JR北海道が単独では維持困難な線区(輸送密度2,000人未満)のうち、持続可能な交通体系とするためにバス等への転換を進めていく線区である輸送密度200人未満の線区のうちの一つ、根室線・富良野〜新得間。

この線区について、去る1月28日に沿線市町村と北海道、JR北海道の担当者による対策協議会において、廃止の方針が決定されたことが、各種報道で明らかになりました。

根室線富良野〜新得間が廃止へ。映画『鉄道員』舞台、幾寅駅も終幕に | タビリス

JR根室線、一部区間で事実上の存続断念 バス転換へ - 産経ニュース
旅客収入が低迷し、台風被害で不通になっているJR北海道の根室線富良野―新得間(81・7キロ)について、沿線4自治体の首長と同社がバス転換の議論を進めていくことで一致したことが29日、関係者への取材で分かった。事実上の存続断念。各自治体は2月以降、住民説明会を開き地元の理解を求めていく。
(上記産経新聞記事より引用)


JR根室線の存続、沿線4市町村が断念 バス転換の協議へ:朝日新聞デジタル
 JR北海道が廃止・バス転換の方針を打ち出している根室線の富良野―新得間について、沿線4市町村と道、JR北の担当者による会議が28日、富良野市であり、鉄路存続を断念し、バス転換の協議に入ることを決めた。4市町村は今後、住民説明会で理解を求めるという。

 会議には「根室本線対策協議会」(会長=北猛俊・富良野市長)に加盟する沿線7市町村のうち、該当区間にある富良野、南富良野、新得、占冠の4市町村長らが参加した。非公開で行われ、終了後に北市長が取材に応じた。

 北市長によると、会議では利用者が減少傾向で、観光業者による活用も難しいという現状認識で一致。鉄路存続でJRが求める年10.9億円の費用を4市町村で負担するのは困難であり、存続断念の結論を出したという。一方、JRはバス転換した場合、18年間にわたって運営を支援するなどの条件を示したという。
(上記朝日新聞記事より引用)


報道等によりますと、鉄道として存続させる場合、老朽化した設備の維持更新に今後20年間で合計22億円かかるほか、路線維持に別途年間約11億円の費用が必要となっています。
しかし、沿線市町村でこれらの費用を負担することが困難であることから、今回廃止を受け入れることとなった、とのことです。

沿線市町村では今後、住民説明会などを実施し、住民の理解を求めていくこととしている、とのことです。



この根室線・富良野〜新得間は、かつては道央と道東とを結ぶメインルートでありました。
しかし、1981年(昭和56年)に日高山脈を貫き、道央と道東をショートカットする新路線「石勝線」が開業して以降、メインルートとしての役割を終え、専ら富良野・新得エリアの地域輸送が主な役割となりました。

そのため、輸送実績も非常に少ない状況で、冒頭に記したように、バス等の輸送手段に転換していく基準である200人にも満たない水準(2015年度の実績で152人)となっていました。



加えて、2016年8月の台風により被害を受け、鉄道として復旧させる際には、この被災区間の復旧費用も別途必要となっている状況でありました。

そんな中、沿線市町村も当初はバス転換反対の姿勢を見せてはいたものの、上述の費用負担が困難なこと等から、今回廃止に向けた方針を確認した、とのことでありました。


上述のとおり、かつては道内を東西に結ぶメインルートであり、その名残は長い待避線やホームなどに感じ取ることができます。
しかし、石勝線開業や沿線人口の減少等、路線を取り巻く環境の大きな変化の前には、もはや存続という選択肢は無かったのかも知れません。



今回廃止が決定的となった根室線・富良野〜新得間は、2016年7月に一度だけ乗車しました。
乗車した時期からもお分かりいただけるように、台風被害による一部区間不通となる直前でありました。

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▲富良野駅に停車する快速「狩勝」とそのサボ。
旭川〜富良野〜新得〜帯広を結ぶ快速列車でありました。

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▲途中の山部駅で、上り列車との待ち合わせ中にに撮影したシーンです。

このように、1両編成の列車に比べて待避線が非常に長いのひゃ、かつて特急「おおぞら」や貨物列車等、長大編成の列車が行き交っていた名残、といえるでしょうか。

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▲新得駅での発車案内。
根室線・滝川方面への列車案内が再び見られることは、どうやら叶わなさそうであります。


この区間では、映画「鉄道員」のロケ地となった幾寅駅や、テレビドラマ「北の国から」第1話で主人公の黒板家が降り立った布部駅があり、ドラマ・映画のファンにとっても印象深い駅でありましたが、これらの駅も廃止されることになりました。

特に幾寅駅は、2016年8月の台風被害以降、運休が続いていた区間の駅でありました。
映画ファンにとっても、列車の運転再開を心待ちにしていた方も決して少なくなかったと思われますが、残念ながらその願いも叶わないことが確実になった模様です。


一方、今後廃止にむけた手続きがどのように進められていくのか、という点も気になるところです。
鉄道路線の廃止には、廃止1年前までの鉄道事業廃止届出が必要です。
ただ関係者の意見聴取の結果、廃止の繰り上げが認められれば、1年以内での廃止も認められることとなっています。

そのため、この区間の廃止については、協議や意見聴取が進めば、さほど時間がかからずに廃止、ということにもなり得ることから、せめて現在鉄道での運行が続いている富良野〜東鹿越にだけでも乗車したいという方も、なるべく早めに現地を訪問する必要はありそうです。



今回の根室線・富良野〜新得間の廃止方針が定まったことから、残る「輸送密度200人未満」の線区は、留萌線・深川〜留萌間を残すのみとなりましたが、こちらについても、今後どのような方針が示されるのか注目しつつ、動きが出てくれば当ブログでもご紹介していきたいと思います。



【関連ブログ】
根室線富良野−新得間、地元が鉄路存続を断念: たべちゃんの旅行記「旅のメモ」



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