大阪府富田林市を中心に路線網を有する金剛自動車(金剛バス)。
大阪府内では珍しく、大手民鉄系列に属さない路線バス事業者として、バスファンを中心に注目されていた事業者でありましたが、去る9月11日に、本年12月20日をもってバス事業を廃止することを発表しました。



大阪府内でさえも路線バス事業者が路線を全て廃止するという、かなり衝撃的な発表であっただけに、地域住民やバスファンは勿論、全国的にも大きく報道されました。

かくいう私も、金剛バスという事業者名を知ってはいたものの、一方で金剛バスの車両さえも見たことがなかっただけに、路線バス全廃が発表されたいまのうちに、一度は金剛バスの記録を撮っておきたい、ということで、仕事を午後から休んで近鉄富田林(とんだばやし)駅まで向かいました。



富田林駅には駅の東西にロータリーがありますが、金剛バスが発着するのは東側のバスのりばとなっています。

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▲富田林駅で停車中の金剛バス。

濃・淡の緑色をまとったカラーは、他の大手事業者系列とは異なった、独特のものとなっています。

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▲バス後部を撮影

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▲側面後部に記された「Kongo Bus」の文字。
英字新聞のタイトルでも目にする書体(ブラックレターというそうです)が特徴です。

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▲金剛バスの車両を真横から。
ブラックレターの「Kongo Bus」が目立ちます。

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▲発車待ちをする金剛バスの車両

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▲会社が消滅して久しい今、その数も減りつつある「西日本車体工業」架装の車両も、金剛バスに残っています。

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▲複数のバスが一斉に発車し、駅前の信号待ちをしています。

駅前広場左手には、金剛バスの本社があります。
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定期券・回数券の発売窓口も併設されていました。

試しにどんな回数券が販売されているのか、尋ねてみますと、各区間運賃ごとに11枚つづりで10枚分の価格で発売しているとのことでした。

一番安い運賃である160円の回数券を購入してみました。
ICカードはおろか、磁気カード導入前に全国で見られた、1枚ごと切り離して使う紙の回数券を手にすることができました。
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▲回数券(表)
(※)一部画像処理しています。

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▲回数券(裏)
(※)一部画像処理しています。


バス停を見てみます。
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▲バス停には、先日発表された「路線バス事業廃止」の発表資料が貼り付けられていました。

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▲駅前に掲示された金剛バスの路線図。
富田林駅だけでなく喜志、上ノ太子の各駅からの路線も有しており、これらが一斉に廃止となれば、地域に与える影響も大きいものと考えられます。


私が富田林駅を訪問したのは、木曜日の13時頃でした。
流石にラッシュ時間帯というわけではありまえんでしたが、どのバスにも少なからず乗客が乗車していて、地域の足として機能している様子を目にしました。
それだけに、金剛バス廃止後の地域公共交通の確保は、何より時間が3ヶ月ほどしかないこともあり、大変な苦難となるのではないか、と感じました。




この「金剛バス廃止」は、大阪府内でも大きく報じられています。
私の住んでいるエリアでは新聞の地方欄は「堺・泉州」の記事が載っているのですが、ここでも金剛バスの廃止は大きく取り上げられていました。

まず、9月13日(水)の朝刊では、前日9月12日(火)に開かれた、金剛バス白江社長の記者会見の内容が掲載されていました。
9月13日(水)付け読売新聞朝刊によりますと、
白江社長によると、金剛自動車は2009年度から赤字に転落。乗客数は13年度の約172万人から21年度には約106万人にまで減少した。さらにコロナ禍が利用者減に追い打ちをかけ、全路線で赤字が常態化。20年度からの3年間で計約2億円の赤字を計上したという。

 同社は今年2月、事業継続のため、府や4市町村に悪化し続ける経営状況を説明し、運営の補助金交付を要望。その後しばらく事態が動かず、4月には、近畿運輸局に対し、11月での廃業を相談したという。

