新型コロナウイルス感染症対策として、いま各自治体で進められている「ワクチン接種」。

既に医療従事者等や65歳以上の高齢者の方々への接種が進んでおり、今後それ以外の方々への接種が進められることとなっています。

そんな中、全国的な接種の加速化を図るため、企業・大学等の「職域」単位での接種を可能とする「職域接種」が、6月21日(月)から開始されることが、厚生労働省から発表されています。

職域接種に関するお知らせ|厚生労働省

報道等によれば、既に日本航空、全日空といった航空会社では、既に前倒しで実施されているようであります。
日航・全日空、ワクチン職域接種開始へ=企業が21日以降本格化 | 乗りものニュース

この職域接種ですが、上記厚労省資料によりますと、概ね以下の要件を満たす企業等により実施されることとなっています。

【使用するワクチン】
モデルナ社製(既に各市町村で使用されている「ファイザー社」とは接種間隔等が異なる)

【実施形態】
・企業単独
の他、
・中小企業が商工会議所等を通じて共同実施
・下請け企業、取引先を対象に含めて実施
・大学等が学生も対象に含める
等も可能

【接種規模】
同一の接種会場で最低2,000回(1,000人×2回接種)を基本

【接種会場や医療従事者の確保】
自治体による接種に影響を与えないよう、会場や医療従事者等は企業や大学等が自ら確保

【接種費用】
接種にかかる費用は、予防接種法に基づき支給

【接種券】
接種券が届く前でも接種可能。
この場合、接種券が発送された後に企業や大学が本人から回収して予診票に添付、請求を実施

shokuiki
▲新型コロナウイルスワクチン職域接種の開始について(厚労省Webサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_shokuiki.html)より引用)


つまり、現在市町村(一部都道府県、防衛省)が主体となって行っている医師や看護師、会場の確保や接種対象者の取りまとめなど、そして実際の接種について、これらを企業等が代わって実施することで、接種のスピードアップを図ることが、この「職域接種」の目的であります。

そのため、職域接種の要件に「自治体による接種に影響を与えない」ことが明記されています。

職域接種に関して言えば、1,000人以上の規模が対象となることから、「大企業優遇」という批判も聞こえてきますが、元来「住民接種のスピードアップ」が目的であること、そして職域接種が進むことで、本来他の住民に加わって接種を行う筈だった接種対象者が職域接種に廻ることにより、結果として住民接種に余裕が生じるため、職域接種の対象企業でない住民の方々にも、大きなメリットがあるのではないか、と思われます。




さてこの職域接種ですが、上述のとおり1,000人以上の規模での実施が要件となっています。
また医療従事者や会場の確保も企業等が自ら実施する必要がありますが、鉄道事業者でも、大手事業者を中心に、これらの要件を満たしていることがわかります。

従業員規模は、単体は勿論、関連会社を含めると相当な規模になりますし、また、医療従事者についても、事業者での定期検診や事故等に備えて、医師や看護師を常駐させているところもあるでしょう。

また、JRグループに限って言えば、旧国鉄時代に設けられた職員対象の「鉄道病院」を引き継いだ医療機関を所有していることもあり、グループ内での医療従事者の確保という点では、目処が付きやすい、といったところもあるでしょう。

加えて、鉄道事業者自体、自治体も含めた我が国のワクチン接種が一日でも早く進むことにより、利用者の回復への希望が見えること、そして、何より従業員の、しかも不特定多数の利用者と接する機会の多い現場(駅・列車)の従業員の感染リスクを抑えることができる点からでも、積極的に接種を進めたいところといえるでしょう。



勿論、そういったことは各鉄道事業者も認識しているところで、早速各事業者がこの「職域接種」の実施を発表しています。
ここでは、各鉄道事業者が自社Webサイトで発表している「職域接種」の概要について、ご紹介したいと思います。

【関西地方】
○JR西日本
6月社長会見:営業・輸送概況、リアルタイム混雑状況の提供開始:JR西日本
・6月21日から大阪で、7月以降はエリア内各地域に順次拡大予定
・指令員、駅、乗務員、保守メンテナンス等の鉄道運行を最前線で支える社員から実施
・大阪の会場で1日50人から開始、7月以降は1日400人で実施予定

○近畿日本鉄道
新型コロナウイルスワクチンの職域接種の実施について|近鉄グループホールディングス
・接種開始予定日:
6月21日(月)
・接種予定場所:
近鉄スポーツセンター(奈良市)、近鉄グループ総合健康管理センター(大阪市、四日市市)
・接種対象者:
第一弾として、近鉄、伊賀鉄道、養老鉄道、四日市あすなろう鉄道の乗務員・駅員・技術係員等約8,000名

