来年春のJRグループダイヤ改正の内容について発表がありましたが、続いてご紹介するのは、JR九州です。

ダイヤの見直しについて|JR九州

概要は以下の通りです。

【新幹線】
●「さくら」「つばめ」運転本数や時刻の見直しを実施
・博多〜熊本間の「つばめ」「さくら」を取りやめるとともに、一部「さくら」を「つばめ」への振り替え、「つばめ」の運転区間延長により、利便性を確保。

【特急列車】
●「ソニック」
・データイム時間の12本を臨時列車化。

●「かもめ」
・1本を取りやめるとともに、3本を臨時列車化。

●「にちりん」「ひゅうが」
・データイムの「にちりん」のうち、4本を取りやめ、また4本を臨時列車とする。
・データイムの「ひゅうが」については、6本を設定するが、このうちうち4本は利用者が多く見込まれる日は「にちりん」として運転。
・夕方以降の「ひゅうが」2本の運転取りやめ

●「きらめき」
・早朝、夕方以降の5本(休日運転除く)を取りやめ

●「かいおう」
・早朝、夜時間帯の2往復を取りやめ

●「きりしま」
・宮崎〜鹿児島中央間1往復、宮崎〜都城・西都城間1往復の計4本を取りやめ

●「有明」
・運転取りやめの上、大牟田〜鳥栖間の快速を運転。鳥栖駅で特急「かもめ」に乗り換え可能。

【快速・普通列車】
●各都市圏で深夜帯の運転本数・運転区間の見直し

●福北ゆたか線:
・博多〜篠栗間のデータイムを1時間3本(現行4本)とし、快速列車は博多〜篠栗間各駅停車に。
・直方〜黒崎間のデータイムを1時間2本(現行2〜3本)とする。


詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



今回のJR九州のダイヤ改正では、発表資料のタイトルが「ダイヤを見直します」とあることから分かるように、全般的な減量が実施されることとなっています。

それだけでは、JRグループ他社も同様なところがあるのですが、今回のJR九州の発表では、こういったダイヤ改正の発表では異例の、「社長メッセージ」が掲載されているところといえます。
2021 年3 月13日のダイヤ見直しについて(社長メッセージ)|JR九州

上記メッセージの要約は以下の通りです。
・JR九州ではこれまで九州新幹線を中心とした交通ネットワークの充実を図りながら、地域の活性化と鉄道の利用促進に努めてきた。
・しかし「令和2年7月豪雨」被災に加え、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い利用者が大幅に減少した結果、今年度の第2四半期連結決算は、営業収益が対前年58.5%とこれまで経験したことのない減収になるなど、非常に厳しい数字になった。
・今後の人の動きや消費などの動向がコロナ前まですぐに戻ることは想定できず、「会社発足以来の危機」が引き続き継続すると言わざるを得ない。
・そこで2021年3月のダイヤ見直しでは、利用状況を十分踏まえた上で、利用者が減少している列車の本数・運転区間の見直しを実施する。
・今後も、これまでと同様、利用者等の意見に耳を傾け、時刻の修正や車両の増結、運転区間の延長等に柔軟に対応し、可能な限り列車ダイヤに反映させていく。


異例としか思えない社長メッセージが発出されている理由についてですが、私が想像する一つの要因としては、2018年3月に実施したダイヤの見直しにおいて、普通列車を中心に大幅に削減した際、沿線地域への丁寧な説明が無かったりした等、少なくない批判を地域から受けたことが考えられます。

その際の反省を踏まえ、今回の更なる見直しにおいては、見直しに至る背景を丁寧に説明するとともに、見直しに至る線区・列車については直近の利用動向のデータに基づき、削減を避けることができないことを客観的に示す等、3年前の減量改正時の反省を踏まえた内容としているのではないか、ということを考えた次第です。



見直しの内容を見ますと、深夜時間帯の削減に加え、新幹線・特急列車でも全般的に見直しが行われていることが分かります。
「ソニック」については日中は半数が臨時化されたり、「にちりん」についても、宗太郎越えを含む大分〜延岡間は2時間おきの運転になる等、相当思い切った削減内容と思われます。


