神戸市内の六甲山への観光客を輸送する「六甲ケーブル」を運営する六甲山観光(株)では、六甲ケーブル事業に関する試算を阪神電鉄に承継し、同社はケーブルの運営に特化する「上下分離方式」を導入することを発表しました。

【六甲山観光(株)・当社】 六甲ケーブルにおける上下分離方式の導入について|ニュースリリース|阪神電気鉄道株式会社

上記発表によりますと、上下分離する目的としては、この六甲ケーブルにおいて、将来にわたる安全性向上と安定的かつ継続的な事業運営を両立するために実施することとしています。

枠組みとしては、阪神電鉄が六甲ケーブルの車両、構築物(軌道等)、機械及び装置、土地(軌道敷等)、建物(駅舎等)等の資産を保有し、六甲山観光はそれらの資産を使用するために阪神電鉄に線路使用料等を支払い、旅客輸送を行うこととしています。

上下分離の実施予定は2024年4月1日で、同時に六甲山観光(株)の観光事業を別会社に承継し、六甲山観光(株)は、六甲ケーブルの運行・設備管理等の運輸業務に特化することとしています。

詳細は、上記発表資料をご覧ください。



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▲上下分離の実施により、施設等が阪神電鉄が保有することになる六甲ケーブル。


今回タイトルで記した「上下分離」とは、鉄道事業の運営に関し、列車の運行を担う事業者(上)と、設備等を保有する事業者(下)を分離することを指します。

最近では、利用者が減少している地方ローカル線を、自治体等による公的支援で維持する枠組みとして導入されるケースが多く、この場合、「上」は既存または新規の鉄道事業者が、「下」は自治体などが担うことが多いようです。

今回、この上下分離を導入する「六甲ケーブル」は、神戸市民はもとより、京阪神から手軽に楽しめるスポットとして、また六甲山を越えて有馬温泉に通じる著名な観光ルートとして、多くの観光客が来訪する観光地であります。

この六甲ケーブルは、その中でも神戸の市街地から六甲山の山上に至る主要な公共交通機関ですが、下記神戸新聞の記事にもあるように安全性向上に多額な投資が必要なことから、資金力のある阪神電鉄が施設を保有することにより、ケーブルカーの継続を図ることを目的としています。
(参考)
六甲ケーブル、車両や線路など資産を阪神電鉄に承継 「上下分離」を導入 多額の安全投資に対応 | 経済 | ひょうご経済+ | 神戸新聞NEXT

なお、第三種鉄道事業者として、六甲ケーブルの施設等を継承する阪神電鉄では、既に「第一種」として阪神本線及び武庫川線の全線並びに阪神なんば線(西九条〜尼崎間)を、第二種として阪神なんば線(尼崎〜大阪難波間)及び神戸高速線(元町〜西代)を運営しており、今回の六甲ケーブル線を併せると、第一種・第二種・第三種全ての鉄道事業を運営する事業者となります。

(注)
鉄道事業法では、鉄道施設の保有などにより、鉄道事業者を下記の第一種から第三種に区分しています。
第一種:自社の保有する線路により鉄道事業を行う者
第二種:他者の線路を使用して鉄道事業を行う者
第三種:線路を保有し、第二種事業者に使用させる者



このような「第一種から第三種まで運営する鉄道事業者」は、他にあるか探してみると、JR西日本が、多くの第一種路線のほか、第二種(JR東西線、おおさか東線、関西空港線)、第三種(七尾線・七尾〜和倉温泉)を運営しています。

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▲のと鉄道・穴水駅に停車中のNT200形「花咲くいろは」ラッピング車両。
この路線は、JR西日本が施設等を有する「第三種鉄道事業者」となっており、のと鉄道はその施設を利用して運営する「第二種鉄道事業者」となっています。


過去に遡ると、近畿日本鉄道も、多くの第一種のほか、第二種(けいはんな線・生駒〜学研奈良登美ヶ丘間)、第三種(伊賀線、養老線)と、第一種から第三種まで揃っていた時期がありましたが、第三種の伊賀線及び養老線の施設を地元自治体等へ移管したことから、現在は第三種事業者として運営する路線はありません。

かように、いわゆる「大手民鉄」の中で最短の営業キロ数である阪神電鉄が、第一種から第三種の鉄道事業を全て運営することになるというのも、何だか興味深いものがあるな、と感じたニュースでありました。



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