下記記事でご紹介したように、南海電鉄では2023年10月を予定に運賃改定(値上げ)を実施するべく、国土交通大臣宛に申請をおこなったことを発表しました。


この運賃値上げにおいて、同社では「鉄道事業の持続性を高めるための安全・安定的な輸送基盤の強化」と、「社会的要請(移動ニーズ、沿線価値向上、デジタル技術の実装)に応えるサービスの高度化」の観点から、必要とされる価値を提供するための計画的投資を、今回の値上げにおいて実施することとしています。

その設備投資計画の中でも、鉄道ファン的に注目しておきたい内容がありましたので、この記事でご紹介したいと思います。

【新たな観光特急車両の導入】
・2025年度を目標に新たな観光特急列車の導入を計画。
・高野山へのアクセス手段としてだけでなく、「乗車すること」自体を目的化できるサービスの提供を追求。
・個人客から旅行代理店ツアーにも利用しやすい運行ダイヤの設定や、車内での飲食サービスの提供も検討。
・投資額:約23億円
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(南海電鉄発表資料(https://www.nankai.co.jp/library/company/news/pdf/221028.pdf)より引用)


【2000系ワンマン改造】
・支線で運用しているワンマン車両について、現在使用している2200系から、2000系車両をワンマン改造して置き換えを進める。

【南海本線でのワンマン運転】
・各支線で実施しているワンマン運転について、2024年度を目標に南海本線の一部区間に拡大するべく検討を進める。

【新たな利用サービスの拡充】
・2023年にPiTaPa・ICOCAでの乗車を対象とした新たなポイントサービスの導入を予定。
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(南海電鉄発表資料(https://www.nankai.co.jp/library/company/news/pdf/221028.pdf)より引用)


詳細は、上記発表資料及び当ブログ記事をご覧ください。



先の記事で南海電鉄の運賃値上げ申請についてご紹介しましたが、その値上げによる原資を元に、今後どのような設備投資を実施していくのか、ということも今回発表されています。

当記事で取り上げたのは、その中でも鉄道ファンや当ブログ的にチェックしておいた方がよいのではないか、と思える内容をピックアップしてみました。



【新たな観光特急車両】
まず「新たな観光特急車両」ですが、現在高野線で運行している「天空」は、2009年の運行開始で既に13年が経過している上に、改造元の車両となる2200系は1960年代に製造されていることから、老朽化は否めません。

今回その「天空」の後継、という位置づけとも考えられる、「新しい観光列車」を2025年度を目標に投入するとのことです。
サービス内容については、「車内での飲食も検討」とあるように、現在の「天空」以上に車内での滞在時間が長くなるようなサービスを提供するものと思われます。
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▲橋本駅に停車中の「天空」2200系。


また、投入車両数は明記されていないものの、投資額が約23億円というボリュームから考えると、既存車両の改造ではなく新造車両の投入、ということが考えられそうです。
(4両編成の場合でも1両5億円程度)

また運行区間も、高野山へのアクセス手段に特化しないことを検討していることから、空港線や加太線等、様々な区間を運行することも予想されそうです。

世界との玄関口である「関西空港」と、「高野山」「加太」等様々な観光資源を有する南海電鉄沿線を結ぶ観光特急として、国内外の観光客の注目を集める列車になることを期待したいところです。



【2000系の動向】
さて、今回の投資計画では「2000系のワンマン化改造」も明記されています。

2000系は、1990年から高野線の平坦区間と勾配区間を直通できる車両として投入されました。
その後、高野線のダイヤ改正に伴い余剰が発生したことから、一部は南海線の普通列車にも使用されています。

上述のとおり、高野線を全線走行できる車両である一方、17mの短い車体長に2扉という少ない扉枚数から、主に混雑区間での使い勝手が良いとは言えず、かつての「大運転」(難波〜高野山直通)の急行列車に投入されていた頃を考えると、持て余し気味に感じられなくはありません。

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▲南海本線の普通列車として充当される2000系。
利用者から分かるように、運転席に「2扉車」と表示しているのがポイントです。


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▲高野線大和川橋梁を通過する2000系。
特急「こうや」「りんかん」に使用されている30000系のうち1編成が使用不能となったため、全車自由席特急として運行されている際の記録です。
逆にいえば、「2000系に余裕があるため自由席特急を仕立てることができた」エピソードともいえなくはないかも知れません。


今回その2000系車両について、各支線で使用されているワンマン車両(2200系)の置き換えとして改造していくことが発表されました。
2両編成も存在する2000系ですので、2200系の後継としてワンマン車両の置き換えとなるのは、現在の南海電鉄の車両ラインナップから考えると妥当な流れ、ともいえるでしょうか。


ワンマン運転という点では、「南海本線での一部区間でのワンマン運転拡大」も今回発表されています。
南海本線のどの区間でワンマン運転が実施されるのかは、今回発表されていませんが、利用者数から考えると、泉佐野以南の閑散区間で実施される可能性は高いのかな、とも考えます。

また上述の「2000系ワンマン運転改造」と組み合わせて考えると、「泉佐野以南での2000系によるワンマン運転」という可能性もあり得るのかな、とも考えられます。

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▲箱作〜淡輪間を走る9000系普通車。
大阪湾を眺めることのできる区間でありますが、利用者は泉佐野以北より少ない状況です。
今後ワンマン運転が実施される際には、この区間でも実施される可能性も高いと考えられます。


ともあれ、高野線急行用車両から、南海線普通車用車両への使用という時代を経て、都合三度目の転身が予想される2000系。
この数年でどのような変化が生じるのか、ファンとしても注目したいところであります。



【新たなポイントサービス開始→回数券廃止か?】
サービス面で注目したいのは、PiTaPa、ICOCAの乗車を対象にしたポイントサービスの実施でしょうか。
既に他の鉄道事業者で導入されているサービスですので、それ自体に目新しいものがあるわけではありませんが、その引き替えに「回数券」が廃止されるのも、これまた他の事業者でみられた動きです。

現在、南海電鉄では回数券(時差回数券、土休日回数券含む)の廃止は発表されていませんが、この新サービス発表と引き替えに廃止、というのも十分考えられそうです。
2023年の「新たなポイントサービス」開始に向けて、今後の発表についても注視していきたいと思います。



以上、今回の値上げとともに発表された設備投資の内容から、当ブログ的に気になる内容を挙げてみました。
今後、正式な発表があれば、随時当ブログでもご紹介していきたいと思います。




【関連ブログ】
【南海】運賃値上げを申請。2000系を支線に投入へ - 鉄道プレス
阪和線のライバル南海電鉄 運賃改定申請 : JR阪和線つれづれ記
2023年10月、南海値上げ: たべちゃんの旅行記「旅のメモ」




【関連ニュースサイト】

南海電鉄2000系「ズームカー」ワンマン改造、支線の2200系を置換え | マイナビニュース
南海電鉄、高野線に「新たな観光特急車両」2025年度を目標に導入へ| マイナビニュース
南海が平均10%の運賃値上げへ…難波-中百舌鳥間に特定運賃 2023年10月予定 | レスポンス(Response.jp)



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