JR九州と熊本県では、令和2年7月豪雨により被災して運休中の、JR肥薩線(八代〜人吉間)(以下、「復旧区間」という。)について、鉄道復旧の方向性について合意し、2024年4月4日付けで鉄道復旧に関する基本合意書を締結しました。

JR肥薩線(八代〜人吉間)の復旧に関する基本合意書の締結について|JR九州

基本合意書の内容は以下のとおりです。

【復旧区間の運営】
・熊本県を含む地元自治体(地元自治体が設立する法人も含む)が「第三種鉄道事業者」
・JR九州が「第二種鉄道事業者」
とする「上下分離方式」を採用。

【復旧に向けての連携・協力】
JR九州と熊本県を含む地方自治体の双方が連携、協力して、復旧区間の持続可能性を更に高めるため、「観光を軸にした日本一の地方創生モデルの実現」と「マイレール意識の醸成による日常利用の創出」を具体化する。

【最終合意】
基本合意書の内容について深度化を行い、令和6年度(2024年度)末までに熊本県・JR九州において鉄道復旧について最終合意することを目指す。


詳細は、上記発表資料をご覧下さい。



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▲人吉駅に停車中の「九州横断特急」と「いさぶろう・しんぺい」(2014年2月撮影)
県南部・球磨地区の拠点都市である人吉市と県庁所在地を結ぶ特急「九州横断特急」「くまがわ」が運行されていましたが、2016年3月のダイヤ改正で廃止となりました。
その後、人吉駅を発着する優等列車は、被災前までは観光列車のみとなっていました。


肥薩線の八代〜人吉間は、熊本県南部の拠点都市である人吉市と、県庁所在地の熊本市などを結ぶ生活路線に加え、球磨川の流域に沿って走る線形が故に、車窓からの眺めが楽しめることから、「SL人吉」をはじめとした観光列車のルートとしても人気がありました。

一方、上述のうち生活路線の観点では、九州自動車道が開業したこともあって、都市間輸送の多くが自動車・バスに移転したこともあり、民営化当初(1987年度・2,171人/日)に比べ、被災前直近の2019年度の平均通過人員(輸送密度)は、およそ2割の414人/日にまで減少していました。
(参考)
線区別収支(平均通過人員が2,000人/日未満の線区)|JR九州

そんな中で発生したのが、令和2年7月の豪雨で橋梁や路盤の流出など、もはや線路が現状を留めないほどの被害を受けることとなりました。
(参考)



被害の大きさに加え、上述のとおり利用者の大幅な減少により、鉄道という輸送モードでの復旧が果たして妥当なのか、という観点から、熊本県をはじめとした地元自治体とJR九州とで、復旧方針が協議されてきましたが、今回両者で鉄道による復旧を目指すという方向性に合意しました。


ポイントは、線路や設備等を熊本県をはじめとした地方自治体が保有し、JR九州は列車の運行を担う、鉄道事業法上での「上下分離」を採用したことでありましょう。

この形式による復旧スキームは、JRグループ各社でみますと、JR東日本の只見線(会津川口〜只見間)が代表的な例で、今回の肥薩線については、それに続くものといえるでしょう。
(参考)

只見線についても、日常利用が僅少である一方、観光誘客の価値としては大きいことから、鉄道による復旧の方向性に至った、という点では、今回の肥薩線と類似のケースといえるでしょう。


今後のスケジュールとしては、今年度中に鉄道復旧について最終合意とすることとし、復旧費用の負担や施設等財産の取扱い、使用料の取り決めなど、詳細を詰めていくものと思われます。
そして、この最終合意に基づき、今後復旧工事に着手していくものと思われます。


このように、八代〜人吉間については鉄道復旧の方向性が示された一方で、残る運休区間の人吉〜吉松間については、今回の合意の対象外となり、引き続き復旧方法を協議していくものと思われます。

この区間は、大畑駅のスイッチバックなど、より観光要素の強い区間である一方、日常的な流動が皆無であり、被災前でも「いさぶろう」「しんぺい」といった観光列車が主体のダイヤとなっていました。
平均通過人員(輸送密度)は、についても、2019年度が106人と、鉄道として維持することが果たして妥当なのか、というレベルであります。

また、この区間は熊本、宮崎、鹿児島の3県にまたがることから、復旧費用やその後の運営に関しても、より多くの自治体が関わることとなり、復旧可否の方向性を示すにしても、更なる時間が必要なのでは、とも感じています。
(参考)
JR肥薩線の鉄路復旧「一体じゃなかったのか」…人吉−吉松の「山線」沿線首長ら落胆、新協議の場に望みつなぐ | 鹿児島のニュース | 南日本新聞 | 373news.com

とはいえ、まずは八代〜人吉間が鉄道による復旧の方向性となったことから、今後はこの復旧に向けての動きを見ていくとともに、残る人吉〜吉松間の扱いについても、注目していきたいな、と思っています。

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▲同じく、2014年2月に人吉駅で撮影した肥薩線の八代発人吉行きの普通列車。

当時であっても、キハ40形1両編成で足りる輸送需要となっていましたが、台風被害の後の人口流出もあると考えられ、復旧後であっても、沿線の利用は厳しい状況が続くと思われます。

それだけに、復旧に際しては、出張や用務などで肥薩線を積極的に利用することなどの利用促進が、沿線自治体とその住民にも求められることになるのではないかと思います。
またその姿勢が、残る人吉〜吉松間の復旧にも繋がってくるのかも知れませんので、沿線自治体の奮起を期待したいです。




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【関連ニュースサイト】
肥薩線、八代〜人吉の鉄道復旧で基本合意。人吉〜吉松の協議も動き出すか | タビリス
熊本県とJR九州、肥薩線八代〜人吉間の鉄道復旧めざす方向性で合意 | マイナビニュース
熊本県・JR九州,肥薩線 八代—人吉間の復旧に基本合意|鉄道ニュース|2024年4月10日掲載|鉄道ファン・railf.jp



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