静岡県の金谷(かなや)駅から千頭駅までの「大井川本線」と、千頭駅から井川駅までの「井川線」を運営する「大井川鐵道」(大鉄)。
特に大井川本線でのSL運行は鉄道ファンのみならず多くの人々に知られており、観光資源としても名高い路線であります。
しかしこの大井川本線では、昨年(2022年)9月の台風15号の影響で、家山〜千頭間が被災し、現在も運転休止が続いています。
●大井川本線 家山⇔千頭 台風15号被災によるバス代行運転について | 大井川鐵道【公式】
コロナ禍もあり、もとより運営の厳しかった大鉄ですが、この台風被害による被害を自社だけでまかなうのが難しい状況となっていますが、それに加え、不通区間の代行バスについても、運行による損失額が大きいことから、自社による代行バスを取りやめ、沿線自治体の川根本町による町営バスに移管することとなりました。
●令和5年10月1日以降の千頭・家山間のバス運行について/川根本町公式ホームページ
代行バスの取りやめ・コミュニティバス移管というのは、あまり聞いたことがなく、それだけ大鉄の置かれた状況の厳しさが伝わってくるわけですが、そんな大鉄・大井川本線と、その代行バスに乗車してみましたので、その記録をご紹介したいと思います。
まず乗車したのは、金谷7時46分発の家山行きです。
乗車したのは、近畿日本鉄道から譲渡された16000系電車です。


▲車内はこのように、近鉄特急時代の座席を、向かい合わせにしてそのまま使用しています。
特に大井川本線でのSL運行は鉄道ファンのみならず多くの人々に知られており、観光資源としても名高い路線であります。
しかしこの大井川本線では、昨年(2022年)9月の台風15号の影響で、家山〜千頭間が被災し、現在も運転休止が続いています。
●大井川本線 家山⇔千頭 台風15号被災によるバス代行運転について | 大井川鐵道【公式】
コロナ禍もあり、もとより運営の厳しかった大鉄ですが、この台風被害による被害を自社だけでまかなうのが難しい状況となっていますが、それに加え、不通区間の代行バスについても、運行による損失額が大きいことから、自社による代行バスを取りやめ、沿線自治体の川根本町による町営バスに移管することとなりました。
●令和5年10月1日以降の千頭・家山間のバス運行について/川根本町公式ホームページ
代行バスの取りやめ・コミュニティバス移管というのは、あまり聞いたことがなく、それだけ大鉄の置かれた状況の厳しさが伝わってくるわけですが、そんな大鉄・大井川本線と、その代行バスに乗車してみましたので、その記録をご紹介したいと思います。
まず乗車したのは、金谷7時46分発の家山行きです。
乗車したのは、近畿日本鉄道から譲渡された16000系電車です。


▲車内はこのように、近鉄特急時代の座席を、向かい合わせにしてそのまま使用しています。
近鉄では特急列車として使用されていたこの車両、大鉄では普通列車に用いられており、ある意味乗り得、といえるかも知れません。
乗客は、20人ほどいましたが、その半数程度は新金谷、代官町、日切、合格と、市街地内での利用でした。
そして残り10名ほどの利用者で、家山に向かいます。

門出を過ぎると、沿線の人家は限られた場所となりました。とはいえこのあたりでは、まだ大井川の川幅はこのように広いものとなっています。
門出からはほとんど乗り降りしない状況で、40分ほど乗車し、家山駅で下車します。

▲家山駅に到着した16000系。
ここから代行バスに乗り換えます。

バスは、大井川鉄道グループの「大鉄観光バス」のバスでした。
同社の案内でも「定員40名」と記載しているのも、この観光バスで定員着席による運行としているためです。
逆にいえば、40名の定員で大きな混乱が起きていないところが、この路線の置かれた状況を示しているのかも知れません。
代行バス区間には、車掌が乗務してきっぷの発行等を行います。
とはいえ、途中で乗降があったのは、川根温泉で乗り降りともに3名程度があった程度で、その他は乗り降りなしで終点の千頭まで向かうこととなりました。
バスの車窓から、大井川と、大井川本線を眺めてみます。



約45分で、千頭駅に到着しました。

千頭駅に到着した大鉄大井川本線の代行バス。
私は、ここから井川線に乗り換えて乗りつぶしを目指しますが、井川線の乗車記については、改めてご紹介できればと思います。
帰りも千頭から代行バスに乗車します。
千頭駅14時28分発のバスに乗車しますが、こちらは15名ほどの乗客で出発。

