南海電鉄では、同社の完全子会社である泉北高速鉄道との経営統合に基本合意することを決定したことを発表しました。

連結子会社である泉北高速鉄道株式会社との経営統合に関する基本合意のお知らせ|南海電鉄

【経営統合の目的】
・南海電鉄は、2024年7月1日に旧大阪府都市開発株式会社の譲渡を受け、同社の名称を泉北高速鉄道と改めて、グループ化。
2022年4月1日には、泉北高速鉄道の全ての株式を取得し、完全子会社化・
・一方、沿線人口の減少などにより、鉄道事業の構造的な需要減は歯止めがかからず、また人材の確保が困難なのは確実。
・そうしたなか、鉄道事業と不動産賃貸事業という同種の事業を営む南海電鉄・泉北高速鉄道の両社を経営統合し、サステナブルな公共交通の経営の実現や、更に競争力のある流通センターの確立に向けて経営資源を投入していく事業体制を確立することが最善であると判断。
鉄道利用しやすい運賃設定等を通じ、泉北高速鉄道沿線の堺・泉北エリアのおける価値を高め、南海電鉄グループのまちづくりを深化させる。

【経営統合の方式】
南海電鉄を存続会社、泉北高速鉄道を消滅会社とする吸収合併方式で検討すことで合意しているが、内容は未定。

【今後の見通し】
2025年度早期の経営統合に向けて検討を進め、両社の経営統合に関する最終合意の決議が完了次第、発表。

【運賃について】
・上記「経営統合の目的」に鑑み、堺・泉北エリアにおける「暮らす・働く・訪れる」価値を高め、交流人口・関係人口増加や子育て世代の流入促進の観点から、初乗り運賃の二度払い解消等、地域からのこれまでの声に応えることができるよう検討を進める。

【現在検討中の運賃案(一例)】
区間:
南海電鉄難波〜泉北高速泉ケ丘間(営業キロ20.3km)
現行:
普通運賃490円、通勤定期23,980円、通学定期9,670円
検討案:
普通運賃490 円(±0円)、通勤定期18,770円(▲5,210円)、通学定期6,060円(▲3,610円)


詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



このブログでも数多く取り上げてきた「泉北高速鉄道」
幼少の頃から大学生まで育ってきたのが泉北高速鉄道の沿線であったこともあり、個人的に最も愛着を持っている鉄道事業者の一つであります。

1971年の開業当初から南海電鉄との相互直通運転を実施していて、当初は100系と3000系という、南海電鉄の車両をベースにした車両が主体でしたが、1990年には、泉北高速鉄道の独自設計となる5000系が登場し、泉北高速鉄道の独自カラーが車両面でも強く感じ始める時期に、丁度通学で泉北高速鉄道を利用することとなりました。

その後、7000系投入の頃までが泉北高速鉄道沿線に住んでいた時期で、その後、転居を重ねて現在は阪和線沿線に住んで久しいのですが、それでも「三つ子の魂百まで」とも言うのかも知れませんが、今でも泉北高速鉄道の動向は非常に気にしています。

建設の経緯から、南海電鉄とは別の第三セクター「大阪府都市開発株式会社」の路線として建設し、運営することになった泉北高速鉄道。
そこに変化が出てきたのは2014年の大阪府都市開発の株式売却で、紆余曲折の上、南海電鉄が買収することとなりました。



そして現在は南海電鉄グループとして、泉北エリアの旅客輸送と物流事業を営む、南海電鉄グループの主要事業の一つとして現在に至っています。

その泉北高速鉄道、鉄道事業は相互直通運転をしていることもあり、一体のものとして利用者にも認知されているのですが、とはいえ子会社とはいえ、別の事業者という、今の形態は取りあえず続くものだ、とぼんやり思っていましたが、青天の霹靂といいましょうか、本日、両社の経営統合について基本合意がなされた旨の発表がありました。



経営統合の内容としては、泉北高速鉄道は、南海電鉄に吸収合併され、消滅する方式が前提となっています。
大阪府都市開発(株)の頃からの路線名称であった「泉北高速鉄道」が会社名になって、来年で10年ですが、法人の名称としては、予定通りですと11年で消えることとなります。

また、運賃については、現在普通運賃は乗継割引運賃が適用されていて、南海電鉄一社で通し計算した場合とさほど変わらない水準になっていますが、乗継割引が適用されていない定期運賃についても、経営統合により初乗りの運賃の二重払いを解消し、現在よりも割安な運賃を設定していくことを検討しているのは、利用者にとっては嬉しい話であります。



一方で、まだ分からないことも沢山あります。
例えば「路線名」
現在は「泉北高速鉄道線」と呼んでいますが、これが経営統合後どのように呼ばれるのか。
引き続き「泉北高速鉄道線」なのか、「泉北高速線」なのか、「泉北線」なのか、それとも全く別の名称か。

はたまた「車両」
この8月に、南海「8300系」と共通仕様の泉北高速鉄道「9300系」が投入されましたが、経営統合後も引き続き「9300系」として投入されるのか、あるいは「8300系」として投入されるのか。

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▲和泉中央駅に停車中の泉北高速鉄道9300系。


また、車両のデザインも、現在の青帯一色に変更したばかりの泉北高速鉄道のカラーは存続するのか、それとも3000系や5000系等の既存車両も含めて南海電鉄カラーに変更されていくのか。



加えて、泉北高速鉄道の車両にマークされている社章の「セ」は残るのか消滅するのか。


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▲泉北高速鉄道の車両に記されている社章(旧・鉄道章)
1971年の泉北高速鉄道線開業時から掲出されてきたこのマークも、南海電鉄経営統合により見納めとなるのでありましょうか…?


更に言えば鉄道むすめ「和泉こうみ」
南海電鉄への経営統合後も引き続き、「和泉こうみ」として活躍するのか。
そして経営統合により制服が変わった際には、「和泉こうみ」の制服も変わるのか。
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▲泉北高速鉄道5000系にラッピングされた鉄道むすめ「和泉こうみ」。
今や、「せんぼくん」と並んで同社のイメージキャラクターの地位を確立している「和泉こうみ」。
南海電鉄との経営統合後の処遇も、気になるところです。


とにかく、突然の発表で、思いつくままに疑問を書き連ねてみましたが、今後少なくとも2年のうちには、これらについて何らかの答えが出てくるものと思いますので、そういったニュースを一つ一つ、丁寧に取り上げていくことが、かつて沿線に住んでいて、いまも愛着ある鉄道事業者の一つである泉北高速鉄道に対する、ささやかながらの最後の恩返し、になるのかもしれないな、と感じています。

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▲泉北高速鉄道 栂・美木多駅ですれ違う泉北高速鉄道7000系と、南海電鉄12000系「サザンプレミアム」。
デビュー当初は、泉北高速鉄道に乗り入れること自体が想像できなかった南海12000系。
他の特急用車両の検査時を中心に、特急「泉北ライナー」として泉北高速鉄道線に乗り入れる実績を積み重ねてきましたが、まさかこの両方の車両が経営統合により同じ会社の車両となることまで、想像の範囲外でした。


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▲住吉東駅を行き交う泉北高速鉄道7000系と南海電鉄8300系。
1971年の開業当時より、泉北高速鉄道は南海電鉄と相互直通運転を実施していましたが、開業から半世紀を過ぎて、経営統合により「相互直通」という表現ではなくなることになりそうです。




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