そんな中、鉄道ファン的に関心を集めるのは、現在大牟田発博多行きとして平日朝に1本だけ運転されている「有明」の運転が取りやめになるということでしょうか。
PC091286
▲特急「有明」(2007年12月・大牟田駅にて撮影)

「有明」という列車名は、元をたどると門司港〜熊本間の準急列車に命名された名称とのことでした。
その後、岡山〜熊本間の急行列車に使用された後、1967年のダイヤ改正で、門司港〜西鹿児島(現・鹿児島中央)間の特急列車に命名されました。
以降は、鹿児島本線を走る特急列車として、山陽新幹線博多開業前は本州直通列車を補完、同新幹線開業後は新幹線連絡に加え、鹿児島本線の沿線都市を結ぶ、九州地区を代表する特急列車として活躍しました。

国鉄民営化後も「有明」は引き続き九州を代表する特急列車として位置づけられ、民営化直後の1988年3月には新型車両「ハイパーサルーン」783系も真っ先にこの「有明」に投入されました。

最盛期には一日50本超の本数を誇った「有明」ですが、1992年7月には、西鹿児島発着の列車が「つばめ」となり、「有明」は熊本・水前寺(後に肥後大津・光の森)発着の列車として、「つばめ」を補完する役割を担うこととなりました。

とはいえ、引き続き福岡と熊本の都市間輸送を担っていたわけですが、2011年3月の九州新幹線全線開業に伴い、その役割は九州新幹線の「さくら」「つばめ」に移り、以降は早朝・深夜の通勤特急的な役割に変わり、列車本数も限られたものとなりました。

それ以降も「有明」の本数は徐々に減り、2018年3月の改正では、遂に上り1本のみという、現在の形態にまで減少し、まさに「風前の灯火」ともいえる状態となりました。


もはや消滅は時間の問題、と思われていた「有明」ですが、遂に2021年3月の改正で廃止となり、鹿児島本線の特急列車としておよそ半世紀に渡る歴史に、幕を閉じることとなります。


個人的にも、この「有明」には、485系・783系・787系と歴代の車両に乗車したことがありました。
特に1989年12月には、「スーパー有明」という名称で、停車駅を絞った速達版の「有明」に乗車した際、783系「ハイパーサルーン」の斬新さに驚くほかなかった印象がありました。
当時はカフェテリアもついていて、朝食をここで頂いた記憶もありましたが、そんな鉄道旅行の楽しみをまだ中学生自分の頃の自分に経験させてくれた、そんな縁のある列車でもありました。


当時非電化であった豊肥本線に、DE10型ディーゼル機関車とヨ8000車掌車を改造した電源車を連結した乗り入れや、キハ183系1000番台「オランダ村特急」との動力協調運転による併結など、車両メカニズムの点からも面白い事例が見られた「有明」の歴史は終わりますが、その活躍は永遠にファンの記憶に残ることだと思われます。



ひとまず、JR九州の改正内容までご紹介し、その他のJRグループ各社の改正内容は、本日夕方以降、改めてご紹介できればと思っています。




●関連ニュースサイト:
名門特急「有明」引退へ 九州の顔としても走った半世紀 実は初代「スーパー」特急 | 乗りものニュース
JR九州,3月13日にダイヤの見直しを実施|鉄道ニュース|2020年12月18日掲載|鉄道ファン・railf.jp
特急「有明」が廃止、JR九州の2021年春ダイヤ改正 - 鉄道コム
JR・私鉄各社、2021年3月13日ダイヤ改正(13) JR九州「有明」廃止「指宿のたまて箱」臨時列車化、特急列車見直し | マイナビニュース



●関連ブログ:
【JR九州】『有明』、廃止へ。70年の歴史に幕。 | 鉄道プレス
【JR九州】2021年3月ダイヤ改正にて特急「有明」廃止へ - kqtrain.net(京浜急行)



↓↓鉄道系ブログ・ニュースポータルサイト「鉄道コム」はこちらをクリック↓↓
鉄道コム