長崎県の島原鉄道では、平成26年度(2014年度)からの10年を計画期間とした、施設整備計画を策定し、国や沿線自治体の支援を受けています。

しかし、近年の沿線人口減少や少子化、そして2020年度以降の新型コロナウイルス感染症の影響により利用者が著しく減少していることから、地域の生活交通を維持する使命の中で、大きな岐路に立たされています。

それを踏まえて、長崎県では、今後の支援のあり方を整理する時期があるとして、地域における島原鉄道が担うべき役割を整理し、沿線地域全体の交通のあり方について調査、研究及び提言を行うものとして、「島原鉄道沿線地域公共交通検討調査」を実施するべく、その委託事業者を募集したことを発表しました。

島原鉄道沿線地域公共交通検討調査業務委託に係る公募型プロポーザル | 長崎県

概要は以下のとおりです。

【業務内容】
(1)現状分析及び将来予測

(2)収益状況分析・経営改善策の検討提案

(3)沿線地域の実態に適合する交通体系の提言
<想定される提言のパターン>
・島原鉄道を軸とした将来にわたり持続可能な交通体系(鉄道を維持する場合)
1:上下分離の場合(複数パターン)
2:それ以外の手法
・既存の交通体系に捉われない新しい交通モード等への転換
3:BRT への転換
4:乗合バスへの転換
5:乗合バス及び乗合タクシー等を組み合わせた転換


詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



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▲島原外港(現:島原港)駅に停車中の島原鉄道キハ2500A形。
施設整備計画の最終年度を迎えるなか、今後のあり方について検討する時期が到来しています。


西九州新幹線・長崎本線の諫早駅から島原港に至る「島原鉄道」。
かつては島原港(旧:島原外港)から更に南に、加津佐(かづさ)駅までの路線を有していましたが、2008年3月末をもってこの区間が廃止となり、現在の路線形態となっています。



沿線の人口減少や少子化により、ご多分に漏れずこの島原鉄道でも利用者減少に悩まされており、そんな中で2014年度から10年間の計画で、施設整備計画を定め、国や沿線自治体からの支援を受けて事業を実施してきました。

しかし、島原鉄道の輸送密度はコロナ禍前の2019年度でさえも1192人・km/日、コロナ禍さなかの2020年度は851人・km/日(出典元:鉄道統計年報(https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk6_000032.html))と、下記でJRグループにおける「利用者の著しい減少等を背景に、利便性及び持続可能性が損なわれており、対策を講じることが必要」と判断される目安の輸送密度1000人・km/日に近い水準となっています。


施設整備計画の最終年度を迎えるにあたり、今後島原鉄道を鉄道として存続していくべきか、あるいは他の交通モードに転換していくべきか。
そういった議論を沿線で行っていくための提言を作成する業務として、今回長崎県から業務委託、という形で入札案件が公表されました。

その「提言」としても、鉄道を維持する場合の「上下分離」、そしてそれにとらわれない転換方法として「BRT」「乗合バス」等、ゼロベースで存廃を考えるたたき台を提案していく内容となっています。


島原鉄道沿線は、半島地域ということもあり、かねてから過疎化が進んでいて、それが島原鉄道の運営にも厳しいものがありました。
2008年3月末に島原港以南の通称「南目線」が廃止されたのも、ひとえに島原半島南部の人口減少がより厳しいものがあったことに尽きるわけですが、今回更に比較的人口が多いとされていた北部の沿線でも、存廃を論じる段階になってきているとは、かつて両親の帰省で定期的に利用していた私としては、身につまされる思いであることは確かです。

一方で、今後人口減少が更に進む中、この島鉄の鉄道線をこのまま残すのが、持続的な公共交通体系を構築する上で果たしてベストなのか、というのは、ともすれば人々が鉄道に抱く「ノスタルジー」を排して、データに即した議論を行った上で、それでも鉄道を維持したいかどうか、まさに沿線地域がその方向を決める、そして決めた方向性に事業者、行政のみならず沿線住民も責任を持って維持していくのが必要なのではないか、と思っています。


果たして島原鉄道線が今後も維持されるかどうか、全ては沿線の判断にかかっているわけですが、当ブログでもこの動きを追いかけていきたいな、と感じたニュースであります。




【関連ニュースサイト】
島原鉄道「BRT化」「上下分離」可能性の検討へ 厳しい経営受け「幅広い協議」へ 長崎県 | 乗りものニュース



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