鉄道趣味には色々なジャンルがあります。
一般の方々に知られている分野としては、鉄道写真の撮影や、全国の鉄道路線を完全乗車、はたまた模型やグッズ集めなどが考えられます。

その中の一つで近年とみに注目を集めているジャンルの一つに「きっぷの収集」が挙げられます。

鉄道を利用するときに購入する「きっぷ」。
何気ない普通の紙切れですが、そこに書かれている文字から様々なことが分かりますし、同じ効力のきっぷであっても、発売された場所や時代によって記載のされ方が異なることもあります。

さらに言えば、きっぷの材質や大きさなど、また書かれている文字が印刷されたものか書き込まれたものか、等々、何気なく手にしているきっぷであっても、色々研究してみると、実は奥深いものがあります。


近年鉄道趣味の一ジャンルとして注目を集めているこれらの「きっぷ収集」、いざ収集を初めてみようにも、その基本的な知識から収集の実践までをまとめた入門的な書籍をあまり見かけることがなかったのではないか、と思います。

逆に、同人誌等では、様々なきっぷを取り上げてその内容を分析する、発展的な内容が多く、その間を埋めるような書籍があれば、この趣味も多くの人々が楽しめるのにな、と日頃から感じていました。



前置きが結構長くなりましたが、今回「きっぷ収集」趣味、いわゆる「きっぷ鉄」について、きっぷの役割や種類、そして歴史や収集方法、加えて最近のトピックスを交えた、入門から中級レベルの方々に是非おすすめな書籍が発行されましたので、ご紹介したいと思います。
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書籍名は「鉄道きっぷ探求読本」
著者の後藤茂文さんは、現役のNHK記者で、京都大学公共政策大学院を終了後同局に入局し、津放送局、大分放送局を経て2020年から松山放送局に勤務され、公共交通や経済、文化などを取材されています(本書より)

その成果は、各放送局のみならず全国にも放送され、NHKが放送する報道番組の中でも本人のコレクションとともにきっぷから見える昨今の鉄道の現況について解説された放送をご覧になった方も少なくないと思います。
阪和線の沿線から : NHK記事で「きっぷ鉄」の特集。様々なきっぷ収集と旅行会社の激減について取り上げられています。

今回、この後藤記者が自らの取材に加え、休日を使った趣味活動をもとに、「きっぷ」と「きっぷ収集」のことを基本的なことから記した一冊が完成しました。

内容は上述のとおり、きっぷの種類、歴史、集め方、趣味の深め方など、これまで「きっぷ収集」を手がけたことのない方は勿論、既にきっぷ収集を趣味とされている方でも新しい知識・視点を得ることができる一冊に感じた、いわば「きっぷ鉄の教科書」と呼んでもいいのかな、と感じました。

事実、私もこのブログでご紹介してきたように、以前からきっぷを集めてきたのですが、それでも初めて知ることも数多くあり、著者の見識と取材力の広さに感服した次第です。

しかも本書が単なる「趣味の本」に止まらないのは、IT化の少子高齢化による労働力不足に加え、コロナ禍による鉄道事業はもとより、きっぷを取り巻く状況の変化についても、相当の紙幅を割いて触れているところであります。
ともすれば、きっぷそのものの解説で終始してしまうこの手の趣味本でありますが、元来鉄道は人の移動需要を満たすために運営されるものであり、その状況は社会の変化とは無関係とはいられません。

そのためには、社会の動きがどのように趣味の対象(今回の場合は「きっぷ」)に影響を及ぼしているのか、というのを理解する必要があるわけで、またそれによって、より趣味の楽しみも深めることができるかと思います。

そういった視点で考えると、鉄道とは無縁の情報を日々追いかけてニュース題材を提供するという、NHK記者である著者だからこそ、こういった一冊の本を完成させることができたのではないか、と感じました。



私の鉄道趣味を振り返ってみますと、このブログでご紹介してきたように、「乗車」(乗り鉄)がメインで、そこから派生してきていた、と感じています。
その中でも「乗り鉄」のためには購入が必須であることから、「きっぷ」についても、割と初期の頃から自然と関心を持つようになったように記憶しています。
手元にはそれこそ30年以上昔に自らが集めたきっぷもあり、これらのきっぷを時折眺めながら、かつてたどった旅程を思い出したりしています。
(参考)


そういった、長年きっぷを集めてきた一人としても、よりこの趣味を楽しむ方が増えるといいな、という思いもあり、今回の書籍をお薦めしたく、今回のブログ記事をアップさせていただきました。

また、「きっぷ収集」というのは、自分が乗車に使うきっぷだけでなく、「乗りもしない」きっぷも購入し、収集の対象とすることから、少なからず鉄道事業者への収入に貢献している、とも考えています。
「アフターコロナ」で人々の生活様式がコロナ前に戻りつつあるとはいえ、こと鉄道事業に関しては、通勤やビジネスの利用が完全に元に戻ることはない、と各事業者では予想していることからも分かるように、厳しい経営環境がこれからも続くと考えられます。

そういう状況のなか、簡単に収入に貢献できる「きっぷ鉄」という活動は、鉄道事業者への「サポーター」という観点からも、より多くの方々に広げていきたいな、と思っています。



以上、私自身のきっぷ収集の話も交えて、長々と記事を書いてきましたが、今回の後藤記者によるこの一冊が鉄道ファンは勿論、それ以外の方々にも広く読んでいただき、「きっぷ収集」という趣味がより広まることを期待したいと思っています。

また、後藤記者の引き続きの活躍も期待したいと思いますし、公共交通全般を含む様々な社会問題、そして趣味のフィールドでもある「きっぷ」に関する報道に今後も注目したいと思います。



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