JR九州では、鹿児島本線等の同社主要路線を走る「813系」について、車内のロングシート化を実施することを発表しました。

813系電車ロングシート化します|JR九州

上記発表によれば、ロングシート化により、クロスシート車に比べて1編成(3両)あたり定員(座席+立席)は90名増加するとしています。
内訳はロングシート座席120席、ボックス席28席となっています。

なお、座席数はロングシート化しても変化せず、また、一部の座席を撤去した車両と比べて48席増加するとのことです。

また、施工車両数は82編成246両で、2023年12月以降順次運用を開始し、2028年度に工事終了予定となっています。

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▲813系ロングシートの車内
(同社発表資料(https://www.jrkyushu.co.jp/news/__icsFiles/afieldfile/2023/11/30/231130_813_long-seat.pdf)より引用)


詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



JR九州の813系は1994年から2009年の15年間に渡り製造された電車で、同社の保有する電車の中では最も車両数の多い系式となっています。

その多くはクロスシート(転換式)で製造され、2人掛けで一部を除き進行方向に向かって座ることができることから、利用者にとっては快適な車両であったとも思われます。

一方で、クロスシートの通路が狭いこともあり、乗客がドア付近に固まって乗降に時間がかかるという課題がありました。
この手の問題は、クロスシートを導入する都市圏の車両では常につきまとう問題で、その解決に、例えば1+2列にして通路幅を広げたり、ドア付近の座席を削減する代わりに収納式の補助イスを設けるなど、乗降の円滑化と座席数の確保を両立させるべく、苦心の跡がみられます。

ところがこの813系では、ドア付近の座席を単純に撤去するだけの改造を行い、この乗降の円滑化に対応することにしました。
この際、撤去された座席は3両編成で48席(上記発表資料より計算)と、元々の座席の3割近くにもなりました。

当然、これだけ座席が撤去されるとこれまで座れていた乗客からは、座れなくなったという苦情が続出して、地元新聞社の西日本新聞にまで取り上げられる始末となってしまいました。
(参考)
【ご意見募集中】【JR九州・追加回答】座席削減、理由を知りたい|【西日本新聞me】

そう考えたら、811系みたく最初からロングシートにしておけば、そんな苦情も殺到することは無かったのだろうになあ、と思っていたら、ようやくといいますが、この度813系のロングシート化が発表されました。
(参考)


今回のロングシート化では、クロスシートの時と座席総数は変わらず、当然、座席撤去車に比べると、座席数は4割ほどの増加となります。

また、改造は5年程度かけて、2028年度に工事を終了する予定としています。
勿論、座席撤去に比べると期間も費用もかかることから、乗降の円滑化や収容力の増加を手っ取り早く解決する方法として、座席を取っ払う、というのは確かにあり得る方法とは思われます。

しかし、これだけ利用者の不満を集めることになると、やはり最初から計画的にロングシート化改造を進めた方がよかったのでは?とも感じたかたも多いかも知れません。

もっとも、この座席撤去はコロナ禍でJR九州も大きな影響を受けた2021年から実施されており、当時のことを考えると、安直な方法を取らざるを得なかったのも仕方がない、と理解を示せないこともないかも知れません。

だからと言って、やはり日々の利用者から反感を買うような施策が今後も続くようなら、それもいかがなものか、と思っていただけに、今回のロングシート化(=座席数の確保)は、一定程度評価してもいいのかな、とも思います。

最近のJR九州では、この813系座席撤去だけでなく、下記記事でご紹介した博多駅を中心とした窓口混雑や、福岡都市圏での列車本数の削減など、ひと頃に比べるとめっきり悪い評判を多く聞くようになりました。
今回の813系ロングシート化や、チケットレスサービスの開始など、改善の動きも少しずつでは見られるのですが、JR上場会社の中では最も経営基盤が弱いJR九州ですが、収益性と利用者の満足をどのように両立させていくのか、引き続き着目したいと思います。




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