JR北海道では、新型コロナウイルス感染症の影響により利用が依然として大きく減少しており、回復の見通しが立たないことに加え、ライフスタイルの変化により出張等のビジネス利用や夜間の利用減少が今後も続くことが予想されることから、利用状況にあわせたダイヤの見直しを検討していることを発表しました。

来春のダイヤ見直しについて|JR北海道

概要は以下の通りです。

●ポイント:
・利用者が大きく減少している列車を中心に、利用状況にあわせた減便・減車や定期列車の臨時列車化を検討
・都市間輸送をはじめ、札幌圏を含む全道的な普通列車の見直しを図る
・今後も鉄道事業を継続するために、固定費を含めた経費節減を図る

●実施概要:
【札幌〜函館間 特急「北斗」】
・定期24本→定期20本+臨時2本
・夜間帯で利用の少ない上下1本ずつの取りやめを
・更に上下1本ずつを臨時列車とし、年間30日程度の運休日を設定

【札幌〜旭川間 特急「カムイ」「ライラック」】
・定期48本→定期44本+臨時4本
・上下2本ずつを臨時列車とし、土休日と繁忙期などの利用の多い日に運転
(年間230日程度を運休)

【旭川〜網走間 特急「大雪」】
・定期4本→臨時4本
・「大雪」全列車を臨時列車とし、年間50日程度の運休日を設定
・札幌直通の特急「オホーツク」4本は現行体系を維持

【旭川〜稚内間 特急「サロベツ」】
・定期4本→定期2本+臨時4本
・「サロベツ」2本を臨時列車とし、年間30日程度の運休日を設定
・札幌直通の特急「宗谷」2本は現行体系を維持

【特急「北斗」「おおぞら」の減車】
通常の運転は5両とし、利用状況にあわせて増結を実施
(「北斗」現行7両→5両、「おおぞら」現行6両→5両)

【札幌圏の一部列車見直し】
・10本程度の列車を運転見直し、また、10本程度の列車を土休日運休

【普通列車の一部見直し】
・利用の少ない列車を見直し
対象線区・・・函館線(滝川〜旭川間)、留萌線、石北線、宗谷線(旭川〜名寄間)、根室線(滝川〜新得間、新得〜帯広間)

【利用の少ない駅の見直し】
利用の少ない36駅のうち、廃止または自治体による維持管理への移行を関係する自治体と協議中で、18駅程度を廃止の方向で協議中

●経費節減額:
年間約5.5億円
(減便・減車・・・年間5.0億円、駅の見直し・・・年間約0.5億円)

●実施時期:
2021年春予定


詳細は、上記発表資料をご覧下さい。

新型コロナウイルス感染症の影響により、通勤需要はある程度戻りつつありますが、観光や出張の需要は、利用者の回復には相当の時間がかかるものと考えられます。
加えて、今回の新型コロナウイルス感染症を機に、リモートワークやWeb会議といった、移動を伴わない仕事のスタイルが一気に普及したことから、出張等のビジネス利用が、従前のレベルに戻ることは恐らく無いのではないか、と考えられます。

そんなこともあり、来春のダイヤ改正では、通勤・通学列車は元より、これまで各鉄道事業者の収益源でもあった特急列車等の都市間輸送等について、大規模な見直しが行われるのではないか、という予想もされています。


そんな中本日発表のあったJR北海道のダイヤ見直しは、まさにその予想が具現化されそうな内容、といえるものでありました。

特に見直すのは、都市間輸送を担う特急列車でして、札幌から各方面へ向かう道内特急列車のうち、帯広方面の「とかち」と、室蘭方面の「すずらん」を除く全ての系統で、臨時化を含む減便あるいは減車が実施されることとなります。

