JR東日本では、2023年度から「センターサーバー方式」(以下、「新システム」)を採用した新しいSuica改札システムを導入することを発表しました。

新しいSuica 改札システムの導入開始について|JR東日本

概要は以下のとおりです。

【新システムの概要】
運賃計算などの処理を全てセンターサーバーで実施。
新システムを導入した改札機でも、Suicaの利用方法は同じ。
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(上記発表資料(https://www.jreast.co.jp/press/2023/20230404_ho02.pdf)より引用)

【導入予定エリア・時期】
・2023年5月27日(土)から北東北3エリア(青森・盛岡・秋田)45駅に新システムを導入。
・首都圏、仙台、新潟エリアは2023年夏以降に順次導入。

【新システムの特徴】
高速なサーバー及び通信ネットワークにより、首都圏の鉄道利用に求められる高速な処理に対応。
サービス機能の拡張性向上、処理スピードの向上、スピーディな改修とコストダウンを実現。
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(上記発表資料(https://www.jreast.co.jp/press/2023/20230404_ho02.pdf)より引用)

【新システム導入によるSuicaサービスの将来像】
新システムや鉄道チケットシステムの導入により、これまでのSuicaサービスを革新するプラットフォームを整備し、これにより、これまでのSuicaサービスに加えた「新しいSuicaサービス」の提供を可能にする。
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(上記発表資料(https://www.jreast.co.jp/press/2023/20230404_ho02.pdf)より引用)

【新しいSuicaサービスのイメージ】
・新システムの導入により実現可能なサービス:
Suicaエリアの統合
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・鉄道チケットシステムの導入により実現可能なサービス:
柔軟なSF割引商品の提供
(例;時間帯や曜日などの利用条件によるSF割引クーポン)

生活サービスと移動を融合した商品提供
(例:鉄道沿線(商業施設・イベントなど)と融合したクーポン)

ワンストップでシームレスな移動の提供:
(MaaSで目的地の交通や観光などのチケットをセットで購入)


詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



2001年11月18日にサービスを開始したJR東日本のICカードサービス「Suica」。
JR東日本:プレスリリース:2001年11月18日(日)「Suica(スイカ)」デビュー!
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▲Suica導入時のプレスリリース
(同社プレスリリース(https://www.jreast.co.jp/press/2001_1/20010904/より引用)


スイスイと改札を通過できるこのサービスは首都圏の旺盛な鉄道利用者に一気に普及し、現在ではSuicaの仕組みがベースとなり、全国各地で「交通系ICカード」として普及しており、またこれらの相互利用サービスも当然の光景となりました。

Suicaがサービス開始して、20年以上経過したわけですが、その間大きなトラブル無く運用できたのは、上述の仕組みにもあるように、改札機で運賃計算を実施するなどの堅牢なシステムであったから、という意見も多く聞かれます。

一方で、この20年以上で、通信環境やその技術、またサーバーの処理能力向上が桁違いの進化を遂げ、現在では様々なアプリケーションがクラウド処理されているのは、これまた周知のところといえるでしょう。

また、当初はJR東日本の首都圏管内だけだったSuicaエリアも拡大し、更には全国相互利用サービスも実施されたことから、各々の改札機の処理するデータ量も大きくなり、それが導入・保守のコストアップ要因になるほか、処理能力の限界が故に、ICカードエリアを一定の範囲に区切る必要があり(運賃データが多すぎて保存できない)、特にエリアまたぎの利用ができないといった支障も生じています。


Suicaが導入されて20年以上で変化したこれらの技術レベルやサービス提供環境の変化に対応するため、今回JR東日本ではSuicaのセンターサーバー化を実施することを発表しました。

センターサーバー化により実現できるサービスがいくつか紹介されていますが、個人的に最も大きな変化は、「エリア統合」ではないかと考えています。

現状、利用可能エリアをまたぐ鉄道利用では、Suicaでの利用ができず、紙のきっぷを利用する必要があります。
しかし、Suicaのセンターサーバー化によりエリアが統合されると、JR東日本管内が1つのエリアとなることから、これまで以上に柔軟にSuicaの利用が可能となります。

上記の発表例では、東北本線の西那須野〜仙台間の利用において、現状では紙のきっぷでの利用が、Suicaで利用できるようになる例を紹介してます。
センターサーバー方式でより多くの運賃データを計算できるようになると、上述のような在来線のみの例に加え、新幹線でSuicaを利用する際においても、現在では別途「新幹線eチケット」での購入が必要になるところが、よりシンプルな利用スタイルが実現可能になるかも知れません。

更に言えば、センターサーバー化により、更に低コストで改札機を設置できるようになることから、ローカル路線を含めた全路線でのSuicaエリア展開考えられ、それにより運賃計算やきっぷのルールもSuica利用を前提としたものに変わる可能性も出てくるでしょう。
具体的には
・実際の乗車経路にかかわらず、最短ルートでの運賃計算
・途中下車制度の廃止
・都区市内制度の廃止

など、国鉄時代の運賃計算を引き継いだ制度が、Suicaのセンターサーバー化とそれによる同社内全域でのSuicaエリア化により、大きく変わるのではないか、と予想するのであります。

勿論、そんな変化が目に見えるようになるのは、例え有ったとしてもまだまだ先のことではないか、と思います。
ただ、今回のSuicaのセンターサーバー化が、ゆくゆくは運賃制度やきっぷのルールに大変革をもたらす可能性を大きく有していることは、このニュースに関連して気にしておきたいな、と感じたニュースでありました。




【関連ニュースサイト】
JR東、Suicaの新システムを導入へ エリア統合などの将来構想も - 鉄道コム
JR東日本、新しい「Suica」改札システムを北東北3エリアから導入へ | マイナビニュース
Suica始まって以来の革命、クラウド型Suica…エリア間をシームレスに利用 北東北で5月27日から | レスポンス(Response.jp)
センターサーバー式「新しいSuica改札システム」年度内導入。首都圏〜東北などエリアをまたぐ区間の利用が可能に - トラベル Watch
JR東日本、新しいSuicaシステムを導入 共通基盤化推進 - TRAICY(トライシー)


今回の「Suicaのセンターサーバー化」は、交通関係のみならずIT関係のニュースでも大きな話題となりました。
以下、ニュースサイトを掲載しておきます。
「Suica」に新改札システム 運賃計算を改札機からサーバに移行 首都圏は23年夏ごろから - ITmedia NEWS
“エリアをまたいだ乗車”実現なるか? 「Suica」の改札システムが順次リニューアル 2026年度完了予定 - ITmedia Mobile
なぜ? 「Suica」がサーバ型に移行する理由 25年近く稼働する“安全神話”の象徴に何が(1/3 ページ) - ITmedia NEWS
新Suica改札システムはじまる。センターサーバーの「新しいSuica」 - Impress Watch
新しいSuica改札システム導入、首都圏は2023年夏以降 - ケータイ Watch
JR東日本、サーバ式の新Suica改札システムを導入 | TECH+(テックプラス)



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