帰りの車内でも、車窓を記録していきます。


▲バスの車内からは、大井川本線の橋梁を何本も見ることができました。

▲大井川本線の被災場所を探しながら乗車しましたが、そのような場所を見つけて撮影してみました。
といっても、大井川の対岸から撮影したもので、相当ズームを効かせての撮影でした。
途中の駅で、合計5名ほどの乗客を集め、代行バス終点の家山駅では、20名ほどの下車となりました。

乗り換えた先には、南海電鉄からの譲渡車「ズームカー」21000系が停車していました。

かつて、学生時代に、その最後の活躍として高野線の「大運転」急行列車などに充当された21000系。
ここ大鉄での活躍も30年近くとなり、こちらで走っている期間もすっかり長くなりました。
車内の様子も、南海高野線時代そのままでした。


大井川鐵道でワンマン改造されていることもあり、客席から運転席を見渡すことができました。


かつて高野線で乗車したことも何度かあっただけに、懐かしい気分での帰路となり、金谷駅に到着しました。

▲金谷駅に到着した21000系。

▲ヘッドマークは普通列車を表す「普」が記されていました。
南海時代にはこのフォント・配色で急行の「急」が記されていましたので、これまた懐かしい雰囲気を醸し出していました。
上述のとおり、現在大鉄の代行バスとして運行している家山〜千頭間は、2023年10月1日より川根本町のコミュニティバスに移管されることとなりました。
同日付けで、家山〜川根温泉笹間渡間が復旧することから、これらを併せた大井川本線のダイヤ改正が実施されます。
●2023年10月1日 川根温泉笹間渡駅までの延伸に合わせてダイヤ改正を実施いたします | 大井川鐵道【公式】
その内容をみますと、観光客輸送に対応するための「快速急行」「区間急行」の新設の一方で、全線通しの普通列車はわずか3往復(他に金谷〜家山の普通列車が1往復)となっています。
もはや沿線の地元利用が非常に少ないことから、観光路線としての生き残りを示したダイヤということですが、これだけ地元の利用者が少ないと、そもそも鉄道としての維持が必要なのか、というレベルにならないとも限りません。
10月以降も運休が続く川根温泉笹間渡〜千頭間の復旧についても、大鉄の経営規模から考えると巨額の費用を、どのように確保するのか、あるいはできるのか、がポイントとなるでしょう。
今回のダイヤ改正でも分かるように、沿線利用者が限りなく少ないなか、残された観光利用がメインで、復旧費用の公的負担が受け入れられるのか。
今後の沿線自治体の議論の行方を気にしないわけにはいかないと感じます。
乗り継ぎの時間があったので、千頭駅構内で留置されている車両の写真を撮影しました。

2023年のトーマスイベントとして、構内に「ヒロ」「ジェームス」「パーシー」が展示されていました。
本来ならば、本線上を走ることで多くの観光客を呼び込むはずのこれらのトーマス関係の機関車。
再び全線で走ることができるのでありましょうか。

千頭駅に留置されている南海21000系。
2編成のうち、1編成は上述のとおり金谷〜家山間で運用中ですが、残る1編成は、ここ千頭駅に取り残されたままとなっています。
こちらの編成も、再び動ける日がやってくるのでありましょうか。


▲駅構内と大井川本線の駅名標。
訪問したのは9月の火曜日ということもあり、閑散としていましたが、その理由は季節と曜日だけではないのかも知れません。
復旧費用が大きく、利用者が観光利用に偏っているだけに、どうしても前向きな展望をブログでも書くことができないのですが、それだからこそ、今、改めて大鉄を訪問することで、同社の支援になるのではないか、と思います。