目立つところでいえば、旭川〜網走間「大雪」と、旭川〜稚内間「サロベツ」の臨時化で、「大雪」は全列車、「サロベツ」は2往復のうち1往復が臨時化されます。
ただ、臨時化されるとはいっても、「大雪」は年間50日程度(月4日程度)、「サロベツ」は年間30日程度(月3回程度)の運休を実施することでありますので、臨時化というよりも、毎週あるいは月数回の運休日の設定、という捉え方がより実態に合いそうです。

一方、「北斗」については、2016年3月の北海道新幹線開業に合わせて、現行の12往復24本体制となりましたが、このうち1往復は廃止、1往復は臨時化することとなり、定期列車としては10往復となります。
(参考)
【JR北海道】平成28年3月ダイヤ改正を発表。北海道新幹線開業の他「スーパー北斗」増発「スーパーカムイ/エアポート」の直通運転取りやめなどを実施 : 阪和線の沿線から
ただこの臨時列車も、運休日は30日程度となっており、年間のうち9割程度は11往復の運行が維持されそうな感じです。
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▲新函館北斗駅に停車中の特急「スーパー北斗」(現:「北斗」)
北海道新幹線開業後、12往復の体制が維持されてきましたが、今回の見直しで定期10往復、臨時1往復(月3回程度運休)に減便されることが検討されています。


特急列車の減便・ダイヤ改正に目を奪われがちですが、普通列車の見直しについても、札幌圏だけでなく、留萌線・石北線・宗谷線といった路線でも見直しが検討されることとなっています。
維持困難線区のうちバス等への転換を地元と協議している、いわゆる「赤線区」の一つである留萌線でも、今回列車本数の見直しが検討されており、どの程度の本数が見直されるのか、気になるところです。


JR北海道では、上記の過去記事でご紹介した、2016年3月の改正に加え、その翌年の2017年3月のダイヤ改正で、利用の少ない列車の見直しを相当実施してきました。
(参考)
【JR北海道】平成29年3月ダイヤ改正を発表。札幌〜旭川・稚内・網走間の特急運行体系を変更。 : 阪和線の沿線から

しかし、これらの見直しから4年で、更に大幅な見直しを実施せざるを得ないというところに、新型コロナウイルス感染症の影響の大きさを感じざるを得ないところです。


詳細な見直し内容は、今後発表されるものと考えられますが、車両的な面で言えば、特急列車の減車・減便により、老朽化した183系気動車の置き換えが進むのかどうか、といったところも気になるところです。
また、旭川地区の普通列車も減便が検討されていることから、この地区の一般型気動車にも、何らかの動きがあるのかも知れませんので、これらも含めた見直しの詳細が発表されれば、改めてご紹介したいと思います。




本当ならば、新型コロナウイルス感染症の影響が収束すれば・・・といいたいところですが、Web会議等の「新しい生活様式」が、公共交通機関による移動を忌避する方向にならざるを得ないところを考えると、元に戻ることは難しいのかな、と考えられます。
そんな中、各社がどのような見直しを実施していくのか、決して明るい話題ではありませんが、大事な話題でもありますので、可能な限りフォローしていきたいなと感じています。



●関連ニュースサイト:
JR北海道2021年春減便へ 特急「大雪」は全便臨時化 札幌圏も対象 18駅廃止も | 乗りものニュース
JR北海道が来春ダイヤ見直し、特急「大雪」臨時列車に 経費節減額は年間約5.5億円 | 鉄道ニュース | 鉄道チャンネル
JR北海道、来春改正でダイヤ合理化 特急「大雪」は全便臨時化へ - TRAICY(トライシー)
極端に利用が少ない18駅を廃止へ…特急は『大雪』をすべて臨時化 JR北海道2021年春のダイヤ見直し | レスポンス(Response.jp)
JR北海道、2021年春に列車本数の削減を検討 - 鉄道コム
JR北海道,2021年春にダイヤの見直しを検討|鉄道ニュース|2020年10月16日掲載|鉄道ファン・railf.jp



●関連ブログ:
JR北海道の2021年春ダイヤ改正はかなり厳しい: たべちゃんの旅行記「旅のメモ」



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