大規模な土砂流入が発生。
計26件の被害

JR九州全体で345件の被害を把握

●被害状況:
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▲久大本線・鹿児島本線の被害状況

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▲肥薩線の被害状況

(いずれも上記発表資料(https://www.jrkyushu.co.jp/news/__icsFiles/afieldfile/2020/07/13/200713reiwa2nen7gatugouuhigaijoukyou.pdf)より引用)


詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



冒頭で紹介した過去記事でもご紹介したように、肥薩線では橋梁の流出等、大規模な被害が発生しましたが、久大本線でも広範囲に渡って甚大な被害が発生しました。
久大本線では、2017年(平成29年)の九州北部豪雨により橋梁流失の被害を受け、約1年掛けて復旧したところでした。
その復旧して2年後にまた、このように大きな被害による長期的な運休が発生する事態となりました。

まさに、豪雨被害を繰り返し受ける九州の鉄道を象徴してしまうような被害でありますが、しかし今回は被害箇所が145箇所と非常に多いことから、先の平成29年豪雨のような1年程度での復旧が可能なのかどうか、というところも気になります。


復旧で気になる、という点では肥薩線の状況も深刻であります。
被害箇所が65箇所にものぼる上、球磨川にかかる比較的長い橋梁の流失や、路盤の流失等、もはやそこに線路があったことが分からないくらいの被害の大きさが、JR九州の発表資料から明らかとなっています。

加えて先のブログ記事でもご紹介したように、肥薩線の利用者数は民営化直後の2割程度(8割減)となっており、そもそも鉄道として復旧することの社会的な是非が問われかねない程の利用者数となっています。


この区間は、かつては急行「えびの」「くまがわ」による博多・熊本と人吉・えびの・宮崎方面を結ぶ都市間輸送の利用が盛況でしたが、高速道路の整備による高速バス・マイカー等の利便性の向上により、これらの急行列車はいずれも廃止され、また沿線の過疎化により通勤・通学利用も非常に少なくなってしましました。
一方で、球磨川の風景を眺めながら乗車できる区間であることから、これを活かした「SL人吉」や「ななつ星in九州」、「かわせみ やませみ」といった観光列車が設定されてきており、もはや都市間輸送の回復が見込めない中、観光列車をメインに集客していた線区であったかと思います。

そういった路線が今回、このような被害を受けた中、沿線利用者が少なく観光利用が主体となっているこの路線が復旧できるだけの目的と財源が果たして用意できるのか。
決して悲観的な予想をしているわけではありませんが、昨今の事例を見ても、必ずしも復旧ありきではない、ということだけは念頭におきたいところです。

甚大な被害を前に、JR九州は元より、沿線自治体も、どのように復興していくのかさえも考えつかない段階だと思いますし、今は被災者の生活支援が第一だと思います。
しかし、時を経るにつれ、いずれそういう判断が沿線住民に求められる時期がやってくるのは間違いないですし、その時にどういう判断がなされるのか、についても今後触れていかないといけないな、とも感じたニュースでありました。




●関連ニュースサイト:
JR九州の豪雨被害 判明だけで345件 橋流失の肥薩線と久大本線は復旧の見通し立たず | 乗りものニュース



●関連ブログ:
Msykの業務(鉄道)日誌:急行「えびの」



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