今回使用したのは、大鉄で発売されている「大井川周遊きっぷ」です。
大井川本線・井川線の全線が利用可能で、金額は往復運賃よりも割安となっています。
また、同社の路線バス(寸又峡線・閑蔵線)も利用可能で、ルートに変化を加えることも可能です。
(私も実際に、路線バス閑蔵線を利用しました。)
このきっぷも、10月の町営バスへ移管に伴い、発売が終了となります。
かつての国鉄→JRの企画きっぷとレイアウトを似せた券面も、今月末で見納めになりますので、購入できて嬉しかったです。
上述のとおり、大井川鐵道・大井川本線では、この10月から家山〜川根温泉笹間渡駅間が復旧しますが、それでもまだ不通となっている区間は19.5kmと、同線の半分近くのままです。
この区間が今後復旧し、再びSLやEL、そして近鉄や南海、十和田観光鉄道で活躍した懐かしい電車が再び全線で走行できる日がやってくるのか。
不通区間があるが故に全線完乗が果たせないまま、という個人的事情もありますが、それより何より、全線復旧によりこの大井川鐵道に再び多くの観光客が戻ってくることが、地域経済や社会にとっての願いでもあるでしょう。
その日がいつかやってくることを願いながら、当記事の終わりとするとともに、今後も大井川本線の復旧情報は逐次当ブログでご紹介していきたいと思います。
【関連ニュースサイト】
●大井川鐵道 家山〜川根温泉笹間渡間運転再開・ダイヤ改正(2023年10月1日) - 鉄道コム
●「夜に走るSL運転します」快速急行や区間急行も新設 大井川鐵道が10月にダイヤ改正 | 乗りものニュース
●大井川鐵道「代行バスもきついです」地元へ移管へ 減便でわずか6往復に 台風で長期運休区間 | 乗りものニュース
●大井川鐵道,大井川本線 家山—川根温泉笹間渡間の運転を10月1日から再開 〜ダイヤ改正を実施〜|鉄道ニュース|2023年8月21日掲載|鉄道ファン・railf.jp
●大井川鐵道、家山〜川根温泉笹間渡間10/1運転再開 - ダイヤ改正も | マイナビニュース
●大井川鐵道、10月1日ダイヤ改正 家山〜川根温泉笹間渡で運転再開!1年ぶり“本流”渡る | レイルラボ ニュース
●大井川鐵道、不通区間の一部が10月1日再開 快速急行、区間急行を新設 ナイトSLも誕生!? | 鉄道ニュース | 鉄道チャンネル
●静岡 大井川鉄道 「記録雨」被害 全線復旧は NHK 三上弥アナ | NHK
●大井川鉄道 被災から1年 復旧へ「乗って応援」を【記者コラム 黒潮】|あなたの静岡新聞
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乗客は、20人ほどいましたが、その半数程度は新金谷、代官町、日切、合格と、市街地内での利用でした。
そして残り10名ほどの利用者で、家山に向かいます。

門出を過ぎると、沿線の人家は限られた場所となりました。とはいえこのあたりでは、まだ大井川の川幅はこのように広いものとなっています。
門出からはほとんど乗り降りしない状況で、40分ほど乗車し、家山駅で下車します。

▲家山駅に到着した16000系。
ここから代行バスに乗り換えます。

バスは、大井川鉄道グループの「大鉄観光バス」のバスでした。
同社の案内でも「定員40名」と記載しているのも、この観光バスで定員着席による運行としているためです。
逆にいえば、40名の定員で大きな混乱が起きていないところが、この路線の置かれた状況を示しているのかも知れません。
代行バス区間には、車掌が乗務してきっぷの発行等を行います。
とはいえ、途中で乗降があったのは、川根温泉で乗り降りともに3名程度があった程度で、その他は乗り降りなしで終点の千頭まで向かうこととなりました。
バスの車窓から、大井川と、大井川本線を眺めてみます。



約45分で、千頭駅に到着しました。

千頭駅に到着した大鉄大井川本線の代行バス。
私は、ここから井川線に乗り換えて乗りつぶしを目指しますが、井川線の乗車記については、改めてご紹介できればと思います。
帰りも千頭から代行バスに乗車します。
千頭駅14時28分発のバスに乗車しますが、こちらは15名ほどの乗客で出発。

帰りの車内でも、車窓を記録していきます。


▲バスの車内からは、大井川本線の橋梁を何本も見ることができました。

▲大井川本線の被災場所を探しながら乗車しましたが、そのような場所を見つけて撮影してみました。
といっても、大井川の対岸から撮影したもので、相当ズームを効かせての撮影でした。
途中の駅で、合計5名ほどの乗客を集め、代行バス終点の家山駅では、20名ほどの下車となりました。

乗り換えた先には、南海電鉄からの譲渡車「ズームカー」21000系が停車していました。

かつて、学生時代に、その最後の活躍として高野線の「大運転」急行列車などに充当された21000系。
ここ大鉄での活躍も30年近くとなり、こちらで走っている期間もすっかり長くなりました。
車内の様子も、南海高野線時代そのままでした。


