JR西日本及びJR東海では、両社が提供する東海道・山陽新幹線のネット予約・チケットレスサービス「EXサービス」について、新型コロナウイルス感染拡大による利用者の減少に伴い、山陽新幹線を中心とした一部区間での発売額の見直しを発表しました。

EXサービス取扱商品の発売額の一部見直しについて:JR西日本
EXサービス取扱商品の発売額の一部見直しについて

概要は以下のとおりです。

【発売額見直し商品】
・EX予約サービス(61区間)
・EX予約サービス往復割引(2区間)
・e特急券(61区間)
・EX早特

【実施時期】
EXサービスの九州新幹線へのサービスエリア延伸日(2022年春予定)に合わせて実施

【発売額見直し例】
・新大阪〜博多間(EX予約サービス・普通車指定席・おとな1名片道)
[見直し前]
13,490円


[見直し後]
14,600円

(+1,110円)

(参考)
割引前の運賃+料金(通常期・普通車指定席・「のぞみ」利用)
15,600円


詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



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▲新岩国駅を通過するN700系「のぞみ」。
山陽新幹線の一部区間で、EXサービスの発売額が値上げとなります。
ここ新岩国駅発着でも、京都・新大阪・新神戸・博多発着の発売額が値上げとなります。


東海道・山陽新幹線のネット予約「EXサービス」は、現在では会員制カードが貸与される「エクスプレス予約」に加え、ICOCA・Suica・TOICA等の手持ちの交通系ICカードに紐付けて利用できる「スマートEX」も普及し、現在ではJR東海での指定席販売に占めるネット予約の比率は半数近くに達しているとのことであります。
(出典:JR東海「統合報告書」2021 P29
https://company.jr-central.co.jp/ir/annualreport/_pdf/annualreport2021.pdf

特に山陽新幹線(新大阪〜博多間)管内では、航空機に加え自家用車、高速バスといった競合する交通機関との競争力強化の観点もあってでしょうか、東海道新幹線(東京〜新大阪)管内よりも高い割引率でのサービス提供が続いてきました。

一例を挙げますと、割引前の運賃・料金が同額の東京〜新大阪(東海道新幹線)と新大阪〜小倉(山陽新幹線)におけるEX予約サービス(普通車指定席・おとな1名片道・「のぞみ」利用)を比較すると、以下のとおりとなります。
【割引前運賃・料金合計】
東京〜新大阪 14,720円
新大阪〜小倉 14,720円

【現行EX予約サービスの発売額】
東京〜新大阪 13,620円(▲1,100円)
新大阪〜小倉 12,610円(▲2,110円)
(カッコ内は割引前運賃・料金合計額からの割引額)



一方、一昨年からの新型コロナウイルス感染症の影響は、JR西日本に限らず鉄道事業者各社の経営に大きな影響を与えています。
また、コロナ禍により普及したオンライン会議等の影響で、仮にコロナが収束したとしても、従来の出張等の利用は大きく戻らないことも容易に予想できます。

そんな中、収益性の改善が求められているところ、このように高い割引率が続いている「EX予約サービス」の見直し、というのは避けられないのではないかと考えられます。

見直し後の東京〜新大阪間及び新大阪〜小倉間のEXサービス発売額及び割引前運賃・料金合計からの割引額は以下のとおりです。
【割引前運賃・料金合計】
東京〜新大阪 14,720円
新大阪〜小倉 14,720円

【見直し後EX予約サービスの発売額】
東京〜新大阪 13,620円(▲1,100円)
新大阪〜小倉 13,720円(▲1,000円)
(カッコ内は割引前運賃・料金合計額からの割引額)

このように、割引額でみれば、むしろ東海道新幹線管内よりも縮小していることが分かります。

一方で、今回EXサービス発売額が見直されるのは、新大阪発着でみると東広島以遠の、300km以上の区間が対象となっています。
これらの区間では、競合交通機関のうち、自家用車及び高速バスに対しては、スピードの点から競争力を有していることに加え、航空に対しても搭乗・乗継等を合わせた総所要時間でみれば遜色なく、現に京阪神〜福岡県間のJR対航空のシェアを比較すると、JRが87%、航空が13%と既にJR(主に山陽新幹線)が大きく上回っている現状があります。

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▲京阪神〜福岡県間のJRと航空のシェア(薄水色がJRのシェア)
500km超の本区間において、JR(主に山陽新幹線)は9割近いシェアを有しています。
(出典:データで見るJR西日本2021(https://www.westjr.co.jp/company/info/issue/data/pdf/data2021_10.pdf))

300km未満の区間では、新幹線駅へのアクセス等を含めると、自家用車及び高速バスにも一定の競争力があることから、これら値上げによる利用者逸走が懸念される距離帯については据え置きし、逆に新幹線に競争力が有する区間では値上げによる収益確保、というのが今回の価格見直しの考え方、というのが見えてくるように思えます。


いわば「これまでが大盤振る舞い」ともいえるのかも知れませんが、コロナ禍前までは決して手が付けられなかったであろう、割引商品の値上げが、当たり前のように発表されるのも、ここまで状況が変わるとは、と感じています。

今後も、割引きっぷ・商品については、より収益性の高い見直しが実施されるものと思われますし、ベースとなる普通運賃・料金についても、抜本的な見直しがあり得るものと考えられますので、そういった情報もこまめにご紹介できればと思っています。




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