○Osaka Metro(大阪メトロ)
新型コロナウイルスワクチンの職域接種について|Osaka Metro
・接種開始予定日:
7月1日(木)
・接種予定場所:
大阪メトロ本社(大阪市西区)
・接種対象者:
大阪メトログループ約6,700人
(大阪市高速電気軌道、大阪シティバス、大阪メトロサービス、大阪メトロアドエラ、大阪地下街)

【中部地方】
○名古屋鉄道
新型コロナウイルスワクチンの職域接種の実施について|名古屋鉄道
・接種開始予定日:
6月21日(月)
・接種予定場所:
同社会議室(名古屋市内)
・接種予定人数:
約18,000名(1日あたり300名の接種を想定)
・主な接種対象者:
同社の鉄道運行を担う従業員、名鉄グループのバスやタクシーなど公共交通の運行を担う従業員

【関東地方】
○東急
東急病院で新型コロナワクチンの「職域接種」を6月21日(月)より開始します|ニュースリリース|東急株式会社
・接種開始予定日:
6月21日(月)
・接種予定場所:
東急病院(東京都大田区)
・接種対象者:
25,000人(同社グループの介護、鉄道・バス、スーパーマーケットなどのエッセンシャルサービスに従事する従業員の希望者を対象)

○西武鉄道
西武グループにおける新型コロナウイルスワクチンの職域接種について|西武ホールディングス
・接種開始予定日:
6月21日(月)以降ワクチンの準備等が整い次第実施
・接種予定場所:
西武グループ合同接種会場(池袋・東池袋・高輪・所沢)
・接種対象者:
西武グループ全従業員の希望者など(公共交通事業、ホテル・レジャー事業に従事する従業員の希望者を先行して実施)18,000名

○東武鉄道
新 型コロナウイルスワクチンの職域接種 の実施 について|東武鉄道
・接種開始日:
6月21日(月)
・接種予定場所:
同社診療所や社有施設で実施
・接種対象者:
同社及びグループ従業員約10,300名が対象。
乗務員や駅係員から接種を開始し、鉄道事業従事者以外の従業員、バス乗務員等のグループ各社の従業員への接種も順次実施


【その他地方】
○JR北海道
緊急事態宣言解除後の対応の考え方について|JR北海道
・接種開始予定日:
7月1日(木)以降、準備でき次第開始
・接種会場:
本社ビル内会議室
(支社管内の所属社員等については、検討中)
・接種対象者:
同社社員等(列車の運行及び接客業務に従事する者が所属する職場から優先的に実施)
・接種規模:
当初は本社管内の4,000人規模とし、その後自治体による接種の状況等を踏まえて検討

○西日本鉄道
西鉄グループにおける新型コロナワクチンの職域接種について|西日本鉄道
・接種開始予定日:
6月23日(水)以降、準備が整い次第順次
・接種対象者:
バス・鉄道事業に従事する従業員から優先的に行い、接種状況をみながら対象者を拡大予定
・接種予定数:
約12,000人分


上記の他にも、報道等によれば、上記以外にもJR東日本、JR東海、JR九州、阪急阪神ホールディングスなどの鉄道事業者が職域接種を実施することが報じられています。
JR西、コロナワクチン職域接種を21日開始=阪急阪神HDも | 乗りものニュース
JR九州、5000人に職域接種へ=西鉄も、乗務員ら優先―コロナワクチン | 乗りものニュース


職域接種の実施が今月初めに急に発表されたことから、各事業者では急ピッチで準備を進めていることと思われます。
それだけ、自社のみならず社会全体としての新型コロナウイルス感染症の影響からの回復を切望していることがわかりますし、各社とも現場の従業員を優先に、またグループ事業者も含めての実施もあり、自社の持てる人的・物的資源を総動員してワクチン接種を進めていこう、という姿勢を感じた次第です。


ワクチン接種自体は、接種した本人は勿論、接種がまだの人にも社会的な効果があることから、このような形であっても早く進めることによる社会的なメリットは非常に大きいものがあります。
先にも記しましたが、この職域接種が「大企業優遇」とかいう、誤った捉え方はすべきではありません。


私自身も、年齢・職種がどうであれ、一人でも多くの人が、一日でも早くワクチン接種が進むことが、鉄道をはじめとした公共交通機関が、このコロナ禍で受けた影響から回復することのできる、現在取れる唯一の道だと思っています。

これらの接種が迅速に、かつ確実に進むよう、鉄道ファン、公共交通を応援する者として、そしてこのコロナ禍が早く収束することを願う国民の一人として、応援したいと思います。




↓↓鉄道系ブログ・ニュースポータルサイト「鉄道コム」はこちらをクリック↓↓
鉄道コム