大井川鐵道でワンマン改造されていることもあり、客席から運転席を見渡すことができました。


かつて高野線で乗車したことも何度かあっただけに、懐かしい気分での帰路となり、金谷駅に到着しました。

▲金谷駅に到着した21000系。

▲ヘッドマークは普通列車を表す「普」が記されていました。
南海時代にはこのフォント・配色で急行の「急」が記されていましたので、これまた懐かしい雰囲気を醸し出していました。
上述のとおり、現在大鉄の代行バスとして運行している家山〜千頭間は、2023年10月1日より川根本町のコミュニティバスに移管されることとなりました。
同日付けで、家山〜川根温泉笹間渡間が復旧することから、これらを併せた大井川本線のダイヤ改正が実施されます。
●2023年10月1日 川根温泉笹間渡駅までの延伸に合わせてダイヤ改正を実施いたします | 大井川鐵道【公式】
その内容をみますと、観光客輸送に対応するための「快速急行」「区間急行」の新設の一方で、全線通しの普通列車はわずか3往復(他に金谷〜家山の普通列車が1往復)となっています。
もはや沿線の地元利用が非常に少ないことから、観光路線としての生き残りを示したダイヤということですが、これだけ地元の利用者が少ないと、そもそも鉄道としての維持が必要なのか、というレベルにならないとも限りません。
10月以降も運休が続く川根温泉笹間渡〜千頭間の復旧についても、大鉄の経営規模から考えると巨額の費用を、どのように確保するのか、あるいはできるのか、がポイントとなるでしょう。
今回のダイヤ改正でも分かるように、沿線利用者が限りなく少ないなか、残された観光利用がメインで、復旧費用の公的負担が受け入れられるのか。
今後の沿線自治体の議論の行方を気にしないわけにはいかないと感じます。
乗り継ぎの時間があったので、千頭駅構内で留置されている車両の写真を撮影しました。

2023年のトーマスイベントとして、構内に「ヒロ」「ジェームス」「パーシー」が展示されていました。
本来ならば、本線上を走ることで多くの観光客を呼び込むはずのこれらのトーマス関係の機関車。
再び全線で走ることができるのでありましょうか。

千頭駅に留置されている南海21000系。
2編成のうち、1編成は上述のとおり金谷〜家山間で運用中ですが、残る1編成は、ここ千頭駅に取り残されたままとなっています。
こちらの編成も、再び動ける日がやってくるのでありましょうか。


▲駅構内と大井川本線の駅名標。
訪問したのは9月の火曜日ということもあり、閑散としていましたが、その理由は季節と曜日だけではないのかも知れません。
復旧費用が大きく、利用者が観光利用に偏っているだけに、どうしても前向きな展望をブログでも書くことができないのですが、それだからこそ、今、改めて大鉄を訪問することで、同社の支援になるのではないか、と思います。

今回使用したのは、大鉄で発売されている「大井川周遊きっぷ」です。
大井川本線・井川線の全線が利用可能で、金額は往復運賃よりも割安となっています。
また、同社の路線バス(寸又峡線・閑蔵線)も利用可能で、ルートに変化を加えることも可能です。
(私も実際に、路線バス閑蔵線を利用しました。)
このきっぷも、10月の町営バスへ移管に伴い、発売が終了となります。
かつての国鉄→JRの企画きっぷとレイアウトを似せた券面も、今月末で見納めになりますので、購入できて嬉しかったです。
上述のとおり、大井川鐵道・大井川本線では、この10月から家山〜川根温泉笹間渡駅間が復旧しますが、それでもまだ不通となっている区間は19.5kmと、同線の半分近くのままです。
この区間が今後復旧し、再びSLやEL、そして近鉄や南海、十和田観光鉄道で活躍した懐かしい電車が再び全線で走行できる日がやってくるのか。
不通区間があるが故に全線完乗が果たせないまま、という個人的事情もありますが、それより何より、全線復旧によりこの大井川鐵道に再び多くの観光客が戻ってくることが、地域経済や社会にとっての願いでもあるでしょう。
その日がいつかやってくることを願いながら、当記事の終わりとするとともに、今後も大井川本線の復旧情報は逐次当ブログでご紹介していきたいと思います。
【関連ニュースサイト】
●大井川鐵道 家山〜川根温泉笹間渡間運転再開・ダイヤ改正(2023年10月1日) - 鉄道コム
●「夜に走るSL運転します」快速急行や区間急行も新設 大井川鐵道が10月にダイヤ改正 | 乗りものニュース
●大井川鐵道「代行バスもきついです」地元へ移管へ 減便でわずか6往復に 台風で長期運休区間 | 乗りものニュース
●大井川鐵道,大井川本線 家山—川根温泉笹間渡間の運転を10月1日から再開 〜ダイヤ改正を実施〜|鉄道ニュース|2023年8月21日掲載|鉄道ファン・railf.jp
●大井川鐵道、家山〜川根温泉笹間渡間10/1運転再開 - ダイヤ改正も | マイナビニュース
●大井川鐵道、10月1日ダイヤ改正 家山〜川根温泉笹間渡で運転再開!1年ぶり“本流”渡る | レイルラボ ニュース
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●静岡 大井川鉄道 「記録雨」被害 全線復旧は NHK 三上弥アナ | NHK
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