 5月以降、4市町村の担当者と事業継続に向けた話し合いが始まり、6月には補助金交付を打診されたが、運転手確保や車両更新などの設備投資も考慮し、手遅れだと判断。近畿運輸局に対し、改めて12月21日以降はバス事業を廃止する方針を伝えたという。

9月13日(水)読売新聞(https://www.yomiuri.co.jp/local/osaka/news/20230912-OYTNT50184/)より引用、太字下線は管理人による。
とのことでした。

また、同日付の朝日新聞朝刊によりますと、
乗務員不足で他社から3人の運転士の派遣を受けているが、30人いた運転士は派遣の人を含めても20人。ダイヤ維持が困難な状況が続いている
とのことでした。

即ち、元々収益が悪化していたのに加え、運転士不足の問題もあり、地元市町村から補助金交付の打診もあったものの、今後の事業継続が困難であり、今回廃止を決めたということになります。


これを受けて富田林市、河南(かなん)町、太子(たいし)町、千早赤阪(ちはやあかさか)村では、近鉄バスと南海バスに運行継続の協力を依頼していましたが、両社からは、自治体が事業主体となり、運行経費も自治体が負担する「コミュニティバス方式」を条件として協力する旨の回答があったと報じられています。

金剛自動車(本社・大阪府富田林市)が富田林市など4市町村で運行していた路線バスが廃止される問題で、同市は15日、廃止以降の運行支援を依頼していた2社から、可能な範囲で協力するとの回答があったと明らかにした。

 依頼した先は南海バスと近鉄バスの2社。12月20日で終了するとの金剛自動車の発表を受けて、4市町村が連名で依頼していた。

 同市によると、両社からは、運行経費や初期経費を自治体で負担すること、輸送形態も両社の直営でなく、自治体が事業主体となりバス会社が輸送契約を請け負う「自治体コミュニティーバス」方式にすることが協力の条件となっているという。

 回答を受けて今後、4市町村と国土交通省近畿運輸局、府、両バス会社などと法定協議会を立ち上げ、負担をどうするかなどを検討するという。

9月17日付け朝日新聞(https://www.asahi.com/articles/ASR9J736KR9HOXIE05X.html)より引用、太字下線は管理人による。


コミュニティバスへの移行となると、大幅な減便や路線の整理が行われるのが、これまで他の地域でも実際にあった事例が多いのですが、今回の金剛バスのコミバス化で、どのような路線や本数の整理が行われるのか、注目していきたいと思います。



私の住んでいる大阪府内で起こった、この「金剛バスの路線バス全廃」ですが、根底には路線バス利用者減少に加え、「運転士不足」も原因としてあると考えられます。
ただでさえ産業全般に人手不足が叫ばれる中、その中でも業務の内容や責任に対する待遇が残念ながら良くないと言われているバス業界では、他の産業以上に人手の確保が困難であることから、こういった事態は他の地域や事業者でも起こりうることなのではないか、と思います。

人口減少や人手不足のなか、いかに地域の公共交通を維持していくのか、行政や住民も、決して他人任せにすることなく、「自分事」として捉える必要を強く感じています。

上述のとおり、構造的な問題が発端なだけに、簡単な解決策は難しいのは承知ですが、今回の金剛バスの問題が、公共交通の維持に全住民が問題意識を向ける契機となってほしいな、と強く感じました。

金剛バスに関しては、上述のとおり、コミュニティバス方式での運行が濃厚ですが、今後どのような路線網に再編されるのか、当ブログでも引き続きこの問題を追いかけていきたいなと思います。



【関連ニュースサイト】
バス事業廃止は「誠に遺憾」 通知受け4市町村長がコメント 代替手段確保が急務に | 乗りものニュース



【関連ブログ】
金剛自動車、12月20日で路線バス事業廃止へ: たべちゃんの旅行記「旅のメモ」



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